LUKK “Behind the Mask” セルフライナーノーツ
こんにちは、KISSYです。
noteは、久々の更新となってしまいましたね。
大変長らく、お待たせしました。
今回は、私の化身である LUKK にプロデュースした、「Behind the Mask」について、楽曲背景・解説を綴ります。
そもそも「LUKK」って誰だよ?
おそらく皆さんの大半が思っているであろう、「LUKK、お前、誰だよ?」問題。
少しだけ、説明させていただきます。
まず、LUKKは、私 KISSY と同一人物です。
しかし、LUKKとKISSYでは、方向性と役割が異なります。
KISSYは、音楽プロデューサーです。楽曲を他者に提供することを通して、音楽業界における商業的な成功を目指しています。
一方、LUKKは、アーティストです。商業的な成功は、一切目指していません。むしろ楽曲提供では作れない、実験的なサウンドと独自の世界観で、次世代の音楽の潮流を作り出していくことを目標にしています。
今年で私は26歳になりますが、「まだ世間的に若いと言われる立場なのに、プロデュース業のみに専念するのは勿体ないのではないか?」と考え、LUKKとしてアーティスト活動を開始するに至りました。
楽曲背景
起爆剤は「憂鬱感」
「Behind the Mask」は、昨年11〜12月頃、適応障害を患い、憂鬱感が甚だしかった時に作られた作品です。
「憂鬱感」が一定の閾値を超えてくると、心からの感情表現が出来なくなります。スマホを眺めていても、脳が情報を一切受け付けなくなります。
そして「憂鬱感」の根本には、日頃のストレス、昔からの悲嘆や苦悩の経験、常態化した孤独感といった問題が潜んでいます。
この「不健康な状態」を楽曲にしたら、どうなるのか?
「憂鬱感」に浸っている人の多い昨今では、沢山共感してもらえるのか?
また、メンタルヘルスの啓発になり得るのか?
これらの問いを経て、楽曲制作が始まりました。
楽曲解説
「Behind the Mask」は、楽曲構成的に4つのフェーズに分けることが出来ます。
起: 仮面の裏に隠された苦悩
このフェーズは、イントロ〜テーマ部分を指します。
リリックは、以下のような内容になっています。
前述の実体験をベースに、「普段の上っ面」と「内面」のギャップが明確になるよう、心がけて書きました。
ここで苦労したのが、ボーカルです。
普段の私のボーカルは、ブライトな印象であるからです。この楽曲で表現すべきダークネスには、あまりにも自身のボーカルは遠すぎました。
そこでRECの際に意識したのは、中森明菜「難破船」です。あの明菜さんのような哀愁を出せればベストだと、何度も試行錯誤を重ねた末に、あのボーカルが完成したのです。
やっぱり、明菜さんってすげぇ…(小並感)
サウンド面では、イントロの出だしから陰鬱感に吸い込まれるようなノイズをチョイスし、シネマティック感のあるPluckで世界観を定義づけしました。
ピアノで奏でられている奇妙なコード進行も、もどかしさを演出するために考え抜いて選びました。
テーマ部分では、上記リリックが伝わるように、音数少なめでシンプルにドラムとベースを奏でました。
承: 裏切りや不条理に対する赦し
このフェーズは、主人公が怒りを堪え、自分の主張をも抑え、憤りを覚える対象に対して赦す場面になります。
落ち着いた雰囲気と、少し神聖な印象を与えるべく、Synth Pad のサウンドを調整しました。
そして、この後の間奏で拍子が8分の6に変わり、一気にクラシカルなサウンドに変化を遂げます。
ただ単にピアノやストリングスを使うのなら、それは簡単すぎます。ストリングスも、ただハモらせるだけであれば、全く面白みが全くありません。
─ そうです。テーマで使われた主旋律に対する「フーガ」(もどき)、いわゆる副旋律の演奏を、チェロで試みたのです。
クラシックガチ勢ではない私が、対位法的に旋律を書くなんて…となり、直感ではなく、かなり論理的な手順を踏みましたが、何とか理想的に仕上げることが出来ました。
このパートは、本楽曲の中で私が最も気に入っている箇所です。真夜中の生い茂った森の中で、深呼吸しながら聴いてみてほしいです。
転: 孤独と憂鬱の境地
先と同じテーマに戻ったかと思えば、歌詞の深刻さが増してきていますね。
そして、主人公が「捨てられる」とき、Trancey なシンセが圧を掛けるかのごとく、激しく鳴り響き、文字通りシーンを「転」換させていきます。
結: すべてが無意味だという悟り
シーンの転換後、憂鬱感で感情が芽生えない主人公は、周りの言っていることの、一体何が面白いのかが分からなくなります。すべてが無意味だと悟ると、この世の「すべて」と、「すべて」を理解できない自己に対し、主人公は怒りを覚えます。
般若心経における「一切皆空」や、「死んだら結局すべて『無』だよね」といった考えに辿り着いた、とも言えそうです。
威嚇的な「ジャージークラブ」の5つ打ちビートに乗せて、Fワードを織り交ぜてリリックを吐き捨てる主人公。
その怒りの正体を、これでお分かりいただけたでしょうか?w
〆の歌詞は、こんな感じ。
憂鬱感を隠すために主人公が依存していた仮面のせいで、本心を表現する術と、根幹にあるべき感情が失われてしまった、という、非常に哀しいオチです。
でもこのオチは、精神的に不健康な状態であれば、誰もがなり得ると考えています。
だからこそ、最後に伝えたいこととして、これを綴りました。
セルフライナーノーツは、以上です。
楽曲に込めたメッセージが多かったのか、思いの外、長文になってしまいました。
この曲は、「楽しい曲」ではないかもしれません。鬼リピしたくなるような、雰囲気でもないと思います。
それでも、みなさんの心の琴線に何か響くものが一つでもあれば、私は嬉しいです。
LUKK 「Behind the Mask」、
ぜひ、聴いてみてください。
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