起業家から見た投資家とtalikiファンドのスタンスについて #共に夜明けへ
よく起業家の方からいただくのが、
「投資家ってもっと怖いかと思ってました」←特に初の資金調達をする方
「こんな相談またしても良いんですか?」
「打診している投資家から全然連絡返って来ないです」
というお言葉たちです。
taliki社はいわゆるスタートアップでありながら、スタートアップに投資するファンド運営者という不思議なポジションになわけですが、改めて起業家と投資家両方の立場から情報の非対称性とか、起業家側の不信感みたいなものを解消できればと思い筆をとりました。
投資家によって対応は様々あるとは思いますが、今回は初めてVCからの調達を考えている、もしくはtalikiファンドの攻略法を知りたいという起業家の方を対象に
「talikiファンドはこんなスタンスでやってるよ〜」
「こんな流れで意思決定してるよ〜」
ということを洗いざらい(?)お伝えできればと思っています。
面談の時って投資家は何を考えてるの?
初めての資金調達の際には、作法とかあるのかなとか、面談で惹きつけられなければ終わりだとか、色々緊張しますよね。私もそうでした。(ちなみになんなら今でも株主総会のお知らせや決算書を送る日は緊張で眠れません(ガチ))
まず、私たちに対しては一切気負わなくて大丈夫です。というか逆に付け焼き刃の情報や小手先のテクニックはそんなに通用しないので、お互いリスペクトを持ちつつありのままお話伺えたらと思っています。
talikiファンドでは主にシードからPreシリーズAをメインの投資フェーズとしています。この時期は市場ニーズの検証が完了している訳でもない不安定な時期でもあります。
その上で私たちはお話しさせていただく際に、以下の3つに注意しながらお話を伺っています。
①取り組む課題における解像度の高さ
②社会的インパクトの拡大志向があるか
③継続できるか
シード期においては事業そのものや実績というより「このような事業アイディアや市場ニーズが顕在化するまでのプロセスや経営陣」から、解像度の高さ、拡大志向、継続性を見ています。
詳しくは一号案件ブイクック社工藤さんとの対談から↓
そういえば、巷でよく言われている「シードはほとんどの事業がピボットする説」を創業初期に投資家から聞いてめちゃ不安になった思い出があります。「今お前が考えているアイディアは上手くいかない可能性の方が高い」と言われているような気持ちになりますからね。
でも大丈夫です。私自身会社を作って3年半経ち、150名以上の起業家の方の伴走もしてきましたが、「その人にとって本当に大切なこと」は自分含めてずっと変わらず残っているようです。というか、本当に大切なことが事業から失われたらやる気もなくなるので、おそらく会社や事業が消えます。
振り返ってみれば、私たち自体もピボットしてきたんですが、全てがブラッシュアップの延長線上だったので「変えたぞ!!」みたいな気持ちはあんまりなかったです。
そんな訳でシード期の起業家の皆様のアイディア自体は今後変わるかもしれないですしおそらくピボットする方も多いと思いますが、それはビジネスや市場に対する解像度が高くなり、より良いアイディアに昇華されているだけですので安心してください。視野が狭くなっていると感じたらたまにはお休みしつつ、届ける相手の声をたくさん聞いて事業を改善できれば良いのかなと思います。
起業家から投資家をジャッジするポイント
話が逸れましたが、talikiファンドでは投資検討の際に上記の3点に加えて「自分たちのお金以外のリソースが出資先の企業価値の向上に寄与できるか」ということも合わせて考慮します。
なぜなら、起業家によっては何年もの努力や研究、または人生そのものがサービスやプロダクトに昇華されており、投資家はその血・汗・涙の結晶に相乗りさせてもらえるほどの存在であるべきだと個人的には考えているからです。
特に金余りと言われるこの時代、資金の出し手はいくらでもある中で、私たちのような小さなファンドは数億・数十億も投資できる訳ではないので、「それでもtalikiファンドが入ってよかった」と言っていただけるように頑張らなくてはなりません。
talikiファンドで主に推しているポイントは3つです。
①taliki社やファンドに出資しているパートナー企業のリソースを活用できること
②今までお会いした素敵な社会起業家の皆さんとの連携や相互送客、ナレッジシェア
③2種類の投資スキーム(前回ノート参照)
talikiファンドに限らず、起業家が資金調達をする際に「投資家が何をしてくれるのか」は存分に考慮すべきポイントだと思っています。
例えばtaliki社ではVC2社、事業会社1社、エンジェル4人から出資いただいてますが、事業に対するアドバイスのほか事業に繋がるキーパーソンをお繋ぎいただいたり、ピンチの時は助けてくださり、呼んだら京都に来てくださったりします(そんなに呼んだことないですが)。何よりスタートアップシーンの歴史のど真ん中にいらっしゃるので、ただお茶したりお散歩ご一緒するだけでも自分の持っている情報のアップデートが出来ます。
投資家というのは出資したら同じ船に乗る、つまり対等な立場になります。お金を出すから上、という訳ではありません。もちろん「お金を預かって会社を大きくする」という責任は経営者に伴いますが、「事業を伸ばす」という共通目的を達成する仲間であることに変わりありません。
なので「出資するからにはこんなお手伝いをして欲しいです」という提案を調達時に投資家に投げて良いと思っています。投資家側としては、それを言われて「お金以外何も手伝えることない」という場合もありますが、「こいつ生意気だな、出資やめよう」と思うことはありません。
talikiファンドのスタンス
とはいえ、正直起業家としては「黙って金だけ出してくれ」って思うこともありますよね。例えば株主が安直なアイディアでミーティングをかき乱したり、不要な進捗管理をしだすと、経営陣に多大なコミュニケーションコストがかかりますし、経営にマイナスの影響を出しかねません。
そこでtalikiファンドおよびtaliki社としては以下のように起業家ファーストのスタンスを明文化しています。全体の一部、原文ママです。太字に殺意を感じますね。
私自身、実はたまに悩む部分ではあります。
投資家と起業家は最終的に目指すものは違いますし、起業家ひいきすぎて冷静に判断できていないのではないかと不安になることもあります。正直、少しでも微妙な要素があれば切り捨てる投資家になりきる方が日々の業務においては効率的でもあります。
ただ、最大限リスクは排除しつつもポテンシャルを見いだすことをしなければシード投資家としての存在意義はないですし、何よりも起業家が投資家とのコミュニケーションに時間だけでなく精神も削ったのに何も得られない、ということは出来るだけ避けたいと思っています。
私自身起業家として「なんでこの領域詳しくないのにそんな偉そうなん?」みたいな投資家は苦手ですし、「そんなん分かってるわ」みたいなアイディアを押し付けられて恩着せされたり時間を無駄にするのも嫌いです。
個人的にファンドの資金調達も会社の資金調達も経験して思ったこととして、調達規模はファンドの方が断然大きかったのですが、会社の資金調達の方が大変でした。もちろんいくら調達するのかによって状況は変わりますが、ファンドはビジネスモデルや市場ニーズが周知のものなので説明や相互理解にかかる時間が圧倒的に少なく済みました。
出資を受けない方が良いパターン
そんなよもやま話もしつつ、投資家としてのスタンスが分かったところで、全員talikiファンドから出資を受けたらいいよー!という訳ではありません。talikiに限らず、各VCに向き不向きや注力領域があります。VCを探されている時は、ぜひ以下の情報をチェックし効率的な調達のお役に立ててください。
①フェーズ
→VCによって投資する対象が、全てのフェーズ、創業直後、2回目の調達時、レイター(上場3年前〜直前くらい)など、得意領域があったりします。talikiファンドにも、シリーズAをメインの対象とするファンドさんから「こんな案件があったのだけどうちにはちょっと早いから…」とご紹介があったりします。逆にtalikiから他のVCにお繋ぎさせていただくこともあります。
②リードかどうか
→VCによっては、自分たちがリードインベスター(そのラウンドにおいて出資割合の一番を占め、条件面などを優先的にディスカッションする)でない場合は出さない、というところもあります。交渉によってはリード以外で出してくれる場合もあります。
③事業領域
→特にTechに多いですが、バイオ、ディープテックなど領域に対する専門性が高くないとその事業の理解が出来ないような分野に関しては、領域特化をしている投資家に優先的に話してみるのが良いかと思います。また、領域特化を謳っていなくともファンドメンバーがそれぞれ専門性を持っており、「〇〇のジャンルはこの人」のように決まっている場合もあります。talikiファンドの場合、社会課題領域に関してベーシックなものは一通り事業伴走の経験があり、かつ専門家との連携もあります。
④意思決定にかかる時間
→大きいファンドであればあるほど投資の意思決定をするメンバーではない方とまずお話をする機会が多いかと思います。また、調達する額が大きくなるにつれて、デューデリジェンス(案件調査・審査、以下DD)にも時間がかかるようになります。投資家は日々色んな投資案件を見たり投資先のサポートなどをする中で、案件が埋もれたり、①〜③のズレからお返事の優先順位が下がる場合もあります。どうしてもそのファンドに投資してもらいたい場合は、遠慮なくリマインドしても良いと思います。
ちなみにtalikiファンドでは、資料が添付されていた場合や既に知っている会社であればすぐに、そうでなければ1週間以内に投資検討の面談を設定させていただき、面談後1-2週間DDのお時間を頂戴します。必要な書類や情報を集めるのに滞りなければ通常3週間ほどで意思決定をしております。投資、継続検討、見送り、どの場合においても必ずお返事をします。
初めての資金調達の場合は契約書作成や登記のサポートも行っています。クローズ(調達期間を設定している場合その期限)が迫っていたり、キャッシュアウト(会社のお金が出て行くこと、特にその中でも尽きてしまうこと)が近い場合は優先的に対応します。払込は投資契約を締結したあと即日可能ですが基本的に投資契約の払込締切日に合わせる形となります。
またお断りした後でも、もし何かご協力出来ることがあればいつでもご連絡いただけると嬉しいです。これは初回のタイミングではお力になれない事情があっても、基本的に「この人、この領域は可能性ゼロ」と思って見送ることはほぼないからです。
上記を読んで、まずは相談してみたい!という方はぜひご連絡お待ちしております^^
(TwitterのDMでも良いのですが資料添付できないので推奨してません。。)
今回は触れませんでしたが、そもそも投資家からの調達をしない方が良いパターンもあります。自分のビジネスはどのタイプだろう?と迷っている方はぜひこちらご参考にどうぞ↓
また、SIIFさんにもみっちりご取材いただいてます。
talikiのことをもっとよく知りたい!という方はぜひご覧ください。