移民国家としての日本/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.9.12-21.9.18)
今週いちばん注目を集めたのはこのニュースですかね。
仮放免中は健康保険での診療が不可なので、在留資格への配慮を求めていたひとが、異例の速さで望みが叶った。
それはそうと彼は国を相手どった裁判の当事者で、「国側が裁判所に提出した監視カメラの映像」がメディアの知るところとなり、その模様が端的に言ってヒドい虐待である、と。
入管内で起きている様子を見せろ見せない事案を共有しているわれわれとしては、そりゃまあ何か言いたくなるところではある。
■関連して興味深く読んだ記事
記事本文の小見出しに便宜的に番号を振ると下記の通り。
1) 巨大な「裁量権」をもつ入管
2) 「マクリーン判決の呪縛が残っている」
3) 「入管行政は場当たり的で、一貫性がない」
4) 入管はブラックボックスだった
5) なぜ亡くなったスリランカ人女性のビデオは"公開"されないのか
6) 入管を叩き続けても真相究明につながらない
7) 「外の目を入れなければ、問題は解決しない」
8) 双方が正面から対話すること
このうち6)が記事タイトルになっていることもあって、そんなはずがないだろう的な反発を呼んでいるようなのですが
言葉の一部を切り取って報道し、『入管=悪』『支援者=善』という単純な構図をつくり出し、いくら入管はひどいと叩き続けていても、真相究明にはつながりません。
というところ含めて、私は同意できるんです。行動経済学でいうところのナッジ理論。そういえばちょうどそんなツイートが回ってきてました。
入管がどうやら悪い。と認知できたのがスタート地点だったとして、今はその次の「入管を叩くだけでは解決しない」「じゃあどうすれば?」のフェーズなんですよ。と、私は思っているんですよ(と、この2年ずっと言ってる)。
■さらにこれも関連してるな、と思ったのは楽天トップのツイート「を読んだひとたちのリアクション」
ミキティは高度人材の話しかしていないので「移民」の認識が狭いという批判はされてしかるべきと感じましたが、
移民受け入れは低賃金でヨシとする貧困層を増やすこととイコールだからいただけない。現に移民国家としての成功事例は無い
って意見も少なくなく、カナダやオーストラリアを失敗とみなすひとにとって成功って何。という疑問をいったん措くと、認めるも認めないもなく現実に移民社会になってるよね日本、って私は思うんです。
だから入管行政は今以上に取締を強化せよ、新たな入国を認めるな、って意見を採ると(第1次産業が壊滅するので)即困るのが自分たちなんですけど、やっぱりね、自分の姿を鏡に映して直視するのって難しいよね。
■というわけで「韓国映画における外国人労働者の描かれ方」というnoteを書きました
参考にしたのはペンシルバニア州立大学助教の先生が5年前に発表した「韓国映画に見る移民労働者と外国人花嫁の表現」という論文。
朝鮮族の描写があまりに偏っている問題は個人的に気にしているところなので、触れなかったところ含めて私見を語り出すとキリがないのですが、良いお題設定だよなあ。
「日本のエンターテイメントが描く、日本人が外国人技能実習生をヒドく扱っている様子」は日本人の自分が責められているような気がするから目をそむけたくなる……そんなひとでも、韓国だから。フィクションだから。
って言い訳を用意してあげれば、ちょっとは現実を見る疑似体験ができるんじゃないか。どうですか。
■最後に今週起きていた現実を何本かピックアップ。
移民なんか認めなければこんな問題は起きないんだ! と思うか、既に起きてることなんだから「さて、ここからどうするか」を考えるか、どっちにしましょうか。