週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.1.10-21.1.16)
先週は「まだまだ知らないことがいっぱいあるなあ」って謙虚ぶってた私、一転して今週「へ? そんなのは常識なんだが?」ぐらいオゴリタカブッた感想を連発し、脳内会議出席者にあきれ顔が続出しました(#黙ってりゃわからないのに)。
■個人的なトップニュース「ビジネス入国って実は技能実習生だったのか! って驚くひとがこんなにいるのか!」
これ、本当に驚いたんですけど……みんな何だと思ってたんだ。
「ビジネス往来」再開を掲げた緩和政策に基づいて日本に入国した外国人のうち、中国、ベトナム、インドネシアの3カ国国籍の人が合計で約7割を占めていたことが、出入国在留管理庁(入管庁)の集計で分かった。3カ国からの入国者の在留資格は、「留学」「技能実習」が計8割強に上った。
実習生は「技術移転」の名目の下、工場や農林水産業の現場などで就労している。留学生の中にはアルバイトなどで働く人も相当数いるとみられる。
いずれも「ビジネス往来」という言葉でイメージされがちな短期出張ではなく、就労や長期滞在を前提とした在留資格だ。
そもそもって小見出し付きで、記事中にもあるんですけど
日本政府はこれまで、「研修生」「実習生」などと呼びながら、外国人労働者を「玄関」からではなく「勝手口」から受け入れてきた。コロナ禍の入国緩和にあっても広義の「ビジネス往来」として、実習生らを入国させてきたのは、同様の言い回しのように聞こえる。
自民党の重要な支持基盤である経済界は、外国人労働力の導入拡大を求める。一方で、党の「岩盤支持層」となっている保守・右派層は、「移民社会」につながる動きを排撃する傾向がある。どちらにもいい顔を見せようとすると、微妙な言葉遣いとなってしまう。今回のような入国緩和政策の迷走にもつながるのだろう。
ちょっと考えれば「ビジネス往来」がホワイトカラーではなくブルーカラーを指すことなんて、分かると思うんですけど。
■さらに「え、常識じゃね?」って顔になった記事
業者が実習生から徴収する手数料は、特権階級の「財布」にもなっているわけだ。これでは政府が定める手数料の上限など守られるはずもない
ベトナムが技能実習制度にこだわって特定技能を推進しようとしないのは、引用部の通り、既得権益の分配システムが完成しているからです。
ついでなので、あまり世の中には出てきていない真実をここでこっそり教えると(=陰謀論者の枕詞)技能実習で懐に入ってきたお金の流れを温存する形でもかまわないので特定技能もやってね。って話が日越間でそろそろまとまりそうな気配なんですよ。ええ、信じる? 信じない? それはアナタ次第、というやつですが。
■お口直しに良い写真を見ることができる記事をどうぞ。
森崎ウィン、なんとなく気にしている俳優なので(もちろん「俺はガンダムで行く」由来)この記事にあるような話は知っていたんです(あ、またそういうことを言う)けど、これはね、結びが素敵だと思ったの。
■最近の報道傾向というかなんというか
この記事を読むと、どうやら次のような流れなことが分かります。
・悪質な客引きでクレームが相次いだ
・福岡県や福岡市には居酒屋への客引きを禁止する条例がない
・(客引きをしているのは見た感じ日本人らしくない)
・話を聞いたら法定時間超えのアルバイト勤務が判明
・はい、入管難民法違反(資格外活動)
・雇っていた居酒屋運営会社幹部も入管難民法違反(不法就労助長)で逮捕
昨秋、大々的に報道された「ベトナム人が北関東で果物や家畜を盗んだ」騒ぎがおおむね在留カード不携帯ってところを衝いたときから思っていたのですが、ああいうのも、こういうのも、別件逮捕って言わない? 捕まえることが目的だから、そこまでのプロセスはまあいいか、なの?
あと、当該人物がインド国籍ってところもちょっと気になるんですよね。
入管チェックが厳しくなったせいでネパールからの来日が難しくなっている昨今、次の「安い労働力の供給源」をインドに見定めた人間がいるのでは、というような、ロケット団いうところのなんかヤな感じー。
■なんかヤ。どころではなく、こってりイヤなニュース
自己破産申請した不動産賃貸業の綜合プランニング(前橋市、平尾真一社長)が運営していた「前橋国際日本語学校」(同市)について、留学生ら約60人に授業料や入学金などの学費が返還されていないことが14日までに、複数の関係者への取材で分かった。被害額30万~40万円程度の人が多く、半数近くが同校で一度も授業を受けられていないとみられる
日本語学校は株式会社が運営することが可能なため、留学ビザと労働力の交換場として機能させることも、運営企業の胸三寸。むろん良い日本語学校もあれば悪い日本語学校もあり、上の記事の日本語学校を「悪い」例とするのは早計ですが(招いた事象はあからさまに最悪だけどな)今後、似たような事例は増えていくと思えます。
■再びヤな「感じ」に話を戻しまして。
まずはNHKの報道ぶりをご確認いただきます。
・窃盗容疑でベトナム人グループを逮捕した
・“「コロナで帰国できず生活費を稼ぐためだった」などと供述している”
・盗んだ自転車は西成区の自転車販売店で売りさばいていた
・盗品と知りながら買い取ったベトナム人の店長の男も逮捕、起訴
他メディアもこの流れで報道しています。ただ、読売だけが異色で。
・そもそも技能実習生として来日、埼玉で働いていた
・なんだかんだあって失踪、大阪で働くように
・仕事もなくなったので入管に出頭して不法滞在者であることを報告
・出国命令を受け取って待機
・帰国便なし、就労は禁止、行政支援はない
・盗んだ
・転売した
・コロナで云々って言った
え、同じニュースですよね。ずいぶん印象ちがわない?
■毎週同じような記事を紹介していますが、つまりみんな読まないってことなんだよなー、こういう長めの/エンターテイメント性の低いニュース。
1990年代前半までは、正規の滞在資格を持たないオーバーステイの外国人が働いていても、警察が摘発しないことは珍しくなかった、と鳥井さん(引用者注:「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事)は振り返る。
法務省によると、93年のピーク時にはオーバーステイの外国人は約30万人。「政策的に容認していなければそんな数になることはあり得ません。産業をオーバーステイの人たちの労働に依存しながら制度的な手当てもなく放置したまま、日系人や実習生に置き換えた」。
まあね、例によって無料では読ませないよ。がポリシーの毎日新聞なので、有料部分にある指摘が埋没するのは当然なんですけど。
「ある農業法人の代表からは、『果物づくりに本気で取り組む人たちに来てほしい』という話を聞きました。別の地域の船主団体では『実習生がいなければこの漁が成り立たないんだ』という声もありました。現場で真面目に向き合っている日本人の中には、国籍は問題ではない、ということが実感として分かってきた人たちが増えていると感じます」
追い詰められないと分からないことってあるし、今まさに(日本社会が)追い詰められているので、「増えていると感じます」って鳥井氏の所感は重要だと思うんですよ。
■最後は、続報が出たら感想書く気はある(いまはとりあえず静観)メモ。