ネットウケするトピックとか/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(22.8.28-22.9.3)
まあまあ盛り上がった今週の下記トピックを見て私が抱いた感想は、「留学生」って単語から連想されるイメージが相変わらず人によってバラバラだよねえ。というものでした。
・留学生とは大学生のことで
・つまりいわゆるハイスペック人材だから
・彼らが来ると日本の技術が流出するおそれがあって
・それはつまり(ここでもっぱら特定国への誹謗中傷が入る)
・それぐらいなら日本人学生の待遇を改めるべき
みたいな声がネットのとある界隈では大きく響いているようで、ふーん、そういうものか。って思いがちですけど。という話から始めますか。
「大学に留学してくる直前、どこにいましたか」という統計を日本学生支援機構つまり留学生の管轄機関がウェブマガジンに掲載しています。
題して「留学生30万人計画の達成とその実情を探る - 留学生の入学経路と卒業後進路に関する一考察」
グラフの青いところが海外から直接日本の大学に入学したひと。
オレンジは日本語学校へ来たひと。
「留学生」といわれて、まず大学を連想するのがちょっとした誤認のスタートになりがちポイントなことが分かります。
もうひとつ、別のグラフ。2018年、もうすぐ30万人の目標達成できそう。というタイミングで文部科学省が公開した資料「ポスト留学生30万人計画を見据えた留学生政策について」から。
緑の線がいわゆる日本語学校で、2011年までは「留学生」とみなされていなかったことに注目。
実はそこまで日本語学校へ入学するために必要なビザは「留学」ではなく「就学」でした。つまり30万人計画の前身「留学生10万人計画」(1983年8月、中曾根第1次内閣)のころのイメージが、冒頭で私が挙げたような2022年のネットの声の背景にある。端的に言うと状況の認識が古い。
繰り返しますと、政府が「留学生」と言うとき、それは必ずしも学問を志して来日する高等教育機関の入学志望者だけを指すものではありません。日本語学校に入学して週28時間のアルバイト代を目がけてやってくる実質労働者のほうが多い昨今、それを知らず「30万人計画」って打ち出すはずもない。
つまり某国優遇どうのこうのって騒ぐぐらいなら、人手不足だからってすぐ海外人材に頼るのはいかがなものか、ぐらいの感想のほうがまだ同じ土俵なのです。お分かりいただけましたか。
※留学生○万人計画の推移を知りたい方には月刊「レファレンス」2009年2月号、「我が国における留学生受入れ政策―これまでの経緯と「留学生30万人計画」の策定」を推奨。
■さて、その労働力確保を海外から企画、お隣ではこんな感じ
関連しているようないないような記事があった。
ただこの寄稿、派手な見出しほど意味があることを言っているとは思えず、「ネットでウケる」ってそういうものだけど。という諦念を誘いました。
■似たような底意または悪意が見てとれるテキスト
上記3つでは「ベランダからおむつ」云々が書き手の意志ではなく媒体のせいでこんな見出しにされちゃって。という内容なのは読めば分かるんですけどみんな読まないからねえ。
■そういえば今後は日本の秋の風物詩になっていくのか、というニュースが出ていました
まだ何も分かっていない段階なのにものすごく予断を植え付ける書きぶりじゃないですか。
どうしたいんだ日本。「外国人」に来てほしいのか来てほしくないのか。
みたいな感想になるのは私だけですか。
■今週は政策よりのニュースがけっこうあったんですよね。もちろんこんなのはネットウケしない
ちなみに去年の法務省予算にはウィシュマさんが亡くなったことを受け「出入国在留管理施設の医療体制整備」という名目があったのですが、今年は盛り込まれていません。つまりもう二度とあのようなことは起きない体制になった?
■たまたま目についたのが今週だったニュース
元記事はベトナムの労働力輸出だのみ構造に警鐘、というニュアンスで
急に高齢化社会がやって来るよ、というトピックを興味深く読んだのですが、さらなる元ネタであるJICAの「ベトナム国産業人材育成分野における情報収集・確認調査 最終報告書」(公開5月)は全400ページ弱。とてもではないですが全部は読めない。ただ、充実していることだけは分かった。
■今週だからこそ読む記事