週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(20.9.27-20.10.3)
父さんな、ナイジェリア映画について知ったかぶろうと思ったんだ。ってnoteを書いたぐらいにはナイジェリア映画ブームを通過している私なので、ネットフリックスのマイページ新着に『オロトゥーレ』(2019)というナイジェリア映画が表示されたのも、まあ納得。日本で何人ぐらいこれ表示されとんねん。と思いはしましたけど。
それでね、なかなかの力作ではあったんですけど、あの、だいじょうぶです、外国人就労関連ニュースってトピックを忘れたわけじゃないので!
ネトフリ公式のことばを借りれば「人身売買の闇を暴くため、売春婦として潜入取材を試みる記者が見たのは、女性に対する搾取と非情な暴力が支配する世界だった」というあらすじの作品で、製作会社はナイジェリアに留まらずアフリカ有数の「影響力ある女性経営者」が率いるEbonyLife Filmsというところ。ものすごく真摯な作品なことは保証できます。
ただ、唯一にして最大の欠点は、フィクションの持つ力や鑑賞する人間の想像力にゆだねることをよしとせず、一から十まで表現しないと制作サイドの思いが伝わらないのでは。みたいな強迫観念が脚本にあったところ。
おかげで世の中こんなひどいことがあっていいと思いますか思いませんよね、え、まさか思いませんよね。ってまくしたてられるかのような後味が残って、物語ってもっと大きなものだと思うんだよね、と小声で反論したくなる感じ。
人身売買が一片の弁護の余地のない犯罪であることには贅言を要しないと思う私ですが、たとえば本邦における技能実習制度の諸問題について糾弾したくなるとき、ともすればこの『オロトゥーレ』的アプローチに陥りがちだよな。一方的、あるいは一面的。って意味だけど。
というところで今週の本題。
■NHKのニュースが目についた1週間でした
■NHKといえば近いうちに1回総括しようと思っている、NHK札幌の独自企画。先週で終わっちゃった……と呆然としていたら、今週も更新があったというこの胸のトキメキは何。恋?
■そして今週の大きなトピックといえばこれ
入管も謝罪できるんだね! という驚きが私ひとりのものでないことはツイッターに同様の感想が流れていたことからも、「弁護団によりますと、管理局側が制圧行為での行き過ぎを認めて謝罪するのは異例だということです」というNHK記事中のコメントからも分かるのですが。
国に約4200万円の賠償を求めた訴訟は、大阪地裁で和解が成立した。職員の制圧行為で骨折したことを認めて国が謝罪し、解決金300万円を支払う内容
とあるのが今回の報道で、一方ね、提訴した2018年の報道ではね。
「約450万円の損害賠償を求め」。賠償額が増えること自体は珍しくないのかもしれないですけど、桁が増えるのって驚かないところなんです?
私が言いたいのは、自社の過去報道を参照する手間さえ省いたのか、あるいは自分が読者なら気になる。という初心なんて最初からなかったんや。ってことなのか、つまり記者の仕事の姿勢を問いたい。ということなんですけど、それ以上に、(記者に、ではなく)報道機関に求めたいのは、過去のオーバーステイを事由として5年は再入国不可、って措置が生きている期間中に来日→当時のトルコは強制送還による帰国を拒否→長期収容、ってトルコ人男性の事情に言及すべきでは、ということです。
「そもそも日本に来ることがおかしい」「強制帰国させていれば」「ゴネ得」という類のコメントが、そうした前提が書かれていれば滅ったのに、と思うほど私もお気楽ではないですが、書かないのはメディアとしての怠慢だと思うの。
■テレビ系のニュース媒体が「絵にしやすいから」って理由で妙にフィーチャーしたがるニュースにも似たような感想を抱く私
在留資格の仕組みを分かったうえで伝えるのではなく、ただ知名度高いお店の行為を天下晴れてあげつらう機会が来た、って興味本位で報道してるよね?
■一方で、そうした「ゲスい」好奇心が、いわゆる新聞系メディアが見逃してしまう要素を拾うこともあるもんだなあ。と思ったのがこちら。
6人は技能実習生として、1人は就労できない短期滞在(15日間)の資格でそれぞれ入国。在留期限が約5カ月から約2年4カ月過ぎており、道内の建設現場で働いていたという。9月上旬、岩見沢市内で「一軒家に数人の外国人が住んでいる」との情報があり、同署などが捜査していた。
佐々木倫子『チャンネルはそのまま!』でおなじみの北海道テレビ、HTBが妙に詳しく機微を伝えていて、お、雪丸花子か。って思ったのがこちら。
近くの住民はこう話します。
「(今月)中くらいになってそこに人が入りはじめたなと思ったら結構人が出入りしているのを見かけて」「日本人の方も2人くらいいて/太陽光発電の仕事をしているってきいている」
これは、HTBが入手した岩見沢の住宅の賃貸契約書。
契約していたのは太陽光発電の会社で、社長は栃木県に住んでいました。入居者の欄にはベトナム人ではなくなぜか、日本人の名前が。いったいどういうことなのか、社長を電話で直撃すると。
「外国人は名前が分からないから責任者ということで書いたんですよ。在留カードを見て問題ないということもあったんでそれで使ったんですけども」
■まあしかし、地方メディアは所轄警察署と阿吽の呼吸で仕事するものなんだよね? 俺、横山秀夫の小説で読んだことあるから知ってるんだ。ってつい思ってしまったニュースがこれ
全国で家畜や野菜、果物などの窃盗事案が目につき、それらはもっぱら「外国人による犯罪」とみなす風向きがあるなか、9月26日に報じられたものですが、中身をよくご覧いただきたい。7月31日に職務質問、とありますね。第一報が共同通信で配信されたときの記事はこんな感じ。
余罪を追及したら、牛以外にもニワトリとヤギを盗んでいたことが発覚して追送検、という記事が出たのが9月15日。
だからね、この事案がひとの注目を集めると察した岐阜県警の広報から、最初に職質した若い巡査で記事を書いてみたらどうだ。って示唆があったんじゃないんですか。知らんけど。
警察密着系の「ドキュメンタリー」みたいなテレビ番組が鼻につく私のような人間には、なんかこう、素直に受け取れないところがあるんですよね。
■外国人と見れば犯罪者予備軍か、そうでなければ仕事熱心な労働力、ってこの極端な風潮、なんとかならんの。
■とか思っていたら、留学生を労働力としてアテにしている社会ならではの話が出てましたね
冒頭で紹介したナイジェリア映画の原題、olotureは英語ではendurance(忍耐、我慢)って意味なんだそうですけど、ナイジェリアの女の子の名前としてはそこそこポピュラーだそうで、そうか、日本でも「しのぶ」って名前あるもんな。
人身売買のキモは女性から抵抗する気力を奪って搾取することだ、という構図がよく分かる映画でしたけど、技能実習制度を悪用する構図もこれと同じでは、って思うと、遠い国の他人事ともいえないよねえ。ってなりました。ネトフリナイジェリア映画班からは以上です。