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週刊外国人就労関連ニュースまとめ(20.9.13-20.9.19)

連載開始以来ずっと良い企画だよーって言ってきているNHK札幌の「外国人技能実習制度取材」、今週は第6~8回が更新されました。

私事で恐縮ですが、コミック完結しないと読めないマンなんですよ私。それは全体像が見えないと落ち着いて物語に没入できないからで、このNHK札幌連載もざっくり「良いよー」としか言わず、内容紹介をほとんどしていないのも、全貌を俯瞰できないままでは落ち着かないからだったり。
とはいえ1回分の濃さは(私の)お墨付きなので(?)ぜひご一読を。

■そして「完結しないと落ち着かない」とか言ってられないのが現実のツライところ

宮崎県椎葉村で技能実習生2名を含む4名が台風のために行方不明に、という件、1名は遺体として発見されましたが、いまだ捜索は続いています。
そんななか、続報にあった次の一節に目が留まりました。

台風10号の大雨による土砂崩れで、技能実習生のベトナム人2人が行方不明になっているというニュースは、母国ベトナムでも報じられています。
日本で報じられてまもなく、ベトナムの地元メディアも、2人はそれぞれ、中部のタインホア省とゲアン省の出身で、地元の警察が捜索活動をしていると伝えていました。

タインホアもゲアンもベトナム北中部の地名なのですが、ベトナム国内でも出身地として口に出すと差別されがち(友人がゲアン出身なので、私自身も間接的な経験をしたことがある。つまり「彼ゲアン出身でしょ、大丈夫ですか」みたいな陰口を私に言ってくるひとがいます)。

私のn=1談だけではさすがにナンなので、傍証として2013年のベトナム語記事と、あとは日本語に訳出された2012年の「出身地差別?北中部出身者の採用はNG」(VIETJO)を挙げておきます。資料と呼ぶには古いけど。
ただ、人が人を差別する行為を「まったく理解できない」なんて我々だって言えるはずもなく、タインホアなりゲアンなり、出身地を言っても差しさわりのない遠い国まではるばるやって来たのになあ。と考えると、なんともやりきれないですわ。

■報道でベトナム人の名前を聞く機会が増えている気がしますけど

なんかイヤだな、と思うのは、たとえばこの3本の記事を並べて「ほら治安が悪くなってるでしょ」って言うほうが多くの賛同を得られそうな社会になりつつあることです。
先週冒頭「犯罪白書」のデータを延々並べて書いたことを毎週繰り返すわけにもいかないですし、地味だけど「日本人全員が外国人差別をするわけではない」のと同じで「外国人が報道でとりあげられているからって外国人全員がそういう存在なわけがない」って言い続ける、しかないのでしょうね。

あとはね、フィクションの持つ力にも期待。一般公開まだかな。

■「外国人は」って雑に語るケースを逆の立場から見るとどうなるか、みたいな記事があったので紹介

「『反日』と言われるのは当然嫌だけど、『親日』と言われるのも嫌です。日本という国や日本人をひとくくりにして、100%否定・肯定するようなニュアンスがあるけれど、それはあり得ない。どの国にも、良いところも悪いところもある。私含めて日本好きなシンガポール人は多いけれど、無条件に全て好きなわけではありません。占領時代を良く思っていない人は多いんです」

■いまは未曽有の疫病下だから、って言い訳はたしかに有効かもしれない

「コロナはいつ落ち着くのか分からないですよ。だったらみんなで感染者をいじめるのではなくて、励ましたり、応援してあげた方が良いと思う。病気の人をいじめるのはおかしいです」

って言い分にうなずける社会こそが「豊か」だと思うし、差別意識が加速するのは、それだけわれわれが貧しくなった証拠では。

そういうニュースも当然多数

仕事を失った実習生から、解雇されたのに、みずから希望して退職したことにされたという相談が、支援団体に相次いでいることがわかりました
新型コロナウイルスの感染拡大で外国人技能実習生の受け入れが難しくなったとして、大分県中津市の監理団体が近く自己破産を申請することになりました。民間の信用調査会社によりますと、新型コロナウイルスの影響で実習生の監理団体が破産するのは全国で初めて
日本語学校はさらに厳しく苦境にあえぐ。今年は学生が極端に少なく、来年度に日本の大学へ進学する私費留学生は大幅に減る見込み...「留学生が多くを占める大学は経営難に陥るのでは」

■って考えると、「長い目でものごとを見る」ことがいかに大切か、という話なのかもしれません。

オートバックスセブンの子会社で自動車関連の人材サービスを手掛けるチェングロウスの関口秀樹社長は、「2006年頃には人手不足感はなかった」と振り返る。その一方で「10年先を見据えれば採用が難しい時代が来るのは間違いないだろう」と当時抱いていた危機感を話す。
2006年7月にオートバックスグループのFC法人10社で協同組合オートサービス・インターナショナル(ASIC)を設立したものの、FCのオーナーからの反応は鈍かったという。
その時点で採用は問題がなかったため、10年後のことを言われてもピンとこないケースも少なくはなかったようだ。ただ、関口社長の考えは違った。「だからこそ『実験させてくれ』という気持ちだった。人材難になってから着手したのでは間に合わない。困る前に海外の人材を活用するノウハウを蓄積したい、協力して頂きたいと説いて回った」と語る。

■十年先のことが分かるわけない、とは私も思いますけど、数か月スパンの話はどうですか。

何度か取り上げている題材なのですが
・4月25日から実習予定だった中国人技能実習生51人を入国制限で断念
・群馬の人材派遣会社から外国人派遣可の連絡を受け12人が4月27日現地入
・うち3人が農業に従事できない在留資格だったため同日送り返される
・農協からの相談を受けた警察が5月6日に確認、不法残留発覚
・逮捕を受けて違反のなかった6人の就労も受け入れない方針
(以上が今春の話)
(以下が今夏の話)

・実習生が来られなくなって困っていたら母国に帰れない外国人を雇う話が来た。いまでは周辺の農家で20人以上が働いている
・実習生が来日できずニセコのスキー場を解雇された台湾女性らを娘のつてで雇った
(そして今週のニュース)

知人から「困っている外国人がいる」と紹介されたのがハビエラさんでした。去年、ワーキングホリデーでチリから来日したハビエラさん。東京と福岡の弁当工場で働いていましたが、新型コロナの影響で職を失い、北海道に移り住んだのです...智恵文地区で働く外国人はおよそ20人。ブラジルやスペイン、スロバキアから来た人もいます...アルゼンチンから来た男性は「コロナ騒動の中で仕事を探していた。働くためにグループを作って名寄に来た」と話しました。

先を見据えて計画を立てる、「べき論」はありつつも、目の前の課題をなんとかしなきゃ。という世界でみんなが悪戦苦闘しているってことだと思いますが、これね、うかうかしてると今後もずっとこんな感じになっちゃいますからね。

■そして、うかうかしてたつもりのひとなんてどこにもいない問題

有効求人倍率が1倍割れ目前、とあります。それは「仕事の数より仕事を求めているひとの数のほうが多い」ってことで、つまり外国人材より先に国内人材をなんとかすべき云々の主張も出てきそう。いやー大変だぜ。

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