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週刊外国人就労関連ニュースまとめ(20.8.30-20.9.5)
今週もいろんなニュースがありましたが、最初に紹介するのは企業のプレスリリースの一節です。
監理団体による転職妨害例
技能実習修了直前に「勝手に特定技能ビザを取得して転職した場合は母国にいる両親に罰金として約30万円を請求する」と脅し、実習生本人が転職を希望していても言い出せず、転職活動ができないまま強制的に現在の就労先で技能実習3号を申請させる。
ありそー。という感想を持つのは私が現在進行形で本業(=民間日本語能力試験の実施とか運営とか)において外国人の就労と縁あるからですけど、要するに「技能実習生はその生殺与奪の権利を監理団体に奪われている」事案とでも言いますか。
■生殺与奪の権利を奪われるとかオオゲサな。って思いますか。たとえばこんな記事
2本目に、次のような一節があります。
監理団体の人たちは、ベトナムから日本に来るときに、「なんでも困ったことがあったら相談して」と言っていました。それが嘘だったと思いました。私たちの生活にまったく関心を持たなかったんです。がっかりしました。監理団体を信じられなくなりました
■共同通信が過去取材を【外国人と生きる 失踪の影で】と題して連投していました。短いテキストながら、どれも典型的な内容で、もっと広く知られていいと思うやつ。
■もちろんヒドい話の悪役は「監理団体」以外にも割り当てありまして。
たとえばここでは故国のあっせん業者が悪、と。
■じゃあ-先週冒頭でとりあげていた-この事故の「悪役」は誰ですか。
県内の農業の特有の事情として、外国人技能実習生の存在が欠かせないことも事故の背景にあったのでは――と推測する。「今年は新型コロナウイルスの影響で外国人技能実習生が入国できなかったことで人手不足に拍車がかかり、例年より農作業が過酷になっている」
事故はあまりにも不幸なことで、雇用者が過失を責められるのは避けられないと思うものの、「悪役」監理団体とか送り出し機関とか、それと同じように「悪い」んですかね? かといってCOVID-19が悪いんや、で済ませていい問題だとも私には思えません。
結論を出したいというよりは、こういう話をたくさん目にすることで世の中のあり方を肌で感じたい、私個人はだいたいそんなスタンス。
■ちょっと話題を変えましょう。市議会で介護の現場の報告をした、という愛知県岡崎市議のホームページから。
外国人を採用している施設のほとんどは技能実習制度を活用しているとのこと。そのため、法人の負担は大きい。
技能実習制度だと就労ではなく研修であり、一時的には戦力になるかもしれないが、在留期間は最大5年、しかも指導員が常に必要で、一人で夜勤ができない、転籍ができないなど縛りが強く、法人としては経営・運営面で不安要素があるなかでも、その条件をのんで働いてもらわなければ施設を回すことが出来ないというのが現状。最大で5年しか働けない方に法人として多くの投資をしないと施設を回していけない。
外国人労働者が確保できるだけまだよいとは現実問題として言えないのではないか。
■沖縄からは日本語学校の経営難という記事が。界隈ではあたりまえに共有されていることながら、世の中にはまだ浸透していない内容かと。
留学生が来ないと、ホテルや飲食サービスなどに必要な若い労働力の確保が難しくなり、沖縄経済にも影を落としてしまう
留学生は学問をするために発給されているビザで、労働力としてアテにするなら特定技能で来い。
という建前は建前として、現実には「留学生という名の労働力」の上に成立していたのがわれわれの社会で-過去形で書きましたけど、正しくは今もなお「成立している」。そしてもちろん沖縄だけの話ではありません。
■札幌の話もどうぞ。ただこの記事のトーンは明るいな。
■名古屋
■群馬
ベトナム人の女性(25)は技能実習を終えた後、帰国できずに生活費が底を突いたといい、健康診断で異常はなかったものの「もう生活できない。早く帰りたい」と嘆いた
こういう書きぶりにはいつも同じ反応を返すのですが、「技能実習を終えた後に帰国できず」系のひとに適用可能な社会保障があるはずで、そこをセットで報道しないと、いつまでたっても読者の常識がアップデートされないじゃないか。釈然としねえ。
■最後に上級者向けニュース。
新型コロナの影響で海外での試験ができないことから、建設分野の特定技能の就労者は現状、技能実習などからの移行者に限られ、技能実習がない職種では受け入れが難しい状況にあった。そこで受験資格の緩和を機に、技能実習がない鉄筋継手で先行して国内での試験に乗り出した。
例えば、鉄筋継手と業務内容で関連性の高い「鉄筋施工」の技能実習生が「鉄筋継手」の技能試験に合格すると、技能実習修了後に特定技能「鉄筋継手」での就労が可能となる。技能実習修了者は日本語試験が免除されることから、あらかじめ試験に合格しておくことでスムーズに移行できる。
さすがに解説ニーズないと思うので本文コピペに留めますけど、特定技能の国内試験実施が徐々にでも始まることで、人材不足の業種でも雇用の道が開けるのは良いな、という感想です。