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炎上物件に学ぶ/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.4.11-21.4.17)

手の込んだPR案件として炎上したコンテンツがありましたが、ああいうのを見て、たとえば入管法の改正を阻止したいって思うとき、自分たちはこれぐらいの知恵と工夫を出しているか。とか考えなくていいんでしょうか。

真面目だからイイってもんじゃない、とああいうキャッチーな戦術を目にすると思ったり。それはもちろん自分にも跳ね返ってくることばなわけですけれど。

■間違いなく日本でいちばん法務大臣記者会見の書き起こしを愛読しているのは俺だ。という自信があるんですけど、今週はちょっと面白い見方ができた回でした。4月13日(火)。

トピックは3つ
・性犯罪に関する刑事法検討会に関する質疑について
・無国籍の子供が増えている状況に関する質疑について
・名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について
読めば分かるんですけど、2点目について珍しく好意的に答えているんですよ、法相。その結果がこういう記事になるわけ。

対して3点目についてはケンもホロロというか、愛読者としては「いつものやつ」という感想ではあるものの、やっぱり2点目トピックとの差は大きいと思わざるを得ない。

質疑応答でキツめに問われ、かたくなになる法務省、その対応は好意的に報道されることはなく、次回の対応もぎこちなくなり。云々、負のスパイラルが見えませんか。気のせいですか。
メディアと官邸の関係性の影響が事象に影響を及ぼしてしまうとか、本来そんな事はあってはならないですが、ボタンの掛け違いが生む悲劇なんて世の中ザラじゃないですか。にんげんだもの。

■そんな流れで目についたせいで、今週イチ感心した記事がこれ

岡田さんはようやく気付いた。「そうか、仲間を作るというのは、こういうことなのか。正論を振りかざしたって、仲間は作れない!」

PTAの話なんですけど、なんでこんな当たり前のことができないのか。って大上段から行ってもダメなんだな、と悟った政治学者が、あ、つまり……。ってなった、そう書かれていました。

「野党がなぜ人々の心をつかめないのか」が分かった気がしたのだ。「野党代表が自民党政治を批判し、『まっとうな政治』と掲げれば、市井の人々はそれを『自民党に投票する人の見識は間違っている』と脳内変換するんです。もっと勉強しろ、と上から目線で言われていると感じるんです。だから人はその瞬間、心を閉じてしまう...声高に政治的用語を叫んでも、人々の心に伝わるわけないじゃないですか」

いやー炎上した某note、そういう意味で「人々の心に伝わる」書きぶりではあったろうし(念のため言っておきますけどあのテキストを擁護する気はありません/同時に、そこまで追い詰める必要もないと思う立場です)、名古屋入管の事象でツンケンされるのも、良い悪いの話ではなく、そういうことじゃない?

■とはいえ、なんというか、こう……

一方ではこの上で紹介したような「読者の感情に訴える」記事スタイルは世の中に蔓延しているわけです。
で、こういうのは世の中を動かす力になり得ているのだろうか。感情移入できる文章を書くことはテクニックを必要とする、バズらせたいのにスベってしまう悲しさ、とかそういうことを言いたいわけではなく。

■この新刊著者の主張に賛同したくなる私。

著者は現状の議論に「食傷気味」だとする。議論のほとんどが、「かわいそう」と「叩きだせ」の間のマンネリズムに陥っていると映るからだ。具体的に外国人労働者の論じ方には3つの傾向があるという。
 ①かわいそう型 主に外国人労働者のかわいそうな事例をたくさん集め、理想主義的なポジションに立って日本社会の問題点を断罪する。
 ②データ集積型 外国人労働者に関連する数字や固有名詞がびっしりと羅列されたレポート的な情報を提示する。結論は①に近いことが多い。
 ③外国人の増加に懸念を示して、読者の排外主義感情を情緒的に刺激する。商業的にはこちらのほうが「強い」。

身も蓋もない。
ただ、こういうことを言うだけマンなら説得力ないわけですが、俺ならこう書く、という実例が公開されていて、それを読めば納得できるだけの仕事をしていると思うんですよね。書き手の経験がことばにもたらす力。

■書評といえば、私が推すタイトルが北海道新聞で紹介されていました。こういうアプローチがもっとあると良いんだよなあ。

■とかなんとか文句ばかりの今週でしたが、そうは言いつつもストレート・ニュースでしか伝えられないトピックはある。たとえばこれ。

何に驚いたって太字のところよ。

非正規滞在外国人を支援するNPO法人・APFS代表の吉田真由美さんは「強制送還で親子が引き離されてしまうケースは近年増えている。在留特別許可の審査が厳しくなり、家族全員での許可が下りない傾向が強まっている」と指摘する。APFSは、強制送還によって引き離された子どもなど約10人を支援している。中には同庁側から、親が帰国すれば子どもに在留許可を出すと提案され、子どもがその選択に苦しむケースもあるという。

私、入管しぐさに驚くことはもうないと思っていたんです。毎週どころか毎日、こっち方面の記事をコレクションして今週で85週目ですからね。
だけど「親が帰国すれば子どもに在留許可を出すと提案され」ってそこまで非道な話があるのか。これは文字通り言語道断では。

■また別の報道にいわく

2年前に創設された在留資格「特定技能」で再び日本での就労を目指す元技能実習生のベトナム人女性(30)が、首都ハノイの送り出し機関から、同国政府が本来「徴収しない」と定めている手数料を約16万円相当請求されていることが10日、信濃毎日新聞の取材で分かった。...女性は現在、首都ハノイに隣接するフンイエン省在住。16年10月から19年10月まで技能実習生として愛媛県の食品加工会社で働いた。帰国後の昨年秋ごろ、この会社に連絡を取り、今度は特定技能で働くことで合意。すると実習生時代に利用した送り出し機関から「在留資格申請費、ビザ申請費、日本在留中の支援経費」として1500ドル(約16万円)を請求された。

この類の報道をいろいろ見てきているから自信をもって言うんですけど、ここまで具体的な数字をあげた記事は珍しいです。
地味だけど、良い仕事。

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