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技能実習、入管、ベトナム以外の何か/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.2.28-21.3.6)

このジャンルで毎週ニュースを集めているとキーワードがそんなに大きく変わらないことにイヤでも気付くのですが、今週は定番以外のニュースから始めます。東京新聞のスクープ
「内閣府の国家戦略特区で家事支援従事者として就労を認められ、来日したフィリピン人女性206人が、雇い止めや自己都合退職により、大手医療介護人材派遣会社『ニチイ学館』(東京都千代田区)から契約更新されず、うち48人の所在が把握できていないことが同社の調査で分かった」。

当該企業のコメントがなかなか示唆的で。

契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい。

指摘され……見直さざるを得なくなった。というあたりの、自発的なムーブ皆無な言いぐさにおそらく本質があるんだろうね、と思った次第です。
あと、この話が明るみに出た経緯にも、はー。ってなりました。

福島県いわき市の友人が「仕事あるよ」と呼んでくれたが、就労ビザが使える地域でなかったため東京に戻り、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探し、カプセルホテルや低額宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円に。1月2日の大久保公園(東京都新宿区)での相談会で会った弁護士が、支援団体につなげてくれた

■技能実習と入管とベトナム以外のタグが付くような話題、その2。

中学生の年齢の子どもを持つ親(保護者)が自治体の窓口で相談したとき、「日本語が分からなければ、受入れは難しいです」「外国人は義務教育ではないから」と言われ、家にいるしかない子どもの相談が毎年あります

技能移転を名目として海外から人を受け入れる制度を有する自称「先進国」が、そんな冷淡な対応であっていいのかね。という感想。
もちろんちゃんとしている自治体もあるわけですし、どっちかというとそういう記事のほうが目につきやすいんですけど、やってる事例以上に多いはずのやれてない話こそ、気に留めるべきなのかもしれません。(以下、過去に当欄で採り上げたことがあるのもやってる記事だったことを確認)

2020年2月24日、弁護士ドットコム

2020年8月6日、毎日新聞

2020年12月16日、朝日新聞

■一見すると外国人労働者に関係ない記事

なんですが、すぐに思い出したのが1月の広島

2月の静岡

あと埼玉、これは先週。

はッ、ぜんぶベトナム人が捕まってるニュース……。
私が言いたかったのは、日本人ですらよくわからない仕組みにしているせいで犯罪を誘発しているんじゃないか、そのシワ寄せが社会的弱者である外国人労働者に来ているのでは。ということだったんですけど。
ではそろそろ定番に。まずはベトナム。

■今週気になった文春の記事

安い労働力として呼んでいるベトナムのひとたちが徐々に彼らの内側で強固なネットワークを構築しており、それは必ずしも社会に良い方面のみで寄与するとはかぎらない……というこの記事の主張に、全面賛同するわけではないものの、日本社会は油断しすぎでは。と思うこともあるので、興味深く読みました。あと、次の一節にはさすがに笑った。

取材のなかで不法滞在者に会いすぎたせいで、最近の私はもはや合法的なビザを持っている外国人をみただけで「ものすごく真面目で偉い人」だと感じてしまうという、認知の歪みすら生じつつある。

■ベトナム、技能実習の両キーワードを含むニュース

ベトナム人実習生にアンケートしたところ、多くは母国の送り出し機関に年収の3倍近い100万円近くを支払っている。手取りの月収で最も回答が多かったのは14万~16万円。「もっとよい仕事がある」などとSNSで誘われ、犯罪につながる危険も高まっている

そういう環境だからこそ日本側がサポートしないと。という主旨の記事なのに、うっかりするとセンセーショナルな部分だけを抜き書きしそうになるな、俺。気を付けよう。

■今週の技能実習まわり(1)

小説で語られることばは、新聞記事やSNSのようなところで語られることば以上に力が有る。と信じる者なので、相場英雄の最新刊『アンダークラス』が正面から外国人技能実習制度をとりあげている、という話は朗報。

■今週の技能実習まわり(2)

単独で読むよりは、2020年10月26日の次の記事とあわせて読むことを推奨します。

余力があれば、同じ筆者が別媒体に書いているこっちも(同年11月26日)。

■今週の技能実習まわり(3)

およそ1ヶ月前に、福岡市内で14人のクラスターが発生しました。海外からの技能実習生の皆さんです。入国後2週間の隔離(健康観察期間)中だったのですが、個室は準備されていたものの実際には食堂で一緒に食事をしており、受け入れた監理団体は隔離中にも関わらず一堂に会しての講習も行っていたとのこと。この講師の日本人が発熱してコロナ陽性と分かったので、一応実習生の皆さんも検査したら一人を除き全員陽性だったことから、保健所の疫学調査の結果、隔離期間中の実態がわかったのです。
今回は実習先に行く前に陽性が分かりましたが、もし誰も症状が無ければ分からないまま派遣されるところでした。今回は違いましたが、介護施設に行くケースもありますから、そう考えるとゾッとします

こんなニュース、読んでたら気がつくはずだけどなあ。と調べたら

「福岡県で119人陽性 外国人技能実習生13人も」って2月4日に出ていた、これか。しかしこれは監理団体が責められてもしょうがないですね。

■今週の入管

陽性患者の話
委託医に電話で症状を訴えると、「頑張ってください」と痛み止めを処方された。「コロナのことがもっと分かる医者に診てほしい」と訴えるが、現時点では希望はかなっていない
陽性患者の親族の話
「ちゃんとした医療機関にみせてほしい。急変するかもしれず本当に心配」と訴える。重篤になった場合に連絡が欲しいと入管側に訴えたが、「お答えできない」との返事だったという
陽性になったひとの話
同室の1人が2月17日に陽性となった。自身は陰性で「部屋を消毒してほしい。移動させてほしい」と職員に訴えたが聞き入れられなかった。20日夜に熱が上がると隣の部屋に移動が許され、24日に陽性が判明した。同室だったもう1人も陽性になったという。「入管は何もしてくれない。消毒しないで同じ部屋にいたらうつる。私たちのことを全然考えてくれない」と話す

イカン、あまりにも「ザ・入管」と呼びたいエピソードがたくさん載っているのでつい長々と紹介してしまった。

■最後、入管の動静には珍しく「これは評価していいのでは」と思った話

ただこの話、他紙誌がまったく後を追わないので、なるほどこういうの横山秀夫とか本城雅人の新聞記者を描いた小説で読んだことあるぞ。ってなっています。


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