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週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.1.24-21.1.30)
平手友梨奈をね、うちの子が推しているわけです。もう5年。
私は私でうちの子を推し続けているわけで、そっちは18年。
ところで推しの推しは推しじゃないですか。だから、とある平手コンテンツに関する(うっすらとではあっても平手を応援するつもりがある)私のツイートに、アンチ平手に物申す。的なリプライが飛んできたことに驚いた今週でした。書き方な、俺の書き方がよくないんだろうな。
あと、それと似た話でいえば今週のオリンピック関連報道。
この見出しが示唆するところと元発言の間には、まあまあ距離があるのでは。ってコメントをしたら、「オリンピック開催賛成派の擁護野郎」みたいなリプライがついて(=オ・モ・テ・ナ・シ時代からずっと開催否定論者です私)そうか、外国人技能実習生や留学生がおかれている境遇について、ニュースになっている事象から振り返る連載を今日で74週、続けてやっているのは、まったくもってこの状態が正しいとは思えないから。ってはっきり書かないかぎり伝わらないひとがたくさんたくさん存在するってことか。忘れがち。
■でも、ですよ。世の中、善悪二元論で整理できるわけがないですよね。たとえば「技能実習制度は廃止すべき」つってドヤ顔になるひとに聞きたいんですけどアンタはドヤって完了かもしれないけど、現場は何をどうしろと?
たとえばこの記事にも「技能実習制は廃止すべきです」ってあるんですけど、廃止したとして、代わりの案がないと弱りません? いや、あの、なんにでも対案出せって言うマン扱いされると心外ですけど。
国は、外国人を管理の対象とする考え方を変えようとしません。
こうした状況に対して、労働組合は外国人労働者とともに労働条件の改善を求めて声を上げるだけではなく、職場や地域の中に残る差別意識を解消する取り組みを展開してほしいと思います。
うーん。ものすごく正直な感想を言うと、腹はふくれんなー。なんですよ。
技能実習は廃止せよ、特定技能も中途半端な制度だからケシカラン。って言うのはいい。しかし空洞期間が許されるような社会ではないわけで、とすると廃止した瞬間に利権構造がアンダーグラウンドに持ち込まれるだけでは。
だったら技能実習制度の非道が一般に報じられるようになった現状のほうがまだマシじゃね? 事態改善すべき、というコンセンサスが形成されつつあるのは、74週前との比較であきらかなので。
なお、いきがかり上、情報労連レポートをくさすようなことを書きましたが、このテキストは指宿昭一(敬称略)という外国人労働者の基本的人権を守るために最も現場で汗をかいている弁護士の先生が発信者で……ポケモンGOでいうとレベル47のひとにレベル41の俺が言うことじゃねえ。という自覚はあります。
■ソフトランディングが求められるのでは、が個人的見解なんです
たとえばこの記事では、特定技能という制度に焦点があてられています。
技能実習制度における諸悪の根源、ブローカーによる斡旋手数料を廃止するところからスタートした特定技能のはずが、手数料徴収を日本とベトナム、両政府が公認するらしい。なんだとー。
みたいな内容。
でね、俯瞰して「技能実習制度が悪」とするじゃないですか。それを改善するためにつくられた特定技能が「まだマシ」とするじゃないですか。
ベトナムのこの事例、技能実習から特定技能への移行がとにかく始まる、という一点において「良いこと」なわけです。
利権構造がスライドするだけだろ、という意味では執筆者の指摘通り、ロクでもない話だけど。
ただ、原理主義的に「ゆるせない!」って言うより、もごもご言いながらでも、事態の改善につながる一歩として認めたいんですよね、私は。
だって特定技能が始まって間もなく2年になるというのに、最大の「労働力供給国」であるベトナムの理解を得られないままずっと来ているわけですよ。それがようやく変わるのなら、まずホメて育てるしかないのでは。肯定ペンギンのように。がんばってるねー。って。
■なんだか説明が面倒なネタを最初のほうに置いちゃったな。わかりやすい話でもしますか。
よーし監理団体、悪いやつらだ。罰せられろ!
よーし(以下同文)
よーし入管も悪いやつらなんだろ、批判しようぜ。
よーし不良ガイジンは逮捕だ、国外追放だ。
■もうちょっと踏み込んで記事を読むくせをつけないと、脊髄反射ネタばかりが跋扈する世の中に。
2018年、山口さんは、実習生の給与や待遇の改善ができないかと考え、行動を起こした。通常、来日する外国人技能実習生らは、監理団体と呼ばれる受入組織を通じて実習先の企業に赴任する。給与や待遇は、監理団体が受入企業に対し、指導や監査を行うのだ。山口さんは、翌年1月に監理団体の理事長に就任し、賃金や条件の見直しを行った。
技能実習制度には「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があり、稀に聞かれる「技能実習生にとっても雇用企業にとってもwin-win」って話は往々にして前者。
って常識をくつがえして、善意あふれる企業のプレイヤーが監理団体の理事に就任、監理団体ぐるみ良い方向にしよう。という珍しいエピソードだったのですが、記事に寄せられるコメントを見ていると「実習生たちが帰国したあとのことまで考えてるとかスゴい!」って絶賛されていて、もちろん良いことなんですけど、すまんそういう事例は別にここが初めてなわけじゃないんだ。
つまり、技能実習制度そのものが悪なのではなく、悪用しようと思えば可能な制度設計になっていることが凶悪。って話で……今のところシンプルな報道がウケるので仕方がないと思うものの、ちゃんとしてるところはちゃんとしてるよ、って枝葉の話もしぶとく伝えていく必要性が増しているように感じました。
■そういうのとは逆方向の、専門紙記事
在留期間が長いものの、資格取得が難しい特定技能に比べ、制度が活用しやすい技能実習には外国人材確保の観点で今後もニーズが残るとみられる。コロナ禍を契機として外国人技能実習生が減少していくことで、技能習得による国際協力と工事現場の生産能力への影響が危惧される。
だから技能実習生を入国させろください。という主張がこの記事の主目的で、おそらくそれは現場の思いを忠実に伝えてはいます。
個人的には「資格取得が難し」かろうが「制度が活用しやす」かろうが、特定技能に移行しない理由にさせちゃダメだろ、とは思うわけですが。
■ちょっと先のことにも目を向ける必要あるよね、という記事
日本語を学んだ留学生が進学する専門学校には、入国停止措置が時間差で効いてくる。日本語学校への入学者は20年に激減しており、2年後に卒業生を迎える専門学校への影響は避けられないためだ。オリオンIT専門学校(宇都宮市)の石川尚子理事長は「日本語学校からの学生の供給は当てにできず、独自に留学生を確保するしかない」とみる。
日本語学校の倒産ラッシュがいつ始まるかは分かりませんが、専門学校もいわば一蓮托生です。
ふーん、関係ないね。って思ってるひとがたぶん多いんですけど、いや、彼らは留学ビザで来日しているけど、コンビニの工場とかで働く労働力として日本社会はカウントしていて、むしろわれわれの生活基盤を支える主力と考えたほうがいい。関係ない、なんてことは金輪際ないんです。
■それにつけても。という今週の結び
政府はようやく2年前、人手不足の産業に海外から労働者を受け入れる新たな在留資格「特定技能」を設けた。その法改正をめぐる国会論議で、安倍晋三前首相がくり返したのは「移民政策ではない」という言葉だった。保守派の支持層に配慮し、定住につながるイメージをもつ「移民」の語を避けた背景がある。かわりに使った言葉は「外国人材」だった。
「移民政策とは何か」の編著がある大阪大大学院の高谷幸准教授は、「移民」が「国境を越える移動に焦点をあてた呼び方」であるのに対し、「外国人」は「国民との対比を強調する呼び方」だと言う。「『移民』という言葉を避けて『外国人』と呼ぶことは、この社会の外部の人々だという印象を与え、法や権利の上での国民との格差を正当化することにつながりかねない」
週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」って何の面白みもない連載タイトルにしていますが、たとえば「移民国家日本ニュース」って名前が馴染むかというと、まだ社会の認識はそこまで熟してない、と思うんですよね。
政府がそこまで踏み込むのに勇気が要るはずだわ、と思うのと同時に、政府が認めてこそ世の中が変わるんだろうけどなあ、ってしみじみ思ったり。