週刊外国人就労関連ニュースまとめ(20.7.5-20.7.11)
定点観測45週目ともなると「そんなことも知らないの」「いまごろそんな感じっすか」など、ずいぶん上からの感想が出がちなのは端的にいって害悪。というような自省を今週の日経新聞の論説『時論・創論・複眼』に促されました(まじめ)。
2月ごろは技能実習生が入ってこないことで、農場に大きな影響が出ると思っている関係者はあまり多くなかったようだ。当時は「春になれば何とかなる」という雰囲気だった (農林中金総合研究所主事研究員 石田一喜氏)
誤解をしてほしくないのは、人件費を抑えるために彼らを雇用しているのではないという点だ。日本人だけではとても人手を確保できないからだ。研修費などを合わせれば、コストはむしろ高いくらいだ (グリンリーフ社長 沢浦彰治氏)
COVID-19の災厄が日本経済に与える影響は-労働力の基盤を来日する人材に負うていることを考えると-ヤバいやつよ? って私が言及したのは2月のことで(自慢ではない)(いや自慢だな)
農業に限ったことではなく、自分の足元に火がついてからようやく「ヤバい」って言い出すような記事には、つい冷笑的な反応をしてしまうところがあるんです。これを、地金が出る、といいます。
でね。日経の『時論・創論・複眼』も、そうやってナナメから読んでいたんですが
一連の取り組みを通して感じたのは、生産者がなかなか声を上げてくれないという点だ。数カ月耐えれば何とかなると思って様子見して、需要が回復しなくて苦境を訴え始めた人がかなりいる。「他のみんなも困っているから」との理由で声を上げずに我慢して、本当に危なくなってSOSを発する人もいる (ビビッドガーデン社長 秋元里奈氏)
この一節に、ああ。ってなったんですよ。ひとでなしの私の心にも響く「本当に危なくなってからのSOS」というフレーズ。
逼迫しなければ助けて、って言えないタイプの人たちが声を挙げているわけで-それこそ自分もそういうタイプだから分かりすぎるほど分かるんですけど-言うのが遅いよ、とか、もっと早く言えばよかった、とか、いやもうもう、もう責めてくれますな。本当に無理ってなるまで言えなかっただけなので。……いやあ、ほんそれ。
■だから、ですね。先週までの俺なら「へっ」て言ってたと思う記事もちょっと違う感じに見えたり
実習生は、電子機器の組み立てや縫製、農業といった分野を手掛ける実習先の企業などで技術の習得に取り組みながら働くことになっていた。コロナ禍で国内経済は落ち込んだが、入国制限措置があるまま今後回復に向かった場合、人手不足を懸念する声が上がっている。
また、実習生が来日して働き始めないと、監理団体は企業から支払われる監理費などを受け取れず、運営状況の悪化につながる。入国制限措置が長期にわたって続くのは避けたいのが本音だ。
しかし、新型コロナの地球規模のまん延は収束の兆しが見えない。米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、日本時間5日午後時点で世界全体の感染者数は1128万人以上、死者数は53万人を超えた。ある監理団体の担当者は「『入国制限を緩和してほしい』と言いづらい」と語る。
いまさら? とか思わない! 思わないよニュー俺は!
■新刊書籍販促の意味もある記事が2本目についたので、箸休め的にご紹介。
外国人技能実習生というと、"劣悪な環境のもと、日本人ほどの待遇を受けられず、まるで奴隷のように働かされている人たち"を思い浮かべたりしないだろうか。そんな技能実習生の舞台裏について、これまでとは違う角度から光をあてたのが、『ルポ 技能実習生』(ちくま新書)だ
「時給300円」や「トイレ1分15円」「セクハラ」「強制帰国」など、本書では過酷な労働の実態が報告されている。「奴隷労働」「人身売買」といった言葉があてはまる構造が、身近にあることに気付かされる。ただ、目の前の劣悪な状況を告発するだけではない。同時にそれを生じさせている社会システムや政治判断の欺まんを問うているのが特長だ。
後者のようなアプローチへのアンチテーゼとしての前者、ってことだと思うんですけど(どっちも未読)、後者を知らずにいる人たちが前者だけ読んで「知ったつもり」になられるのはイヤだけどな。とは思いますね。
■今週の無邪気
たとえばこれ、技能実習生のオンライン面接の様子がさらっと書いてある。
10~20代の男性8人が、テレビ画面に映し出された東京の建設会社の代表からの質問に答える。「悪天候下でも仕事を頑張れるか」「協調性を持って集団生活し、自炊できるか」――。選ばれるのは2人と、狭き門だ
一歩まちがえれば命にかかわる現場なだけに、他業種と比べても厳しい覚悟を求められるのは分かってますし、質問自体が不当なわけではまったくないですが(ちょっと天気が悪いからってすぐ休もうとする奴が増えてんだよ最近、それは日本人でも外国人でもいっしょでさあ)という言外の何かを踏まえての「悪天候下でも仕事を頑張れるか」だし、(寮なんて寝に帰るだけなんだからそんな立派な設備を期待されても困るしマカナイがあるわけじゃないから全部自分でやらないといけないけど、それはそういうもんだろ、俺たちの時代はみんなそうだったよ)からの「協調性を持って集団生活し、自炊できるか」って読めるんですよね、いや、私が考えすぎなだけですよ?
でも、そういう目で読まざるをえない社会に我々が暮らしていることもまた、目をそらすべきではない事実だとも思うわけで。
■たとえば? これとか。
■もちろんそういう話ばかりではないけれど。
■そういえば思い出した、今週いちばんの「えー」はこの報道でした
そんなー。