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日本人とか外国人とか共生とか/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.6.13-21.6.19)
全米女子オープン(ゴルフ)を勝った笹生優花は「日本人扱い」、全仏オープン(テニス)で物議を醸した瞬間に大坂なおみは「外国人扱い」、みたいなことを恥じるでもなく繰り返す社会に生きていると
J2水戸ホーリーホックで若きDFリーダーとしてプレーする22歳は、フィリピン人の母とガーナ人の父を持つ。母親とはタガログ語で、父親とは英語で話す一方で、家の外に出れば常に日本語でコミュニケーションを取る。小さい頃からこの毎日がタビナスにとっては当たり前だった。
(略)
「確かに父と母は日本にルーツはありません。でも、僕は日本で生まれ育っているので、心の中では自分が日本人だと思っていました。サッカーを始めてからずっと日本代表をテレビで見ていて、W杯ではそれこそ国民全体が熱狂していて。日本代表にずっと強烈な憧れがありました」
なるほど彼が「日本人扱い」されることはなかろう、と想像するのは容易ですけど……なんで? 日本人でよくない? と思うんですよ。
日本人だろうが外国人だろうが、隣に住んでいればご近所さんだし、何かあったら-たとえばエイリアンが攻めて来るとか深い霧の中に何かが居るとか人類を滅ぼすレベルの疫病が流行するとか-お互い助け合わないとダメじゃないですか。
って言うと、後半には賛同するが前半、国籍に関しては譲れない。みたいなキリッとした顔になるひとがいるんですけど、もう一回聞くよ、なんで?
アリをヒトが見るとき、お、こいつはコロニーAのアリだ。こいつはコロニーBのアリだ。なんて思わないじゃないですか。スズメを見るときもそうでしょうよ。国籍どうこう、わいわい言ってるヒトの群れをね、上位存在(何)が見たら、おまえら何を言ってるんだ、全員ヒトだろ。てなもんですよ?
国籍によってワクチン接種の順番を決めるとか。
身分を証明する何かを必ず携帯しなければいけなくて、不携帯だとそれだけで逮捕されるとか、それが偽造かどうかをチェックするアプリが違法だとか遵法だとか。
先週も書いたことなのでアプリについての私見は簡単にしておきますが
・まず「不法就労等外国人対策の推進」公文書を読んでくれ
・そこには「世界一安全な国、日本で五輪を開催することを政府は決めた、だから(20.12公開の)アプリをもっと活用しようぜ」って書いてある
・政府に安く見積もられているのは「外国人」ではなく日本国民です
・怒るポイントがあるとすれば、それはアプリの違法性とかではない
■さーてそんな政府が打ち出す「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」は!(何かの次回予告ふう)
公開された50ページのPDFを読んでも、ピンとこねえなあ。と思っていたら、ありましたありました、ピンとくるところ。
新型コロナウイルス感染症の影響により、帰国が困難となっている被退去強制者の送還をより一層充実させる。また、送還忌避者の更なる送還促進に向け、個別送還、小規模の集団送還、保安要員を付しての送還及びチャーター便による集団送還等、事案に応じた形態での送還を一層充実させることとし、このための体制整備を図る。あわせて、国際移住機関(IOM)による自主的帰国及び社会復帰支援プログラムの活用を推進し、これらの送還忌避者を翻意させ自主的出国を促進するための取組も充実させる。
コロナのせいで帰国できないとか言ってる奴らがいるけど、とにかく帰国させる。なんなら自分の口で「帰ります」って言わせる。
これさー、公的な文書で自慢気にいうことかね。
よりによって「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」というテーマでよ?
■したがいまして、ミャンマーのサッカー選手が難民申請。というニュースに「こういう手段で日本に居座ることを認めてはいけない」「外国人にとって暮らしやすい国だとは思えないんですが」などの声があがっているのを目にしても、失礼ですが鼻がフガフガ鳴っちゃうの
第三国定住難民って制度がありましてね、出身国から一次庇護国を経由して、真に頼り甲斐があると思う第三国に向かう制度なんですけど、今回の日本はたまたま最寄りの一次庇護国な可能性のほうが高いと思うんです。
■気を落ち着かせるために長めに紹介したい
そもそも出産直後のリンさんにどこまでの行為が期待できたのか。これは法的な期待可能性の話です。検察は葬祭義務の中身も具体的に特定していません。「検察が言う葬祭義務って何ですか」と聞いても答えてくれないんですね。それなら彼女は15日に一体何をすれば良かったんでしょうか。警察に通報することですか。職場に通報することですか。でも法律のどこにもそんな義務は書かれていないわけです。
ベトナムでは人が亡くなったときにどういう弔い方をするのかということを検察は全く捜査していません。それで、リンさんに対して「日本では亡くなった場合には通報しないといけないことはわかってましたよね」みたいなことを言って、そういう調書も作っているわけですよ。けれど、実際に通報義務なんかどこにもないわけです。
根本には、技能実習生を「数年で帰っていく存在」としてしか見ない日本社会の姿がある。定住は認めない、数年で必ず帰国させるという前提があるからこそ、日本語学習の機会提供にも、家族形成の支援にも、消極的なのだ。どうせ帰らせるのだから。
同じ日本政府が、一方では「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」は実習生でも同じだと注意喚起をしている。だが他方では「技能実習生の妊娠・出産は想定していない」と言い続けることをやめない。
その根本的な不整合を自ら残しながら、「妊娠したら帰国させられる」という恐怖はあくまで実習生たちの「間違った認識」であるというのが政府の立場のようだ。あたかも問題は実習生側の誤解にあるかのような言い方である。
私たちは子どもを産み育てづらい日本社会の問題それ自体の本質的な解決はせず、日本より賃金の低い国から若者たちを大量に呼び寄せ、子どもを産み育てる機会を奪ってまで働かせるという非人間的で擬似的な解決を図ってきた。そんなことはもう、終わりにすべきだと思う。
特に3本目が良いんです。ぜひご一読を。
■問われているのは日本社会、という主旨の記事が増えている気が。というか、自分の考えがそっちだから目に入ってきやすいんでしょうけどね
■今週の最後もまた技能実習制度の話。みんなわりと簡単に「技能実習制度なんかやめろ」って言うじゃないですか。
中国人と比べれば重労働や低賃金であっても文句を言わない、ベトナム人の技能実習生が多く雇用されるようになった。それが、ここ5年ほどの流れだ。ひどい話のようにも思えるが、たとえば漁村Zでとれた牡蠣は、日本人なら誰もが名前を知っている大手スーパーの店頭にも並んでいる。私たちが惣菜コーナーの特売でカキフライを買って安く食べられるのは、もとはA水産のような会社でおこなわれている牡蠣打ち労働のおかげである。
カキフライぐらい食べられなくてもいいよ、って言うひとが想像しないのは、野菜、肉、魚、コンビニ弁当などの加工品含む食品、衣類、建設、製造、介護、彼らなしで日本社会は既に成立しないんだよ。って実情なんですが。あまりに当たり前すぎて言うのを忘れることがあるのですが、もしかして:そういうひとたちって本当に気が付いていない?
なお、制度に対する世間の逆風には当事者も薄々気が付いているはず。
でもまあ、やめられないんですよ、インドでカースト制度がなくならないように(すみません今インド映画見てたので)(なんならインドのマイナンバーカードに相当する身分証明書不携帯を咎められる外国人、ってシーンもあって笑えませんでした)。
ただ、毎週のように書いていることですが、技能実習制度の欠陥を踏まえた特定技能という在留資格を2019年4月に新設したことで、ソフトランディングへの道はものすごくゆっくりだけど敷かれつつはあります。
……そう思いたい、という願望込ですが。
というかね、カースト制度がやめられないっていうよりは技能実習制度のほうが、やめ易そうですもんね。
チュンさんにとって、日本の技能実習だけが希望の光だ。16歳の長男と13歳の長女には学校を終えたら日本に行ってほしいと願う。欧州や北米に行かせる資金は用意できないが、日本なら地元の行政の貧困対策として渡航費を借りられる制度があると聞いたという。
話している最中に長女のニャンさんが学校から帰ってきた。私を見つめる彼女に思わず、「将来の夢は何ですか?」と聞いた。
「日本に働きに行って、お母さんを助けてあげたい」。そう答えるニャンさんに、チュンさんも「私の夢は子どもたちが日本で働いて貧困から抜け出してくれることです」と言葉を継いだ。
日本に行くという彼女たちの夢が実現するのを願った方がいいのか、私には正直分からなかった。
こういう何も知らないひとたちの無知につけこんで搾取するようなひとたちに大き目のバチがあたりますように。
あと、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」に書いてあるような美辞麗句のうち、少しでもいいから本当に実現できますように。