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概念としてのガイジン・マン/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(22.2.13-22.2.19)

当該週でいちばん盛り上がったトピックを取り上げて何か言う。というのが本連載の定番オープニングですが、今週はうっかりバリューの小さそうなニュースから。

・逮捕された経営者の弁「のどから手が出るほど人手が欲しかった」
・「島なら捕まらない」と油断する労働者
・記事見出しにもある通り、カラオケがうるさくて警察呼ばれた

非正規在留でもかまわない雇用主、求められている認識が裏目に出た労働者、彼らをなんとなく気に入らなかったのであろうコミュニティ。
などを想像して遠い目になりました。
これって結局カネしか接合点がない付き合いはサステナブルじゃない、ってあたりまえの話ですよね。

■そういうまとめ方をすれば、そもそも本連載で毎週取り上げているニュースはすべてそこに帰結する説。

早晩、日本を取り巻くアジアが富裕になれば、労働者たちは“いじめ体質”の企業風土やアジア人軽視の日本の空気にも耐える必要はなくなる。アジアの担い手を失うとき、日本はさらに遠くのアフリカに労働力を求めるといった“焼き畑的手段”に出るか、あるいは日本人だけで人手不足を解消するかの選択を迫られる

不法残留などで摘発された外国人のほとんどは国外に退去している。入管庁はそれ以外の人たち、退去強制令書が発付されても出国を拒む人たちを「送還忌避者」と呼び、現行法の不備でこうした人を強制送還できないから、法改正が必要だと主張している。
では、どうして送還忌避者が発生するのか。ここに入管庁資料が触れない第1の不都合な真実がある(中略)入管庁は「送還忌避者」とひとくくりにするが、彼ら一人一人は帰国を拒否しているのではない。帰れない理由があるのだ

3件目は、特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会についてです。先週10日、この勉強会において、田中明彦政策研究大学院大学学長からお話を伺いました。
田中学長からは、外国人材の受入れ・共生の在り方を考えるに当たっては、高齢化が進む日本社会の未来像、世界の中の日本、技能実習制度や留学生政策における制度の不備・首尾一貫性といった視点が必要であるとの御高説を賜りました。その後の意見交換を含め、外国人材の受入れ・共生の在り方について大局的な見地から貴重なお話を伺うことができ、大変有意義な勉強会であったと考えています。

太字は引用者

難民の受入は難民条約に基づく人道的措置であり、経済政策とは切り離して検討する必要がある一方で、難民一人ひとりが技能・経験を活かして日本で活躍することができれば、双方にとってwin-winとなる。実際、諸外国では難民やその子孫が移住先で活躍し、受入国の経済社会の発展に寄与しているケースは珍しくない。こうした観点から、難民審査の適正化・透明化はもとより、難民に認定された外国人が日本国内で活躍できる環境の整備を本格的に検討していく必要がある。

太字は引用者

政府がお題目として唱える「共生」を経団連ふうに解釈すれば「win-win」となるように、概念としての外国人論をやってるから伊豆大島みたいな話が日本全国で起きているんじゃないのかね。そう思うんですよ。

■ひとをひととして見るのって、そんなに難しいですかね?

難民申請と同時に特定活動へビザが切り替わるひとたち(=概念として「送還忌避」予備軍とみなされがちなひとを多く含む)を正規雇用しませんか。
というチャレンジングな取り組みを続けているNPO法人のプレスリリースが上記リンクですが

たとえばヤマハ発動機のエピソードとか、完全に「ひと」の話なんですよ。良いと思うんです。やれば出来るんじゃん。

■概念

■概念じゃない

■概念だから、を敷衍する社会では珍しくもないニュースだ。と言いたい

この件「5年の受け入れ停止」ってことはその後はまた雇用可能ってこと? とか、受入企業の罰則はいいけど監理団体は? とかのコメントを目にして私が思ったのは
・人手が足りず技能実習生を雇用する中小企業がこんなことをやらかして、5年雇えなくなれば倒産勧告と同義
・別企業を立ち上げて、そこが新たに技能実習生の受け入れを申請する流れは珍しくもない話
・この処分自体が現状追認の一部だし、この報道をもって「カタが付いた」ふうに「流す」社会は不健全

あとね、他媒体で触れられていなかったので結構驚いたのですが

ベトナム人の技能実習生で、建設会社で働いていたランさん(仮名)が2年間にわたって精神的・肉体的暴力を受けていたことを証明する生々しい動画を見たとき、岡山県警の担当者は犯罪の捜査を担当する部署に事件を回すのでなく、「外事課」に調査を依頼した。岡山県警のウェブサイトによれば、外事課とは、国際テロ対策や出入国管理および難民認定法違反の取り締まりなどの業務を推進する部署だ。「まるでランさんに問題があるかのような扱いだった」とランさんの支援者の1人は言う。

太字は引用者

フランスメディアの筆者だから気になったこと、で済ませていいんでしたっけ。そういう管轄だから、って話ではあるけど「外国人による犯罪を取り締まる」部門のひとは「被害者」という属性ではなく「外国人」という属性で見てしまいそうじゃないですか。
同居人からの暴力に耐えきれず最寄りの交番に駆け込んだら「それより在留資格は?」ってボタンの掛け違いが生まれた国に我々は居るわけで。

■という具合に、ストレートニュースばかり読んでいると気付かないような視点が得られる記事は珍重したい。と思うことが多かった1週間でした

是川 「現在、私は日本に留学生や実習生を送り出しているベトナム、中国などアジア6カ国で、数年前から大規模な調査をしていますが、来日を希望する層は予想に反して増えています。拡大する中間層にあたる高卒以上の若者が日本を選ぶ傾向が強まっている。自国の経済的地位が上がっていくなかで、簡単に行ける近くの国や遠い欧米ではなく、現実的でドライな選択肢として日本を考える層が生じています。この風をうまく捉えることが重要だと思います」
小熊 「その場合の障壁は、日本に欠けている透明性です。永住資格の取得条件に関しても、行政の裁量が大きすぎる。例えば『素行が善良であること』という条件がありますが、その具体的説明がない。米国移民局は『グッドモラル』の条件を詳しく具体的に示していて、何をどうすれば認定されるのか明快です」

しつこいようですが太字は引用者

グッドモラルとは。みたいなページを探して、お、分かりやすい。ってなったウェブサイトは合衆国政府とは関係ない民間企業のものだったのですが、一応リンクはこちら。

薬物禁止法の対象になるような犯罪は情状酌量の余地あるとはいえ一般論としてよろしくない。ただし30g以下の大麻所持は除く。
みたいな明文化、日本だって出来るよねえ。お気持ち排除、たいせつ。

■概念、概念じゃない。って書いていて思い出したので過去記事へのリンクも最後にどうぞ。
ちなみに本日のサムネイルは「ガイジン・マン」って変な曲が入っているCDイメージですが、当然ながらニック・ロウは本稿内容とは無関係。当該アルバムから1曲採るなら"Rocky Road"だろ、みたいな話はまた別の機会にでも。

※『ワタシたちは ガイジンじゃない!』英語字幕・再編集版
<放送> 2/26(土) NHK総合
午前10時5分~10時54分(愛知、岐阜、三重、静岡、福井で放送)

イッセー尾形公式ホームページから

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