週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.1.31-21.2.6)
ニュースウォッチの醍醐味に、あーあの時のアレ、そうなったんだ! があります。テレビ東京『家、ついて行ってイイですか』〇カ月後VTRみたいなものですね。今週は私がずっと気にしている群馬のアニキ近況が久しぶりに聞けて満足。
■はじめに。群馬で家畜などの大量窃盗を主導、とされる容疑者(たち)について最も報道量が多かったのは昨年10月下旬でした。
ものすごい凶悪犯イメージだけを世間にふりまいた挙句、人が忘れっぽいのをいいことに、その後どうなった。という報道はほとんどないわけで、例外的に「捜査は長引きそう」という記事を専門紙が掲載したぐらい。
県警幹部は「難しい捜査だが、地道にやるしかない」と言った
あと、年明け早々に出た文春のこの記事は良かった。
本当は小物なのに悪目立ちしていたせいで、日本の官憲から実態以上の巨大組織犯罪のボスであると勘違いされてしまった可能性
以上がここまでのあらすじ。
さて。
■2月3日、岐阜のローカルニュースに次のような一節が。
(岐阜県警捜査3)課は、実行役を大きく2グループに分ける。一つは、岐阜市内の同じアパートに住む3人を中心とした「岐阜グループ」。
2~4人でドラッグストアへ行き、高価な商品を中心に万引きする役と、見張り役、駐車場で待機し円滑な逃走を助ける運転役などを分担。
盗品はコンビニの宅配を使って草加市の男へ送り、男がベトナムへ輸出
埼玉県草加市なので(群馬県太田市の)アニキたちとは明確に別の話なんですけど、一瞬、お? ってなったんです。岐阜が舞台の犯罪でも、首都圏に関係してくるのか。そりゃそうかも。って思っていた矢先……。
■2月3日21:40 産経新聞
2月4日 毎日新聞群馬版
群馬のアニキたちが(また)逮捕された、と。
正確には(1) 出入国難民法違反(不法残留) (2) 出入国難民法違反(在留カード偽造) (3) 道路交通法違反(無免許運転) に続く4度目……と思いながら目を通していると、タッチの差で速報合戦に敗れた毎日新聞の記事末尾にいわく
3人は、北関東で相次いだ農畜産物の盗難事件に絡み、20年10月に入管法違反(不法残留)容疑などで逮捕された13人のベトナム人グループのメンバー。同容疑についてレ容疑者は不起訴、ブ容疑者は処分保留となり、フウン容疑者は起訴されている
1件目容疑、不起訴になってたのか!(アニキと呼ばれているのがレ容疑者)
「家、ついて行って~」に出演する市井のひとの人生が、番組エンドロール後も続くように、非難囂々のさなか逮捕された瞬間にそのひとの人生が終わるわけではなく、その後も彼/彼女は生き続けなければいけない。
家畜の大量窃盗の主犯格、という読み筋を裏付ける証拠が出てこないからって、何度も再逮捕を繰り返し・有罪判決がおりるまでアキラメないぞ。って意固地になってないですか、大丈夫ですか。
罪は罪として相応に償うべきですが、この状況、罪と罰のバランスに欠けているのでは。そう思うんですよね。
■もうひとつ、昨秋のニュース。
「会社にはだまされた。でも、それで農家は助かった」
ある農家のことばです。
今回の取材を通して見えてきたのは、外国人に頼らざるを得なかった、地方の産地の現実でした。
当時のニュース、ほとんどアーカイブすら残っていないうえNHKは固有名詞を省略するのでなんのことだか分からない(かろうじて残っている同じ件のウェブサイトもNHK)。
検索キーワード「ホアンアン合同会社 逮捕」あたりで出てくる話、コンテンツが消えるに任せてしまうと、同じ轍を踏むやつなのに……と不満に思っていたところ、信濃毎日新聞が連載を始めていました。
良い。とくに「日本の農家」が果たして共感に値するのか、というところも描かれているあたり。
午前9時からの休憩時間に農場主がベトナム人3人に配るのも1人1個のパンだけ。一方、日本人には飲み物や数種類のパンが支給される。ある時、ベトナム人の同僚が問い掛けた。「なぜ私たちにジュースはないんですか」。農場主は無言のままだった。
■ニュースを消すんじゃない、と主張する私ですが「消えないコンテンツがネガティブに働いている事例」では。と思った最新ニュースがこれ。
見出しにいう「ニセ情報」を真に受けたブログを私もチラ見しましたが、そういう人たちが証憑として挙げるのが、よりによって公的機関のホームページなんですよ。知ってました?
平成23年8月17日付で、厚生労働省より「外国人からの生活保護の申請に関する取扱いについて」が各自治体あてに通知されました。入国後間もない外国人から生活保護の申請があった場合、生活保護の実施機関は、申請者に対して入国管理局へ提出した資料(入国在留中の一切の経費を支弁することができることを証する文書等)の提出を求め、申請者が理由なく提出を拒む場合は生活保護の申請を却下できるという内容です
2011年に、生活保護受給を目的とした入国があったのは事実として、その件は明確に国が禁じた、ほんでな、それが大阪のおかげっちゅうことをな、ちょっと言っとこ思て。
って文書なのですが、10年前の話を根拠に「今も起きているに違いない」って信じるのは陰謀論のたぐいだと思うし、あと大阪市も自慢するあまりに誤読を誘う余地がある書き方をなんとかしといて。
■話は変わって「日本国内のベトナム人の間で流行しているギャンブルで負けが込み、賭博グループに払う賭け金の支払いを滞らせて揉める」系ニュース、今週は三重。
捜査関係者によると、男性はベトナムの公営ギャンブルに似た「ロデ」と呼ばれる宝くじに似たギャンブルで負けが続き、約200万円の未払い賭け金を抱えていたという。男性はインターネットを通じてロデに参加していた
先週は静岡。
(静岡県富士)署によると、グループと被害者の男性は同国などで流行している賭け事「ソデ」を通じて面識があり、賭け金の支払いでトラブルになったとみられる
ええと、ソデとロデって別? みたいな感想ありつつも、後者の記事〆にある「ベトナム人グループによる身代金目的略取事件は昨年11月以降、埼玉、長野、滋賀の各県で発生し、社会問題化している」。
これ、軽視したらアカンやつ。という思いが強まります。
■定番系ニュース
技能実習生や留学生は20歳前後の若者が多く、経済力やアニメなどの文化面にひかれて来日する人も多い。ただ語学や就労のための資格試験の難易度が高いのに対し、待遇が良くないとの声が強まっている
外国人人材への期待が大きいのは、介護業界の慢性的な人材不足が理由だ。厚生労働省の試算では、25年には約38万人の介護人材が不足
これはさすがに技能実習のタテマエ「本国への技術移転」を無視しすぎだと思いましたね。当事者の介護業界のみならず、報道するメディアも。
地方では、深夜もいとわずに働く外国人の留学生は取り合いの状況という。幹部は「留学生は先生が怖いから、先生が送り迎えすると学生が休まない。遅刻したらこうなるなどと教えてもらいながら送迎してもらっているので、非常に助かっている」と話す。
学校側にもメリットはあるという。多くの日本語学校や専門学校にとって、借金を背負ってくる留学生の授業料の未納や滞納は深刻な問題だ。この派遣会社の幹部は「安定的に働いてもらえれば、学校も授業料を徴収できる」と語った。
この学校だけではない。東京都八王子市の日本語学校の元職員も学費徴収のために留学生に仕事を紹介していたことを認め、「貧しい若者を呼び集め、法で定められた時間以上に働かせていた。企業に留学生という名の労働者を送り込む中継基地だった」と話した。元職員によると、学校の理事長はこう言っていたという。「人材不足に悩む企業に留学生を送り込むことが日本経済を救うことになる。これは国策。一丸となって留学生を増やそう」
定番系といえば、下のようなニュアンスの記事も非常によく見かけます。
留学生の大半は20代。同世代の子どもが3人いる城戸さんには他人事とは思えない。「子どもが異国で同じ境遇に置かれたら、どんな支えがほしいだろう」。いつしか雇用主とバイトの関係を超え、親身になって相談に乗る自分がいた。(中略)収入が減った留学生から勤務を増やしてほしいと懇願されたときは、他の従業員を減らすわけにもいかず、やむなく断ったこともあった。城戸さんが今感じるのは、外国人は単なる労働力ではなく、日本社会の中で頼り頼られる存在になっているということだ。「外国人も働きやすく、みなが来店しやすいお店に」。日々の目標は、そのまま共生社会を目指す歩みと重なる。
個人の善意に頼るんじゃねえ vs 個人の善意の積み重ねが社会改善の第一歩だろ。という思いで読後の感想が忙しくなるやつ。
■個人的に、というか会社員的に興味があったニュース
有料部が読めていないので(読売新聞の有料コンテンツって紙の購読者にしか開示しないんですよ)むしろ何が書いてあるか教えてください的な感想です。
■今週の「知らなかった」その1
外国人の未払い医療費の対策として群馬県は、未払い分の一部を県が補填する「外国人未払医療費対策事業」を1993年から実施。2002年度の25医療機関への計約2100万円をピークに、19年度は15医療機関の計約600万円と減少した。同事業は本年度限りで廃止の方針だったが、関係団体から再検討の要望も出ており、県は「再設置も含め、検討している」とする
なるほどこれか。
県は3月の県議会厚生文化常任委員会で、同事業の廃止理由を「一定の役割を終えた」と説明。在留資格のない外国人の医療について「本来は国が対応すべき問題」と述べた。
■今週の「知らなかった」その2
長野在住のブラジル系16歳女子がいじめにあっていて、という話をなぜかBBCニュースブラジルが伝えていて、ぜんぜん拡散されていないのはどうなの。って思って書いたんですけど、うっかりイジメ・ダメ・ゼッタイ。ってフレーズが頭に浮かんだせいで、BABYMETALのイメージ画像を貼ったらなんの話だかパッと見では分からなくなりました。
「外国人」が日本で働くにあたって、なんでこんな目にあわなきゃならんのか。という話として当連載で紹介するのは自然だと思うので、こっちのnoteも読んでいただけると幸いです。