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週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(20.12.27-21.1.2)

年末年始は外国人関連の報道って減るのかなー。って2020年最初の更新で(その予見は裏切られ、と)書いたんですけど、2021年はそもそもそんな・減りそうな気配すらなく、当然のように各種報道が続きました。なるほど1年経つと社会は変わる。あけましておめでとうございます。
2020年の抱負が「キレイゴトを言うのは自分の役割ではないけど、それでも少しずつ社会が良い方向に変わるには“自分は”何ができるか、を継続して考える」だった私、2021年の抱負は……もっとダイナミックに変えるにはどうすべきか、を考える。かな。本年もよろしくお願いいたします。

■年末年始にかけての技能実習制度への言及いろいろ

順にNHK、毎日新聞、共同通信、朝日新聞、埼玉新聞、米麦日報、赤旗。
これだけのメディアがいろいろな切り口から取り上げていることが、まず壮観。という感想になってしまうのは、週刊形式で更新するようになって70号目なんですけど、やっぱり相当、世の中の風向きが変わったと思うから。
だって、メディアっていってもお商売ですからね、読者の関心がないことは伝えないんですよ。つまり、技能実習制度って良くないらしいじゃない? って認識を持つ読者をそれぞれのメディアが抱えるようになったんだなあ、という意味での感慨。

■本題からそれますが

「この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。残り:4649文字/全文:5924文字」
とあるこの記事の、有料部最後に「取材を終えて」って記者の個人的な述懐が記された段落がありました。

2020年、外国人技能実習生に関する報道を目にする機会がたびたびあった。実習生の入国制限で農家が人手不足におちいった。中小企業の経営が悪化し、実習生が突然解雇された。失踪した元実習生が犯罪に関わった……。いずれも技能実習生に関わる事実だ。けれども、それらの報道からは実習生の「顔」が見えてこないように感じていた。自分と同じように、それぞれの人生や家族をもった人間としての「顔」だ。
(中略)
海外から日本に来た一人ひとりの「顔」を知り、同じ社会に暮らす人間だと感じるところから、技能実習制度をめぐる議論もはじまるのではないだろうか。

抽象的な存在としての「技能実習生」ではなく、ひとりひとりの個を想像することが、われわれの立つべきスタート地点では。という、とても共感できる内容だったんですね。
でもそれ、「有料会員」にしか届かない場所で力説しても? って感想になりませんか。
もちろん、繰り返しになりますがメディアだってビジネスで、なんでもかんでも無料で読めると思うなよ。会員登録すれば読めるし。みたいな反論は成立します。
本来なら届かない層にまで届いてしまう(良くも悪くも)現代社会において、旧メディアの代表格たる新聞の伝え方はもっと工夫の余地があるのでは。という外野からの感想がつい、口をついて出るんですよねー。

■いっぽうには無料で全文読める素晴らしいコンテンツがあり

記録は保存・公開されるべきやで。という思いを強くする、こういう「コンテンツ」もまた。

往々にして紹介タイミングがズレるんですけど、たぶん日本でいちばん法相記者会見の書き起こしを面白がってる読者は俺だ。という自負があります。12月25日付の会見を味わうには、12月23日の新聞報道から説明が必要なんですけど。

川口市という自治体単位では人道的に手助けをしようと思っても制度上それができない。できるのは国なんだから、法務省がちゃんとしてくれ。って要望書を渡しました、という内容。
その2日後の、法務大臣の見解を問う一節。太字は引用者すなわち私です。

【記者】
今,大臣がおっしゃったようなことが,やはり現実的にきちっと対応できていないので,(引用者注:川口市の)奥ノ木市長も緊急に申入れをしたということだと思うのですが,それに対するお答えにはなっていないと思うのですが。
実際,在留資格の問題,在留特別許可の問題なども関わってくると思いますし,仮放免中の就労許可,それから公的支援を地方自治体から受けることができる,そういった具体的な対応が必要だと思うのですが,そういったことに対して取り組むお考えは大臣はないということでしょうか。今の考えを聞いていると,全く今の状況でいいというふうにしか受け取れないのですが,いかがでしょうか。

ふははは。いいぞ、もっとやれ。(これこそ「自分と同じように、それぞれの人生や家族をもった人間としての」記者のことばですよ)

■話かわって年末年始の休みもなく働く、といえば新型コロナウイルス

元旦の読売新聞が、茨城の食品加工工場におけるクラスターについて伝えていたのですが。

「新たに外国人3人感染、計27人に」
この見出しの、前日報道時のニュアンスとの微妙な変化が気になるマンこと私。

「24人の大半が外国籍」。
ちなみに地元、茨城新聞が速報として12月25日に伝えた際にはもっと詳細が報道されています。

県によると、15人のうちの1人が自宅で開いた食事会に、ほかの陽性者が複数参加していた。また、15人中14人が外国籍だった。県はこの工場関連で約60人を追加検査する

最終的に27人の感染者のうち、極端な話、100%が外国籍だとするじゃないですか。だったらどうだって言うんですか。
「外国人差別を助長するおそれがあるから」あまり詳しく伝えない判断をメディアがおこなってます? それ、読者の民度を低く見積もりすぎでは?
某Y!ニュースコメント欄とか見たらねえ。って同じ躊躇を私だって抱きますけど、でも結局事実は曲げられないわけだし、隠せば顕る/消せば増える。って言うじゃないですか[要出典]
変に気をつかうフリが、伝える側の内心をあらわしてしまっているようで、不祥事をおこしたタレントの名前を消してまわるテレビ局のウェブサイトじゃないんだから、そういうの、卒業しませんか。と言いたい。

■今週のその他いろいろ

“実習生の受け入れ監理団体の関係者は「技能実習の方が慣れていて安心感がある。特定技能はなじみがなく(実習生に移行を勧めるのは)抵抗がある」”って記事にあるんですけど、試験なしで移行できる業種も多いなか、この言いぐさはダウト。

媒体が媒体だからそのうちページ消えると思うんですけど、良い内容でした。強いていえば“特定技能の在留資格では、家族の帯同が認められていません”というところは間違い。
2号になれば家族帯同は可(技能実習は3号になっても不可)で、そこにこそ特定技能と技能実習の違いがあるわけで。

日本農業新聞のこの記事、「農」を起点とした日本社会のレポートになっていて、専門紙としての気概を感じます。

“以前は店外にテラス席も置いていたが、騒音の苦情を受けて撤去した。何とか歩み寄りを図ろうしたが、その後も近隣住民との溝は埋まらず、結局、今の場所での営業を続けることを諦めた”
エッグコーヒー、日本におけるベトナム人の起業事例として最も有名なお店だし、新大久保がこれからの日本社会をイメージする町・という扱いを受けて久しいにもかかわらず「近隣住民との溝は埋まらず」ですからね。

この件、思ったほど盛り上がらないのは何の要素が欠けているからなの? 東京福祉大ほどの明々白々な悪役の不在?

Q.なぜ新しい在留資格で受け入れを?
A.今、約40万人が利用している在留資格「技能実習」に問題があると考えたからです
……ってところ、良いです。

“被告は警察の留置場で年を越した。「入管はあちこちに監視カメラもあるし、医師の嫌がらせもある。こっちの方が安心感がある」と力なく語る”

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