週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(20.10.18-20.10.24)
今週はセンセーショナルな記事が多かったですねえ。
NHKにしてはずいぶんポップな見出しだな、と思ったら記事で紹介されている、NPO法人代表のひとのセンスみたいでしたが。ただ、たしかに現場のひとの口からぽろッとこぼれてきそうなフレーズではある。
「彼らは『受け入れ先から暴力を受けた』『実習先の企業から退職するよう迫られた』と訴えて、私たちに助けを求めに来ています。新型コロナウイルスの感染が続く中で、そうしたベトナム人が後を絶たないんです」
そして吉水さんは、「駅に捨てられた実習生がいるんです」と言って、1人の技能実習生を紹介してくれました。
最近そんな映画を見た気が。
と思ったのですが、ナイジェリアのストリートで生きる女性たちを描いた映画『オロトゥーレ』(2020)、およびその彼女たちが夢見て渡るヨーロッパで生きていく現実を描いた映画『ジョイ:闇と光の間で』(2019)、この2本に人が捨てられるシーン……あるといえばあるので、それかなー。と思いかけたものの、もうちょっと前に見た『LION ライオン 25年目のただいま』(2015)のほうが近いかもしれません。
インドの貧しい家庭の5歳児が兄とはぐれ、形として駅に捨てられた恰好になるんです。でもそれ、5歳児の話なわけで、成人男性が「駅に捨てられる」社会ってどうなんですか。我々はそんな社会を、次世代へ誇りを持って引き渡せるのか。
■もうひとつ同じぐらい「どうなってんの」と思ったニュース
ことし6月中旬から3か月あまりにわたって、国の許可を得ていないのにベトナム人3人を南牧村の農家で働かせていたとして、職業安定法違反の疑いが持たれています
NHKのこの記事では触れられていないんですけど、同じニュースを地元である長野放送が報道したときの記事が一種異様だったのでどうしても紹介せざるを得ない。以下のキャプチャはリライトだかアップデートだかされた元記事ではなく、Yahoo!ニュース配信時のイメージです。
「同じ農家で働かせていた別のベトナム人の男2人が、お互いを包丁で刺したり、バットで殴るなどして傷害罪で起訴されていて、その捜査の過程で、今回の事件が発覚した」
「(引用者注:不法就労でつかまった)3人は、おととしから去年にかけて技能実習生として入国していましたが、今年2月から4月にいずれも実習先から失踪していました」
「包丁で刺したとされる容疑者はおととし7月に留学の資格で入国しましたが、在留期限の去年10月までに在留期間の更新などを行わず」
「関係者によりますと、佐久地方の農家は新型コロナウイルスの影響で外国人の働き手が不足しているところも多く、そこを狙われた可能性もあるとみています」
いや、ちょっと情報量が多すぎるな……。
■センセーショナルであればあるほど盛り上がるのは世のニーズがそこにあるから、だとは思うのですが、その傾向をアオる派に与したくない私です
毎日新聞のこの連載、「外国人苦学生」というある種キャッチーな題をいただいていますが、既にそこに予見がありますよね(苦学生て)。
1本目はルールを破っていたら報いを受けました、って話。2本目はルールを適用されるのは仕方がないけどそこにお慈悲はないんですか、って話。3本目を強いてまとめれば、日本社会があらかじめ定めたルールやレギュレーションを実態にあわせて緩和する必要性への言及、ってところですかね。
ただ、これ論の立て方として微妙だと思うんだよなー。苦学生、という言葉選びが象徴しているように感じましたが、つまり感情で世論を誘導しようと試みていませんか。
いまどきのSNS社会、ちょっとしたことで極端にものごとが振れる姿はわれわれもよく目撃するところではありますが、だからこそ、「ルールを変えよう」と「変えるべきルールは守らなくていい」って話は混ぜたらダメだと思うの。
■SNSで盛り上がっていた話といえば、これ
この3年、70.6%→70.8%→70.4%と来ていたのが71.9%なので悪化。という話ではあるのですが、7年~5年前は79.1%→79.6%→76.0%だったのに比べればマシ……ってその比較はアカンやつ(2週間ぶり2度目)
技能実習制度は悪、監理団体が諸悪の根源。みたいな論調が主流なのは、まあ理解できるとして、じゃあそこからもう一歩進めて「悪い」技能実習制度を是正するために作った「特定技能」について、もうちょっと言及するコンテンツが増えるべきだと思います。……このnoteを「週刊」とうたってから1年以上、ずっと言い続けている私が言うんですから信用いただいていいところですけど、まだぜんぜん足りないのよ、特定技能という制度についての理解が。
外国人は今や従業員の約25%を占めるといい、野村壮吾社長は「なくてはならない存在」と話す。しかし、現在、中国やフィリピンからの実習生計4人が来日できないでいるほか、現地での採用面接も行えない状況が続いているという。野村社長は「直接話したり手先の器用さを見たりしたいので、オンライン面接というわけにもいかない。入国制限緩和で状況は良い方向に向かっていると思うので、現地での採用活動が再開できることを期待したい」と話した。
監理団体の近藤隆理事長は「実習生がいなくなって、作付面積を減らそうかと悩む農家もいたので、これで安心できると思う。ほかの国からの受け入れも、できるだけ早く実現したい」と話していました
少子高齢化による労働力不足を見据え、政府は外国人の就労拡大を推進。昨年4月の改正入管難民法施行で「特定技能」の在留資格が新設され、人手不足の農業や介護など14業種で外国人が働けるようになった。
だが、今年6月末時点の特定技能外国人の受け入れは5950人にとどまり、政府が想定する「2024年までに最大約34万5千人」は遠い。相手国との調整に時間を要していることなどが低調の理由とされる。
そうした中、今回の「転職解禁」は人手不足の14業種に就くことが前提で、滞在が認められた1年間で働きながら日本語などを学び、試験に合格すれば特定技能に移行できる。外国人の労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は「特別措置は、受け入れが進まない特定技能の分野に、国内で余った労働力を回すその場しのぎの対応にすぎない。実習制度は廃止し、特定技能の受け入れが進む体制を早急に整備すべきだ」と指摘する。