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社説というポージングを眺める/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(22.8.14-22.8.20)
まるで話題になりませんでしたが、今週は共同通信加盟社が「技能実習制度は見直すべきだ」社説をせーの。で掲げていました。
各紙いちいち比較するまでもないのですが、そもそも毎年この時期、風物詩のように日経新聞が社説で取り上げることになっていて、昨年はその主張にネット界隈が反応、「ようやく日経が言ったか!」と変な盛り上がりを見せたのです。ようやくはおまえたちの方だよ、と半ばイライラして書いた去年の私。
新聞メディアにとって社説という場がいかにたいせつか。は最早、業界外に伝わらないことは明らかながら、なにしろ人は適当ですからね、去年の日経みたいに急にホメられたりすることもある。
47news加盟各社が足並みそろえて「技能実習制度はもうやめよう」って言うこと自体に私は反対しません。
ただ、ボディビルに関心ないのにキメのポージングを見せられても「……」はかばかしいお返事が出来ないんですよ、すみませんね。ぐらいの感想。
■ちなみに社説で技能実習制度を廃止せよ、といちばん最初に書いた栄誉は2020年1月28日の信濃毎日新聞が保有しています(俺調べ)
同じ社会を担う存在として迎え入れる姿勢を欠いた、場当たりな労働力補充政策は立ちゆかない。日本で働き、暮らす外国人が直面する困難に目を向け、改善していくことが何より大切になる。技能実習制度は廃止し、新たな在留制度を根本から立て直すべきだ
■というかね、廃止コンセンサスが漂ってきたから書くんだろ、いやしくもジャーナリズムを自認するなら顔色うかがってんじゃねえ。という憤りが私にはある
一方、政府は特定技能制度とは異なる「技能実習制度」について、「国際貢献という目的と人手不足を補う労働力としての実態が乖離している」との指摘があることから、今秋にも特定技能制度に一本化することを含め議論を始める
■今週のその他ニュース
■補助線が必要な話
人材をわざわざ人財と書く奴を信用しちゃなんねえ。はネットの常識ですけど、沖縄でネパール出身の外国人労働者が特定技能の在留資格でかつやくしていますよ、良い話ですね。って言われてハイそうですか、とはなりませんよ。
・ネパールから留学生ビザで沖縄の日本語学校へやって来て、実質「労働力」としてカウントされるルートが機能していたのは2018年まで
・あまりにもネパールから来すぎだな、と思ったのか福岡入管が急に入国審査基準をネパールに対して厳しくして、来日が難しくなったのが2019年
・とはいえホトボリさめたら来れるようになるんだよね、と沖縄の産業界が思っていたところにコロナ禍
・日本語学校も、サービス産業も、働き手の補給線がなくなって青い顔になっていた
って背景あったうえでの「そうか、特定技能で入れたらエエんやな」ニュースです。勉強になりましたか。
■もうひとつ、うがちすぎと言われて当然の私見メモ
市長は、「みなさんを表彰してほしいという要望が、市民からもたくさん寄せられていた。みなさんのおかげで、市民の安心安全を取り戻すことができた」と感謝の言葉を述べました。
感謝状を受け取ったマウさんは、「みなさんの心配ごとがなくなってよかったです」と話していました。
ガブリエル・マウさん「みんなケガしたんですから、捕まることをしないといけないと思ったんですね。日本人から感謝されるのは、気持ちがいいです。ありがとうございました」
いろんな媒体が「地域が感謝している」「主役の技能実習生たちもまんざらではない」という形に丸めて報道しているこの件。
「日本人から感謝されるのは、気持ちがいいです」という当事者のたどたどしい日本語が持つ、後者のニュアンスを記録しておきたいのです。
もちろん私が特別ひねくれているから、ですけど(=ひらきなおった)このことば、彼らが「日本人から感謝される」機会が少ない前段あるから出てくるんじゃないですか。
話者が何の気なく口にすることばが持つ情報量、面白い。
■というジャンルでネットウケが良い記事を連発する書き手の最新スマッシュヒット
■反対に、まったく注目されないままの地味ニュースを最後に3本紹介してまた来週
なんならウクライナの話、もう飽きてきてるからね、俺たち。ましてやアフガニスタン? なんだっけ。ですよ。……違う? そうか、違うかー。じゃあいいですー。
日本で起きているのと同じ事象が私の目を引いたのは、5月31日に次の2本の記事が10分差で出ていると知ったから。
「インドネシアからの外国人労働者が今週火曜日にようやくやって来る」
「インドネシア政府はマレーシアに送り出す件をキャンセル」
なおこのあたりの労働条件がUS国務省の人身売買報告書でアカンやつ視されているのは、そう、日本の技能実習制度と同じですね。