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いっちょかみ注意報/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.5.21-23.5.27)

今週も騒々しい1週間でしたが、個人的には「よくある系」として埋もれてしまっているニュースの行方を気にしています。

これだけでは何のことだか分かりませんでしょう。
2022年2月の事件背景は、地裁における初公判を報道した今年1月に明らかになっていましてね。

検察側は「グエン被告が複数回にわたり被害者の男性から下半身を触られるなどのワイセツな行為を受け、その後 解決金を要求するも納得のいく対応がされず、怒りや恨みを抱き犯行に及んだ」と指摘。一方、弁護側は、グエン被告は「男性からの謝罪がなく許すことができなかった」「自分の体は永遠に汚れてしまった」などと語っていると説明、情状酌量を求めました。

あー痴情のもつれ。って思いかけるじゃないですか。
でも、重要なのはそこじゃなくて。

裁判のなかで、被告が男性からわいせつ行為を受けていたこと、そして、警察に被害を相談しても「ベトナム語の通訳を確保できない」という理由で3か月間、捜査に進展がみられなかったことが分かりました。

太字は引用者

下世話な注目を集めてしまうのは二次加害、それはそうなんだけど北海道警の言い分は無視するには大きすぎるだろ、と思っているんです。

被告側は量刑が重すぎると主張したが、成川洋司裁判長は判決理由で、犯行態様が残忍な上「被告人に反省や悔悟の態度が見られない」と退けた

東京新聞23.5.23

高裁の判決文に覚える違和感。法機関の対応を不問に付して、「ベトナム人がベトナム人を刺し殺した」という外形だけで埋もれさせていいんですか、これ。

■定点観測しているといろんな景色が見えてしまうもので

さすがに先週のことだから、まだ記憶に新しいであろう交通事故。

この事故で、バスの後方近くの道路上にいた乗客のネパール人の男性2人とバスを運転していた50代の日本人女性の合わせて3人が死亡しました。

NHK 23.5.17

今週の後追い。有料部からちょっと長めに引用します。

「みんな降りよう! 爆発するかもしれない!」。とっさにそう呼びかけ、外に出た。バスが止まっていたのは、「高速道路の走行車線だった」。
運転手が、バス後部のエンジンルームを開けようとしたが、うまくいかない。自動車整備の専門学校に通っていた友人が手伝い、扉を開けた。白い煙が出てきた。
「自動車整備の学生だから、直せるでしょ」。ふざけてそう声をかけたが、友人は手伝いに集中していて答えなかった。この時かけた言葉を、後悔している。
エンジンを冷やすため、留学生たちが持参していた500ミリリットル入りのペットボトルの水を、友人と運転手が次々にかけた。停車後数分は男性や他の留学生も、2人の後ろからスマートフォンのライトで、エンジンを照らして手伝った。
バスが停止してから5~10分ほど経っていたが、エンジンは直らない。バス後部の脇の路肩に座り込むと、2人はまだ水をかけていた。
「動画を友達に送ろう」。動画を撮ろうとした時だった。
爆発音が響き、かぶっていた帽子にガラスの破片が降りかかってきた。「エンジンが爆発したのか」。そう思った瞬間、友人と運転手の体が追い越し車線側に飛ばされていくのが見えた。目の前にあったバスも数十メートル以上先まで押し出され、その後ろに追突したトラックがあった。

朝日新聞23.5.19

留学生が夜勤アルバイトに、という事故背景については直感的に理解していた私ですが、自動車専門学校に通っている学生も当然いるし、「気のいい彼ら」のうち、誰か親切なひとがその親切心のせいで命を落とした可能性-については、報道されるまで想像がまったく及びませんでした。
亡くなった方々の冥福を祈ると同時に、連想したのは別のこと。

せめて適切な補償が為されるかどうか、気にしていたい。だってねえ。

都の違法行為が認められたのに、なぜ100万円の賠償しか認められなかったのか。それは、国家賠償法の「相互保証」が適用されたためだ。今回、東京地裁は、ネパールで日本人に認められる賠償と同程度の100万ルピー(約100万円)を上限、と判断した。弁護団によると「相互保証」の規定は「時代錯誤だ」との批判も強く「実際に裁判で厳格に適用されるケースはほとんどない」という。
小川隆太郎弁護士「相互保証の適用は、人権保障の点からも問題だ」。「ネパール人は100万円で、アメリカ人だったらどうだったのか。100万円でいい、という誤ったメッセージを送り、抑止にならないのではないか」。

TBSテレビ23.3.26

■今週のその他ニュース。に行く前に

 ―― 技能実習の問題点をどうみていますか。
「日本が選ばれる国であり続けるには、日本で働きたい、学びたい、住んでみたいと思ってもらえることが大切だ。実習生が直面する問題の多くは、日本語でのコミュニケーション能力が不足していることに起因する。せめて入国する前に、日本の生活や習慣、文化への理解と、基本的な日本語ができるレベルの力を求めるべきだ。働き手さえ確保できればそれ以上は求めない、という考え方ではやがて来てくれなくなる」

太字は引用者

おお、さすが既得権益のことしか考えていない(ように見える)ひとは言うことが一味違いますね。
「日本語勉強してこないのが悪い」のであって、彼らが来日するまでに借金背負う仕組みの問題には言及しない。さすが(ホメてません)。

今月、法務大臣に提出された政府の有識者会議の中間報告書では、外国人に対する人権侵害の温床とも指摘される転職の制限が緩和される見通しなどが示された。技能実習という、実態と離れた名称も廃止される。しかし、長年技能実習生の支援に当たってきたNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平さんは、「今後も仲介を民間任せにしては同じ問題が起きる」と指摘する。
「なぜこうした悪質な送り出し機関が存在してきたのか。それは受け入れる日本の監理団体や企業に“うま味”があるからです。制度の下で生まれた利権の構造的な部分に手を入れないと、本質的な問題は解決しない」

この流れの上に実は在るニュースもついでに紹介しておきます。

■その他ニュース、今週も多いので見出しだけ

■おまけ。よその国の動向は興味深いのですが

ロイターのこの記事の見出しだけを見て何か言う前に、一瞬落ち着いたほうが良いです。ガーディアンがちょうど「保守政党の首相5代の言いぐさはどう変わってきたか」って記事を出していましてね。

詳細は割愛しますが、ただネットで読み齧っただけの主張を鵜呑みにしちゃうには移民というテーマは重層的だよ。みたいな結論でしたよ(だいたい本当)。

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