週刊外国人就労関連ニュースまとめ(20.7.19-20.7.25)
だいたい「今週いちばん個人的に〇〇だった記事は」で始めるフォーマットなんですが、そうは言ってもニュース・アグリゲーションの観点で1本選んでいるんですよね。でもね、今週は100%わたくしごと、というか、わたくしの仕事観点で気になった記事を選んでしまいました。
在留資格の取得や就職の際に重視される「日本語能力試験」は今月行われる予定だったが、受験者の感染防止のため中止となった。県内企業で働く技能実習生や、日本語教室で学ぶ人からは落胆の声が聞かれる。
日本語能力試験は「読む」「聞く」の技能を測る検定試験。最上級のN1からN5まで5段階で認定する。主催団体の一つ、日本国際教育支援協会(東京)によると、試験は国内外で7月と12月に行われているが、新型コロナの世界的流行を受けて7月5日の試験を中止とした。
日本語能力試験(略称JLPT)は、すごく簡素化していうと「国の機関が主催している日本語の試験」。
弊社を含め民間事業者による検定試験はJLPT中止期間においても開催されており(=あまり知られていない)、つまり記事の“県内企業で働く技能実習生や、日本語教室で学ぶ人からは落胆の声が聞かれる”が本当なんだとしたら、教えてあげてくれよ、JLPTが中止されたからといってすべての日本語検定試験が受験できないってことじゃないんだ、って。
もうちょっと本音を言わせていただければ、ですね、そもそも「お上への信仰」というか、JLPT唯一神扱いが過ぎるの。
TOEICが今みたいに浸透するまでは「やっぱり英語の能力測定は英検でないと」って言われていたのは御存知のひとも多いかもしれませんが、いまだに日本語能力測定市場ってそんな感じで……いや、それは我々のような競合する事業者の努力不足という側面もあるんですが。
以上も以下も、業界関係者の弁であることを繰り返し念を押しながら言いますが、語学力を測る指標は免許をともなう国家資格とは違うものだから、試験が複数存在することは、健全な市場環境の保持という意味でもたいせつなのではないか。個人的にはそう思います。
だってさあ(出た、タメ口)「技能実習制度しか労働力を国外から持ってくる手段がなかった」から既得権益が発生して、いまやいろんな問題が起きているわけじゃないですか。なにかといえば特定技能の肩を持ちがちな私ですが、偏った制度設計に弊害はつきものなわけで、つまり過ちては則ち改むるに憚るなかれ、よ。今日の教訓「JLPTしか日本語試験が存在しないみたいに書かない!」
■過ちては則ちなんとか。という社説が日経にも載ってました
農業で働く外国人は2019年で約3万5千人と、5年間で2倍に増えた。技能実習生は人手不足を補うための手段でないのが建前だが、実態は労働力として頼っていることが改めてはっきりした。働き手が足りないのは農業が抱える構造問題であり、外国人を必要とする状況は今後も続く。
外国人はもはや安価な労働力ではなく、農業を支えて生産基盤を守る一員と考えるべきだ。そこで必要になるのは、様々な問題が指摘される技能実習生ではなく、外国人が働きやすい特定技能という枠で受け入れることだ。
農だけでなく、他業種にも言えそうですけどね。
農といえば専門紙に興味深い記事があったので紹介しておこう。
■先週もホメたけど、日本農業新聞
記事にいわく、200人を超える外国人技能実習生を必要とする群馬県嬬恋村の農家では毎年10月、収穫が終わるたび来年以降も働いてもらいたいと願う農家と、働き続けたいのに帰国せざるを得ない実習生の別れの場面が数多く見られます、と。
・通年雇用を条件とする点は特定技能も技能実習制度と同じ
・違いは「農家が外国人と雇用契約を結ぶことを義務付けている」技能実習制度に対し、特定技能は「受入機関という第三者が雇用契約できる」点
・葉物野菜の出荷時期が静岡(1~3月)、千葉(4~6月)、長野(7~9月)、茨城(10~12月)とつながることに気付いた、東京と長野に拠点を置く農業ベンチャーのシェアグリ社が、外国人材の産地間融通事業を提案にやって来ました
ってこの続きが白眉だと思うので、ぜひ記事本文をどうぞ。登録しなくても読めます。
■そう、登録しなくても読めるのはイイよね。登録してもカネを払わないと読めないのは、たとえ内容がどんなに素晴らしくても、そのビジネスモデルは不十分でしょ? ってだいたい毎週思っているのですが、特に今週そう感じた記事がこちら
日本政府の「感染国・地域に滞在歴がある外国人に対する上陸拒否措置」をまとめて報じた記事としての決定版と呼んでもいいぐらいだと思ったんです。7人もの事例が具体的に書いてあるし。
でも有料会員しか閲覧できないんですよ。せめて1日1本とか月に10本とか、そういう制限つきでかまわないから、融通きかせられない?
入管制度の硬直を指摘するその矢が自分たちの硬直したビジネスモデルにも、まんまと刺さってませんか。いや「刺さってない」ってアナタ言い張ってるけど、刺さってるって。(というサムネイル画像)
■同じトピックで朝日新聞のこれも有料会員記事なので、毎日新聞だけを責めるわけでもないのですが
出入国在留管理庁によると、政府は在留資格を持つ外国人らの再入国を今後段階的に認めていくことを検討しているが、依然として先は見通せていない。同庁は、感染の有無を調べるPCR検査を実施できる数に限界があるとし、「入国を望む外国人の全ては受け入れることができないと政府が判断しているということだ」と説明。「一人ひとりにかわいそうな事情はあるのだろうが、今は日本政府の水際対策に協力してもらうのが原則だ」としている。
言い方……。
ちなみに7月21日の外務大臣会見記録を見に行くと(誰でも無料で読めます)(今のところはな!)こんなやりとりがあった模様。
【記者】数か月前に出国した日本在住外国人は、再入国は認められない状況が続いています。永住者や日本人配偶者でない方は、制限の前に出国した場合でも、再入国の許可がもらえません。それでも彼らは、日本で税金、健康保険、家賃などを払い続けています。異常であると言わざるを得ませんが、こんな日本在住外国人には、優先的に再入国を許可するつもりでしょうか。また、どんな順番で、どの時期で、日本在住外国人の再入国を認めるのか、いつになるか、戦略を教えてください。
【外務大臣】(前段略)これまで我が国として必要と考える水際対策措置を講じつつ、再入国許可を得て出国中の在留資格を有する外国人について、特に人道上配慮すべき個別事情がある場合、再入国を認めてきた、こういう経緯があります。政府として、感染再拡大の防止と両立する形で、どのように部分的・段階的に人の往来を再開できるか、引き続き検討していきたいと思っております。(中略)世界の感染状況、更には各国におきます往来の再開に関する緩和の状況、自分も毎日チェックしております。日本が異常だということはありません、決して。日本だけ異常だということは、決してないと思っております(以下略)
■「書評」というには内容を詳しく紹介しすぎでは。と思ったりもしたんですけど、なるほど書籍を購入する必要ないな・ではなく、買って読んでみよう・と思わせることができるなら、その文章は書評と呼べるのでは。って考えた末にご紹介
本書はルポにしては制度面へのアプローチが充実しているのが特徴だと思います。ルポというと「ひどい境遇に陥っている実習生の声を集める」というものが、まず思い浮かびます。確かにそういった取材は必要ですし価値のあるものですが、新聞やテレビでもそういった話はできるでしょう。わざわざ書籍という形にする中で求められるものは、背景に関するさらに深い取材だと思うのですが、本書はそれが十分にできています。
■さて。冒頭述べましたように、私自身は日本語の試験を主催運営する民間企業に籍を置く者で、来日するひとの多いアジア各国でCOVID-19がどういう状況か、をマメに追っているのは本業でもありまして。最近のガッカリといえば
一瞬ね「やったか?」感があったんですよ、インドネシア。
州政府、州都スラバヤの市当局などが各種経済社会活動を制限する大規模社会制限を6月8日に終了させ、順次緩和方針に転換してしまったことも一因とされる
ってある通り、それが今や「逆戻り」。ええ、なんだかひとごととは思えませんね。さらにちなみにベトナムでも……
この男性はダナン市リエンチエウ区の自宅で妻と娘と同居しているが、直近1か月は他の省・市を訪れておらず、普段もほとんど自宅にいたという
おお。手ごわい、知ってたけど手ごわいな、COVID-19。みなさまもお体おだいじに。