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週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.1.17-21.1.23)
個人的な今週のトピックはふたつあって、US大統領就任式典における桂冠詩人の朗読(を見て「俺は詩がわからない」という思いを新たにしたこと)と、もうひとつは、直木賞における加藤シゲアキの高評価(を見て継続は力なりだなーって思ったこと)でした。
ジャニーズの功罪の罪の部分、ペドフィリアへの認知の歪みを日本社会に植え付けたことは軽く扱うべきでない問題だと思っていますが、推しの姿を見て何かを学ぶ習慣を教えてくれた功績も小さくないと思っていて、あの、ここ毎週書いてるイントロダクションにすぎないので功罪の功だけに言及するつもりなんですけどいいですか。だって既に文字数まあまあ多いし。
たとえばジャニーズのファンは今みんなパニック障害に理解があるわけじゃないですか。加藤シゲアキのファンが小説に手をのばす機会は確実に増えているじゃないですか。福島の風評被害についてDASH村という窓口がなければ我々はもっと無知だったじゃないですか。マリウスやジェシーやラウールを見て「外国人」あるいは「日本人」って定義をアップデートできる若者が増えているわけじゃないですか。
……結局は接触回数なんですよ。と、私は思うんですよ。
冒頭で書いた「俺は詩がわからない」問題も、詩に接する機会が数万倍になれば解消する方向に進むはずだし、日本における「外国人の就労問題」も、しつこく言及していくことで変わるのではないか。そう思いたいんです。
■イントロが長すぎて本題に入れる気がしなかったぜ。
新型コロナウイルス禍で働けずに国内にとどまる技能実習生が、昨年末時点で少なくとも1千人超いる一方、昨夏以降に新たに4万人超の実習生が入国したことが朝日新聞のまとめで分かった。実習生は昨春からコロナ特例で「転職」も認められたが、再就職が十分に進まないまま、次の実習生を大量に受け入れている状況が浮き彫りになった
先週いちばん最初にお伝えした「ビジネストラックって技能実習生のことなのか!……って驚いてるキミに驚くわ!」案件
この後追いのような記事が何本か出ていた今週でした。たとえば毎日新聞のこれ。
自民党内では「技能実習生の受け入れ継続を諦めたくない首相が停止に後ろ向きだった」(政務三役経験者)との見方が広がっている。技能実習生の受け入れ拡大は経済界などの意向を踏まえ、安倍政権時代に官房長官だった菅首相が主導したためだ
結論としては、国内で苦境にあるひとをどうするか、より新たに受け入れることを優先するのはそれが儲かるからや。という話は上の朝日新聞の記事にも書いてあります。
外国人問題に詳しい指宿昭一弁護士は...「監理団体には動くインセンティブ(動機)がない」と話す。国の許可を得て非営利で受け入れ事業にあたっている監理団体は、実習生に特定技能14業種での転職先が見つかり、在留資格が切り替わってしまうと、企業から監理団体に払われる管理費が出なくなるためだ。
■ちなみに、そういう制度で来日した技能実習生を、こういうフォーマットで報道するのもだいたい同じぐらい罪深い所業だと私は考えています。
「外国のひとだからなんだか怖いような印象あったけど」
「雪かきしてもらって助かるわ」
そうですか。
■もうちょっと……なんていうんですか、現実的な記事のほうが、最近は報道の主流ではあるんですけどね。
■一方で、「外国人による犯罪」という報道が一定以上のニーズある、という予見に基づいたネタも相変わらず
ドラッグ、詐取、誘拐!
まあ大変、物騒な世の中になりましたわねー。いやねー。
■いやねー、じゃねえよ。が私の感想です。
ブラジル日系社会向け紙面にあった技能実習生の「犯罪行為」についての寄稿が熱かった。“ダメ、ダメ、ダメ、ダメと追い詰め、彼らが行った生存のための究極ともいえる行為を自己責任と糾弾することが人の道なのか” / “特別寄稿=皆が幸せに全うできるために=外国人福祉の…” https://t.co/V7lgZA7iMq
— 鈴岸ゆういち (@kissenger800) January 23, 2021
日本人であれば当たり前にあるセーフティネット、安心社会を外国人にもどんな形で適用すれば良いのか、先月ベトナム人技能実習生が家畜を窃盗した事件も、実習生を解雇したり失踪に追い込んだ業者を責めずに、なぜ実習生を責めるのか。(中略)働いてもダメ、ボランティアで農業を手伝い、大根などをもらって帰っても、継続的に行えば業とみなされるのでダメ、ダメ、ダメ、ダメと追い詰め、彼らが行った生存のための究極ともいえる行為を自己責任と糾弾することが人の道なのか。
彼らに安心社会は必要ないのか。
外国人のみなさんも法外な欲望、欲求は望んでいません。働く場が欲しい、安心して子育てがしたい。どんな仕事でも文句を言わない。解雇の不安がない安心が欲しい。老後も安心して暮らせ、幸せ感を持って人生を全うしたい。そんなささやかな希望に応じられないような国が外国人を呼んではいけないのです。日系人のみなさんが希望を感じられる社会をどう築くのか、私たちに突き付けられた課題は重く大きいのです。
いやー本当そう。なんだよ「雪かきしてもらって助かるわー」って。
■そうかと思えばいまだにこういう記事がウケると思っている
ナシを盗んだら、それは法のもとで裁きを受けるべき。そこには何の不満もないんですけど、この見出し「計5千個以上」のナシを「男女2人」で盗んだ感じ、ありますよね? でも記事本文には
捜査関係者によると、28歳被告と38歳被告は共謀の上、昨年9月4~5日ごろ、神川町植竹の農家で、ナシ182個(時価約7万2800円相当)を盗んだ疑いが持たれている
ってあって、いや182個もたいがいやんけ。と思いはしますけど
県内では北部を中心に昨年8月ごろから、ナシの盗難被害が相次いでおり、神川町、上里町などの農家でこれまでに計5千個以上が盗まれた。被害総額は120万円以上に上る。群馬など北関東でも同様の被害が多発しており、県警が関連を調べている。
182個盗んだっぽいから5000個の件もこいつらじゃね? って言ってるんですよ。ちょっとこれ、ひどくない?
■それでいて、農業に従事する労働力が足りないって言ってみたり
■そうだいいこと考えた、派遣だ、人材派遣で人手不足を解消すれば! って言ってみたり
■再び問いたい、われわれの社会は無罪なのでしょうか(反語)
今回の取材を通して見えた一端は、外国人本人の意思に反して「強制帰国」させるのは、日本にとどまってもらうよりも“コスト”がかからないからというものでした。
しかし、そもそも彼らは「単なる労働力」ではなく、私たちと同じように、日本で暮らす「生活者」です。
たとえどんな事情があったとしても、本人の意に反して帰国させるというのはあってはならないはずです。
焚火に当たりながらそんな話を聞いていたほかの実習生たちも、身の上を語りはじめた。僕にもわかるよう、片言ながらも日本語を使ってくれる。男性はほとんどが建設業界で働いていた人たちだった。逃亡理由はみんな「暴力」だ。
「ゲンバ、コワイネ~」
「よく言われた、『オイ、ガイジン! ハヤクシロ!』って」
その言葉にみんな思い当たるのか、けらけらと笑うのだが、僕としてはなかなかに肩身が狭い。
■毎週毎週こんなニュースでいやんなっちゃう。のはたしかですが、たぶん数少ない私たちにできることが、「知ること」だと思うんですよ。だからね、この更新をやめるタイミングがつかめないっていう。
「なぜ私たちに在留特別許可が与えられないのか、一人一人にきちんと理由を説明してほしい」。都内の専門学校に通う川口市のクルド人女性は流ちょうな日本語で訴える。
女性は12年前に父親の都合で川口市に移り住んだ。中学、高校と日本の教育を受け、難民申請をしているが、いまだに在留特別許可が下りず、仮放免の状態が続いている。
仮放免者は就労が禁止され、住民登録もできす、健康保険にも加入できない。「県外に出る時には許可が必要など、自由が利かない環境で育ってきた。将来の夢はあるが、学校を卒業をしても、就職ができないので今のままではかなえることができない」
こうした現状を改善しようと、川口市は昨年12月、仮放免者が就労できるよう制度構築などを求める要望書を法務省に提出した。
女性は「希望の道の第一歩」と喜びつつ、「国の制度のせいで苦しんでいる人たちは、さいたま市などにもたくさんいる。県全体がもっと外国人、一人一人の現状を知って、制度改善の活動に協力してほしい」と声を上げる。
日本に住む外国人がどういう立場にいるか、ただ知ってくれるだけでいい。
また来週!