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人身売買報告書2022の読み方を伝授するでござる/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(22.7.17-22.7.23)

US国務省が発表する人身売買報告書の最新版が公開され、外ヅラを気にする俺たちこと日本がワーワー言う季節がやってまいりました。

今年は見出し芸が興味深く、たとえばNHKの「そこじゃないだろ」感

共同のほうが朝日っぽいじゃないか、と思った朝日

なお法務省の定例会見がなかったせいで回答させられていたのは外務省

何の創意も無いテンプレート回答で、内容は紹介に値しませんが。
なにしろこの件、去年まじめに21年分を読み比べたのでいろんな角度からコメントしようと思えばできるんです私。

■Trafficking in Persons report感想のための前提知識

週刊外国人就労関連ニュースまとめ(20.6.21-20.6.27)から

まず「上から2番目」の件。
基本2番目評価に甘んじていたのを2018年、2019年に「最上位」評価をもらって、そこでニコニコしてたわけ。それが2020年にまた格下げされたんです。
上の表は2020年のものですが、2021年も2022年も「上から2番目」ですし、表の外にある2004年は実は「下から2番目」だった。
個人的にはウィシュマさんの件であきらかになった入管という組織体が体現する本邦のゼノフォビアは「上から」ではなく「下から」2番目に相応しいと思うので、えー据え置きなんだー。と拍子抜けしたのでした。

じゃあ2004年には何があったのか、2018年は。って思うわけですけど、過去noteに詳しく書いたので簡素化していうと「被害者の出身国が世界にアピールした」(2004)「世界基準の約束にようやくサインした」(2018)。

ところで今年の朝日新聞の見出しが「もうこんなもんでいいじゃん」と上を見ることを諦めた現状肯定になっているのは、いかにも衰退一途の国のメディアが書きそうなこととはいえ、情けない思い。北朝鮮を見習え、って意味じゃないよ! そうじゃないけどね!

■今週実はもうひとつ民間の調査機関が出した年次ランキングが発表されていまして。

最下位は日本だった。理由としては、社会への溶け込みにくさと言葉の壁(日本語が堪能でない限り、現地に溶け込んで友人を作るのは難しい)のほか、キャリアの選択肢の少なさ、ワークライフバランスの悪さ、生活費の高さが挙げられた。しかし1位のメキシコより日本が優れている点として、治安が非常に良いことが挙げられた

ランキング公開は9回目で、主催しているのはドイツベースのコミュニティサイトInterNationsというところ。上で引いたForbes記事に無いネガティブ要件としては「現金しか使えないところが多い」「役所の手続きがオンラインで済まない」「女性の給料に不公平感がある」……おい、その通りじゃないか。
あとポジティブ要素に「徒歩や自転車での移動が安全」というのもあって、やっぱり原文読まないと分からないことってあるよね。

■今週のその他ニュース

最後の2本の記事を並べて読むと、「法律で同性愛を取り締まる」タンザニアと「誰と結婚するかを自分で決めることは憲法が保障する重要な基本権」とする台湾、日本が近いのはさあどっち。ってクイズにしたくなりますね。

■興味深かったので別枠

アルバイトが18時~勤務なので5分前に就業先へ着いた。おなかがすいていたのでパンを食べ終わった18:05に職場に出たら、勤務終了後、店長から注意を受けた。というコミュニケーションの齟齬を紹介した(上)編だけでもぜひ。おもしろいよ。

■対岸の話なんだろうか、とちょっと思った件

ロイターの特ダネをそのまま伝えるのもなんだかな、と思ったからなのか何なのか、時事通信は

と至ってシンプルに伝えていますが、元のロイター記事を読むと慢性的・恒常的な状態としか理解できず、それは現代自動車の問題なのかアメリカ社会の問題なのか、じゃあ日本にもおおぜい居る・不可視化されている「移民の子どもたち」が同じ境遇に置かれていることはないのか、仮に今は大丈夫だとしてこれからはどうなの。
……もうちょっと続報待つか。と棚上げしてしまった私です。

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