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技能実習の制度変更における退行/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.10.22-23.10.28)

注目されているようで肝心のところが抜けがちな「世論」ですけど、技能実習制度廃止移行または変更、って比較的よく知られている話題がありますね。今週出たニュースのなかに、けっこう大き目の「退行」と申しますか「日和った」と申しますか「既定路線」か、みたいな話があったんです。

受け入れを仲介し企業を指導する監理団体は、企業との役職員兼務を制限する方針だったが、現実的でないとの指摘を踏まえ、この要件を削除

けっこうこれ、重要なポイントで。「現実的でない」のは事実だけど、そんなこと言うひとたちは「監理団体というスキームで食ってる」側なわけで、そらそう言うやろ。なお提言の修正履歴はこんな感じ

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第13回)
資料1-3

元)監理団体と受入れ企業等の役職員の兼職に係る制限の強化
新)監理団体と受入れ機関を兼職する役職員の監理への関与制限

なるほどよく読まないと気付かない。
ただ、変更の経緯が上記資料中に記されていて、そこに詳細があります。

現行の技能実習制度における監理団体は、国際的なマッチング機能、受入れ機関に対する監理・支援、外国人に対する保護・支援等の機能を担っている一方、一部の団体において適切にその役割を果たせていないことが指摘されている。
このことから、中間報告書においては、そのような不適切な団体を厳しく適正化又は排除するため、監理団体の受入れ機関からの独立性、中立性を確保しつつ、監理・保護・支援に関する要件を厳格化するといった方向性を示した。
まず、監理団体の独立性、中立性に関しては、多くの監理団体の役員等が受入れ機関の役員等を兼ねていることについて、監督者と被監督者が同一では本来求められる機能を果たせないとして、兼職を全面的に禁止すべきとの意見があった。
もっとも、これに対しては、現状の監理団体のうち大多数が中小企業事業協同組合や各種協同組合等によって占められている実情を踏まえると、役員の兼職を禁止するのは現実性を欠き困難であるとする意見や、いわゆるペーパー団体の設立を招くだけで実効性が乏しいとする意見があった。
他方、当該規制に対する代替的な案として示された、兼職する役職員の監理への関与を制限するという案や、外部者による監視を強化するという案に対しては、特段の異論はなく、これらによって監理団体の独立性・中立性要件の強化を行うべきという方向性でおおむね一致を見た。

太字は引用者。モットモな意見っすよね

■なお、技能実習制度の廃止あるいは移行において、もっぱら世間が注目しているのは転籍を可能にすること(と、それが地方から出て行かれることを意味する悲観論)なのですが、そっちはちゃんと報道されるので、なんつーか報道する側の分かってなさ。が凄い。
そんななかでは「分かってる」ほうが信濃毎日新聞。

■対比として晒しておきたい日経の社説(2023.10.22)

実は2018年12月にも同じタイトルの社説を掲げており

5年前は「技能実習は早期に特定技能の制度と統合し、法令を順守した外国人の就労環境をつくるべきだ」と主張していたのが、今回は「本来は特定技能に統合した方がわかりやすいが、長期就労ができるよう熟練技能者に育成する道筋を示した点は評価できる」などと分かりやすくトーンダウンしております。いやん見比べないで、恥ずかしいから。

■ちなみに信毎はスマッシュヒットと呼んでいい記事も今週出していて、さすがでした。

■その他のニュース

■最後にもう1本、信濃毎日新聞の連載記事から。

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