ウマ娘周辺テキストファンの狼狽と転倒、そして逃亡
ゲームやらないアニメ見ない、競馬はやる。という属性だけどウマ娘について人が語るのを読むのは好きだ。という話を何度もしている私ですが、油断すると「キミたちは知らないだろうから教えてあげよう」ノリに傾きがちで、それはよくないと思うの。
男女を問わず私たちは齢をとると、人を教えたがる傾向がある。人の師表になろうとする...古人は自分のよく知らないことを自分は教えなかったかと、日に三たびわが身を反省すると言った
-『教師ぎらい』
人生教師になるなかれと私は思っているが、口に出しては言わない。人は年をとると教えたがる、教える資格が自動的に生じると思うらしいが、むろん誤りである。...知っていることを教えるのは、何か別の「術」である
-『その誘惑にたえかねて』
知っていることなら教えられると思うのはまちがいで、教えるのはまた別の技術である
-『無想庵物語』
以上いずれも山本夏彦というコラムニストのことばで、教えたがりオジサンになるとか、なんて恥ずかしいことでしょう。という自分の中の規範は、大学生のころ読んだ彼の文章に由来しているっぽい。
てことは競馬歴30余年、だいたい同じぐらいの期間、そう思っている計算ですか。ふーん。で?(自分で自分をアオっていくスタイル)
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良いなー。と思った挙句の私の感想が
史実のほうのシンボリルドルフ、王者なのに挑戦者として海を渡ったシナリオが本当に素晴らしく、その蹄跡がいまの日本競馬の礎になっているので、そのことへの敬意をも織り込んでいるらしいのは良いなあ、って
どどどうですか、この、そこはかとなく漂う教えたがりオジサン臭。
これも実に面白く読んだんですけど、感想がこうですよ。
「史実のスペシャルウィークを評価するなら怪我も無く安定して試合に出てすぐに勇退したという所くらいだろう」だいたい合ってんな、おい
(うるせぇ北海牧場ぶつけんぞ)
北海牧場は中国本土で競馬が解禁される、という情報とともに現地に生産拠点を設けたまではよかったんですが、その後の政情とかもあって日本競馬界の黒歴史扱いになってしまって。というあたりを指したコメントですが(メジロアルダンが中国に行ったのはこの流れ)もうこの追加コメントも含めてウザくないですか。
そうそう、この増田についているコメントが「ウマ娘のおかげで競馬に対する解像度が上がったみなさん」を可視化していて、なんでしょうね、古参競馬ファンとしてのこの喜び。
と思ったものの、つい口をついて出たのが
3歳春は苺ピンク、引退前は真っ白だったマックは出来すぎだけど「芦毛はだんだん白くなる」固定観念ある競馬ファンの、「おまえ白いな! 若いのに!」って白毛馬への視線の意味が薄れてくる未来が近いのかもなー
これですよ。
もちろん直後に反省したんですけど。
・タマモクロス、オグリキャップの活躍とともに競馬ファンになった世代なので「芦毛はG1勝てない」というその時代のちょっと前までは流通していた競馬格言をむしろ鼻でわらったものの、現実に芦毛が大レースで圧倒的に弱者だった時代は長く存在した
・白毛という遺伝子のイタズラが生んだ競走馬にG1ホースが出た「後に」競馬ファンになった人たちからすると、俺たちの白毛馬を見る視線は理解されなかろう、という遠い目
・それはそれとしてメジロマックイーンの毛色が加齢とともに変わってくるのをレース動画で見てもらいたいんです、ゆきやなぎ賞のころとか本当に苺ピンクで素敵カワイイから!
……反省した、とか言っているわりに嬉々として語ってしまう件。
人はかくも教えたがりオジサンの弊から逃れられぬものなのか的な。
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このnoteで言及されている日曜日の沈黙、実況アナウンサーの念頭にあったのがサンデーサイレンスという種牡馬の名前なことは言うまでもないですが、そんなことより「良いことばだ」って思った筆者の感性を讃えたいと思います。わしも30年前、同じことを思った。
Silence Suzuka pedigree chart from netkeiba
それで、もはや教えたがりオジサンになるべからず、という本記事冒頭をすっかり忘れたかのように、サンデーサイレンスの命名由来、あんまり知られてないと思うんだけど教えてあげるよ! って言い出すオジサンこと私。
父Halo(太陽や月に薄い雲がかかった際、その周囲に光の輪が現れる現象。ある種の神々しさと共に語られがち)
母Wishing Well(願いごとが叶う泉。これも神聖なイメージがある)
からの連想で「日曜日の教会で祈りをささげている時間帯の静寂」を意味するSunday Silenceと名付けられた。
この認識がおそらく一般的なのですが、とある書籍によると、以下のエピソードがあった、と。
フィル・ストローってケンタッキー大学の卒業生が、あるときふと思いたってケンタッキー州の有力生産牧場に競走馬の名前候補リストなるものを送りつけはじめた。理由? 自分が命名した馬が、地元の大レース、ケンタッキー・ダービーに出走できたりしたら素敵やん?(=迷惑な話)
送りつけられた生産者のなかにストーン・ファーム、つまりサンデーサイレンスの生まれ故郷も含まれていて、牧場オーナーのアーサー・ハンコック3世がそろそろ仔馬に名前をつけようと思ったタイミングで、その名前候補リストのことを思い出した。
あと、そういえば俺、"Sunday Morning Coming Down"って歌が好きなんだった。日曜日の孤独を歌う、ずいぶんメランコリックな詞を持つ曲なんだけどね。
以上を持ちましてサンデーサイレンスって名前に。
……って20年前ぐらいにアメリカ出張の際、叩き売りされていた本を買ったら書いてあったんですけど、同じ本にクーヨンガって馬の名前の由来を「日本のゴルフコースから」って書いてあって(日本人馬主がオーストラリアで所有していたゴルフコースの名前から、が正)まあ信憑性もぼちぼちやな。
と思うものの、現段階ではウィキペディアenにも載ってない情報なんですよ(jpには微妙に似た話が載ってた……)、どうです教えたがりオジサンも捨てたものじゃないでしょ? じゃ、オジサンもう帰るね!
サムネイル写真はこちらからの借用です。
https://twitter.com/kinchan5656/status/1373101979539435524