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週刊外国人就労関連ニュースまとめ(20.6.14-20.6.20)

個人的に今週いちばん読み応えがあったのはAnonymous Diaryこと増田に寄せられていた、次の一文でした。

技能実習制度そのものが抱える問題点は、現場担当者レベルで解決の糸口が見つかるようなものではない-と身も蓋もないことを思っているのは、仕事で「良い」監理団体とお付き合いある一方、「悪い」ひとたちの悪い話を聞く機会がこの5年で減った実感は無いから。なんですが。
送り出し国の官公庁を含むエコシステムを、正義の観点から壊すべきって言ってもね、世の中「べき論」では動いてないですからね。
だから、新しく出来た特定技能制度を可及的速やかに、良い制度にするための活動を、公私両面において真面目に取り組む。が個人的な解で、「奴隷制度は即刻廃止せよ」ってコメントするだけで事足れりみたいな顔をする人に俺はどう向き合うべきか。というような、おなじみの感想が想起されたのがたぶん私ひとりではなかったんだと思えたあたり、良い増田だったな。って。

■最近の技能実習がらみニュースを挙げると、こんな感じ

“実習生に技能を伝えながら貴重な労働力としてきた事業者からは業務に影響が出るとして、政府に入国可能時期の見通しを示すよう求める声が上がる”
はーん(鼻ほじ)

“実習生を支援した札幌市の札幌中小労連・地域労働組合...はこれまで4件の実習生の解雇事案を解決してきた。そこから垣間見えるのは「どうせ外国人」「どうせ分からない」という使用者側の差別意識だという”

“なぜ、すぐに相談しなかったのか。その理由について、この監理団体に勤務経験がある関係者は、指導役の女性と実習生を送り出したベトナムの業者の運営者が「血縁関係にあったからだ」と説明する”(あるある)

技能実習の実態は週刊プレイボーイのこの記事にある感じですが(前編もぜひ)、まったくコンセプトが異なる「特定技能」がそのネーミングのせいで「スペシャルな技能実習」みたいに受け止められていて……って話は先週の冒頭で長々と書きました

■技能実習だけが脚光をあびる必要はないわけで、たとえば留学ビザで来日している「労働力」なひとたちが、最近どうしているか。とか考えたことはありますか?

筆者は2020年5月26日から6月4日にかけ、技能実習生と留学生を中心とする在日ベトナム人を対象に、インターネットを使ったアンケート調査を実施した。その結果、在日ベトナム人77人(うち女性42人、男性35人)から回答を得た

ってこの連載の調査母数がどう見えるかわかりませんが(多い、と言いたい)たとえば「新 移民時代」という連載を長く続けている西日本新聞。

また、朝日新聞のwithnewsには「となりの外国人」という連載があります。

日本語学校を取材する・その生徒の声を聞く/技能実習の監理団体に話を聞く・その担当者の声を聞く……というような記事フォーマット。
固有の名前を持つ、ひとりの人間の声を取り次ぐことで抽象的な「外国人」ではないナマの感情が伝わってくる、どちらも良い連載だと思っているんですけど、組織をあげた体制で、数名レベルへの取材をひとつの記事にしているわけです。
本項冒頭で挙げた巣内尚子の「77人から回答を得た」が、個人の地道な活動の積み重ねによってはじめて成立するものであること。そこから生まれる洞察、それらにあらためて敬意を表したい、と思うのです。

■その他のニュースあれこれ

■国内ニュースばかりを見ていると忘れがちですが、日本だけが「外国人頼み」なわけではないので、グローバルな記事もふたつ。

■おまけ

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a photo from IMDb 
映画『黒い司法 0%からの奇跡』(2019)見た感想、Filmarksってサイトの自分メモに次のようなコメント残したんですけどね。

扱われているテーマを考えるとずいぶん静かな作品だなあ、という感想が最初。もっとエゲツナいエピソードを押し出して劇画調に描くこともできたところをそうしなかった選択が、悪目立ちもしないかわりに賞レースでことさら注目されもしない、という微妙なポジションに作品をカテゴライズすることになったわけですが……こういう作品が裾野にあるから、描くのが難しいテーマという山の標高が高くなる、ってことですかね。みたいな納得の仕方をしました。
ロブ・モーガンとティム・ブレイク・ネルソンは良い役もらってたけどブリー・ラーソンの無駄遣い、ってUSのどこかの映画評に書いてあったのにはウケた。そんなこと言い出したらマイケル・B・ジョーダンにあてがうにはもうワンランク上の脚本であるべきだし。みたいなことも思いました。

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another photo from another work, IMDb
それでね、特に深く考えもせず、続けて見たドキュメンタリー『13th 憲法修正第13条』(2016)の感想がこっち。

『黒い司法 0%からの奇跡』(2019)続きで見たら、あっちでマイケル・B・ジョーダンが演じていたひとがこっちでは本人が出てきて(上2枚の写真がそれ)説得力! ってなったので、たぶんこの順番に見るのがいいやつ。
しかし何がオソロシイって、自分が生きている世界でいま起きている「とはいえ」他人事だと思ってる子はいねぇが。って点だとナマハゲ的には思うわけです。
たとえば労働力不足に悩む本邦で、表だっては移民とは呼ばないことになっている人たちをわれわれがどう扱っているか、それは制度的にも心情的にもこの作品で描かれた、かつての「奴隷制度」とどう違うんですか。とか。
マクリーン判決のきわどさは法の執行者の運用に委任するにはリスキーすぎませんか、って話は合衆国憲法修正第13条の話と通底しませんか、とか。
……おい誰がナマハゲやねん(遅いノリツッコミ)

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