技能実習“廃止”報道/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.4.9-23.4.15)
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第5回)」の開催は4月10日(月)10:00-12:00と記録されていますが、同日の報道は朝日新聞が11:45、毎日新聞11:47、日経新聞11:55と各紙とも素早く、それって報道が呼ぶリアクションに希望する形が官に在るから。じゃないですか。
どこもかしこもてーへんだてーへんだ、って勇んで駆け込んできて大きな声で技能実習の廃止を触れ回る、おかげさまでみんな「廃止か!」って浮き足立ちましたが、その裏で国民に目を向けてもらいたくなかったことがあるんじゃ。というところまで考えても、まあよさそう。そう思いません?
■私がポイントと考えるのは
国の関与や外国人技能実習機構の在り方(存続の可否を含む。)
という一節。あまりといえばあまりな「議論」なので、長くなりますが該当箇所を引きます。
ここで外国人技能実習機構OTITが-技能実習生最後の駆け込み寺としての役割を与えられている国の機関が-何をしてきたか、振り返ってみます?
(1) 実習生ではなく企業に寄り添って上からモノを言って訴えられた回
(2) 実習生の扱いがよくない日本の受入側が35%にも及ぶのに、それが「多いか少ないかは判断できない」と答える回
(3) 自分たちが監督する監理団体のダメダメを知ってなお「(監理団体に)責任を持ってもらう」以外のことを言わない回
(4) おまえたちの仕事をしろ。と言われても「マンパワー不足で調査を大々的にやるのは難しい」と答えるだけで済んじゃう回
(5) 典型事例を最後にご紹介
つまりね、何が言いたいかといえば、技能実習制度の諸問題は「技能実習の適正な実施のための指導・監査や技能実習生の保護について役割を果たす」とされている監理団体が仕事しないところに起因するんですけど、そうしたダメ監理団体を見つけ次第、指導する義務は所管である外国人技能実習機構OTITにあるんですよ。
上記(1)~(5)に共通しているのは、そのOTITが仕事してないからこんなふうになっちまっている。今に始まったことでもなく。
にもかかわらず、今般の技能実習「廃止」に際し、OTITの解体どころか存続が前提になってるのは何でだ、と。そこが変わらないかぎり、制度の名前が変わっても何も変わらないよ。
そもそも法務省と厚労省の天下り先でもあるOTITが仕事してないから。などと本当のことが広く知られてしまうと、また別の天下り先を確保しなければならないわけで、JICA理事長(=有識者会議の座長)がどれだけ人権の話をしようとも、羊頭狗肉の誹りを免れない。そう思うわけです。
……って私ひとりが言ってるわけでもないし、まるで的外れな感想ってわけでもないのでは。
あと、地方の声として目を通しておきたいと思ったのは鹿児島の南日本新聞の記事ね。
■今週のその他ニュース
というか、ドサクサに紛れ入管法改正案が押し通されつつある件、もっと大きな声にならないとマズイです。
■サムネイルは韓国映画『キングメーカー 大統領を作った男』(2022)から。ソル・ギョング(写真右)が金大中を、イ・ソンギュンがその参謀役だった厳昌録を、それぞれ楽しそうに演じていて脂ののった役者の全力傾倒が見ごたえあるんですけど、選挙戦における劣勢をどう覆すか、メディアを使った情報戦の嚆矢として、たとえば技能実習制度「廃止」と一斉に報じられたとき、ん? って一拍おいて考えたくなる、そういう作品でもあります。
昨日の今日で紹介するのが憚られるシーンもあるけどなあ。