見出し画像

ベトナム労働・傷病軍人・社会事業大臣の発言について/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(22.9.18-22.9.24)

今週はこれといって大きなニュースもなかったので、共同通信グループの見出し“円安で在日労働者3割減収、労働相が懸念”、これがひとたびPV稼ぎに走ると某誌某氏によるアオリ記事“「技能実習生の税金は免除して」日本がベトナムに足下を見られてしまう本当の理由”、こうなる。
という残念な話でもしますか。どっちも元ネタはベトナム語の以下の記事。

原文と日本語記事を並べたとき、ん? となるのはこの一節。

労働省の発表によれば、ズン氏(引用者注:ベトナムの現職大臣)は中谷氏(再び引用者注:会談相手、かつて首相補佐官だった人物)に対し、労働者の海外派遣について改善に取り組んでおり、特に派遣手数料についての法令違反は厳しく取り締まっていると伝え、日本側でも技能実習や特定技能制度を改善するよう促した。
また、技能実習生の受け入れ対象職種を、外食や運転手、都市鉄道・高速鉄道、排水処理などにも広げるよう要請した。中谷氏はズン氏の要望について、検討する旨を伝えたという。

NNA ASIA

ズン氏はまた、日本がインターンや熟練労働者を受け入れるプログラムを改善し、介護看護師を受け入れるプログラムを再評価することを提案した。
また、日本側は、レストランサービス、ホテル、運転手、サービス、都市鉄道や高速列車の整備、建設工事、地下工事、排水処理、都市環境などの分野でベトナム人インターン受入れの職種拡大を検討している。これらは、ベトナム人労働者が基本的な訓練を受ければ、すぐに適応し、スキルを向上させることができる産業です。
提案を聞いた中谷元氏は、上記の実施に向けた取り組みを認識し、促進すると述べた。

VN Expressをgoogle翻訳にかけた

ええと、「日本側は、レストランサービス、ホテル、運転手、サービス、都市鉄道や高速列車の整備、建設工事、地下工事、排水処理、都市環境などの分野でベトナム人インターン受入れの職種拡大を検討している」?
そもそも技能実習でも特定技能でも対象職種でない「運転手」が入っていたり、既に対象内の「建設工事」が入っていたり、あんた適当に書いたわね? それとも翻訳精度の問題? ってなるので、媒体VN Express自らが手掛けている英語版記事を確認すると

Dung also called for improving internship and training programs, reevaluating programs to employ caregivers for elderly people and consider expanding the list of jobs Vietnamese could do, such as in food and beverage, hospitality, driving, and railway maintenance.
Nakatani acknowledged Dung's requests and pledged to help realize those requests.

英語版VN Express

うん、あくまで「職種の拡大」はベトナム側の要請らしいな、と安心するのでした。
と、ここまでのプロセスを踏まえて思ったこと2点。

■ベトナム人技能実習生が住民税・所得税を負担している件
これ、租税条約でそう決めたからそうなっている。という話なので、改善したければ二国間交渉に持ち込むしかないんですよ。
サムネイルでもキャプチャ画像貼っておきましたが、技能実習生が適用される制度においては

外国人技能実習機構の当該PDF

現に中国からの技能実習生は免除されていて、ベトナムの対日本交渉力が上がったいまなら、正規ルートを通じた申し入れが認められる可能性も十分ある、そう思いますね。

■ひとびとの受け止め
ベトナム語記事についている人気コメントもなかなか興味深かった

また、ベトナム人労働者の所得税を免除/削減することも VN にお願いします。

本当に tts は日本の安い労働力です。日本円の切り下げで、他に誰が日本に行く? 給料が上がらず、食費、勉強費、退職金を完済するのに2年近くかかる

そうです、ベトナム人はこの 2 つの税金を支払わなければならないというのはばかげています..

誰だって払わずに済むなら払いたくない、それが税金ってものだと思うので、繰り返しますけど某誌某氏記事“「技能実習生の税金は免除して」日本がベトナムに足下を見られてしまう本当の理由”、なにより「足元を見られる」という言い方で変な自尊心のくすぐり方をする姿勢、リンク貼りたくないですねー。

■なお今週の政府周辺動向

これ、首相が法相に無断で言ったので

あれはどういうこと? たぶんだけど……みたいな、記者と大臣の会話が記録されることに。

■そういえばこの法務大臣、わりとうっかり言う癖あるようで

このNHK報道ではニュアンス落ちていますが、先週の閣議後記者会見では入管が強制送還しようとしても直前に難民申請されたりすると、そこまでの手間が無駄になって大変だ。
だからもっと国としてマニュアルを整備して、入管の個別判断の手間を省けるようにすべきと考えている、みたいなことを言っていて(下記)

もちろん入管最大のミッションが「帰れって言ってるのに帰らない奴らを追い出すこと」という伝統的な規範にのっとった、いいかげんにしろ。としか思えないような内容なことは酷いのですが、それはそれとして

ただ、やはり感じましたのは、医療の関係にしても収容の関係にしても、今回改善を図りましたが、しっかりとマニュアル化をして、決まりとして「こういう形がより良いのではないか。」ということを、法律の段階でも、あるいは内部規則の段階でもしっかり提示してあげるということが、現場だけの判断で「あなた判断してくれよ。」ということになりますと現場の負担になりますので、二つを並列で申し上げたわけです。

これね、入管庁にしてみたら、は? 俺たちの権限を狭める気? って反応になることは必至で、歴代法務大臣がさわらないようにしてきた箱に手をかけているんですよ。何この面白い人材。
そういう意味で、前任者と違った関心が当代の法務大臣に湧いております。

■今週のその他ニュース

いいなと思ったら応援しよう!