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法相閣議後記者会見テキスト愛読者が仰天した回/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(22.1.23-22.1.29)
先週冒頭「ねえみんなもう飽きた? 早すぎない?」とイライラしていた私ですが、俺たちはもっとちゃんと考えないとダメトピックの報道が今週も続いたのは朗報でした。
三つ目、入管庁が漠然とした指示を関係機関に出しました、ってニュースは実はそのいまさら感にこそニュースバリューがあるんですけど。
さらに言うと、そのいまさら感に触れないジャーナリズムの姿勢が現在の日本社会のテイタラクを形成した一要素なのは否めず、何重構造だか分からないけど、本当にこの件は真面目に考えるべき。
という流れで、1月25日の法相閣議後記者会見は評価したい。
【記者】先ほど御発言のあった岡山の実習生の事案について通常、個別の事案については発表されていませんが今回あえて発表した理由を教えてください。
【大臣】個々の事案についてコメントは通常行いませんが今回の場合については深刻な内容、その度合いから看過できないため対応の方針についてお話をさせていただきました。
日本でいちばんの「法相閣議後記者会見」書き起こしテキスト愛読者を自負していますが、そもそも法務大臣が「今朝の閣議において法務省案件はありませんでした」に続いて
1) 入管庁職員に向けた「使命と心得」策定
2) 外国人技能実習生が告発した事案への対応
を自ら話し始めた今回のパターン、ほんとうに異例なんです。
記者からの質問を受け、しぶしぶ答える。なんなら途中でキレ始める。
という前任大臣しぐさに慣れてしまったからこその驚きで、評価のハードル下げ過ぎの誹りを免れないものの、だとしても2年以上毎週読んでいる連載の新展開よ。アガるわー。
まあね、肝心の「使命と心得」の全文(ここ)は正直たいしたことを言ってないんですけどね。
だけど、こういうムーブ、本当になかったから。めったにほめられることのないお役所だからこそ、良い動きはホメて伸ばそう。
■ニュースで入管庁の名前があがるとき、少なくともこの数年ずっとこんな感じですからね。
「私は心理学の専門家ではありませんが、人はそれまで粗末に扱っていた人が『本当にこの人、危ない、ヤバい状態かも』と思った途端、急に優しく声を掛けたりするような心理になることがあるのでは、と。職員の状態はまさにそれでした。ウィシュマさんが一切声を発せられなくなって、今死んでもおかしくない状態になった途端に『頑張ろうね』『大丈夫だよ』『元気出していこう』って。今さら何でそんな声を掛けてるの、という思いで私はビデオを見ました」
■一方そのとき。とナレーションを挟みたくなるニュース
コロナだから。ってなあなあにしてきたけど、おまえたちを生かすも殺すも俺たち次第。って強い意志が感じられ、むしろとっても入管らしいニュース。
東京出入国在留管理局・梅原修治首席入国警備官:「(不法滞在者のほとんどが)当初からお金を稼ぐ目的で来日している。(受け皿となる)雇用先も不法就労を助長する行為の1つでもあるので対策を行う必要がある」
入国時から怪しいんです、って言ってますけど、だったらきっちり上陸拒否すればいいのでは。
書類上の要件は揃ってるから断れない、ってそれ自宅に招き入れたあとに問題が起きて「だから入れたくなかったんだよー」って言い分にしか聞こえず、すみませんそれ、仕事してるって言える?
なお、入管のこの姿勢もさることながら、為政者が望むトーンで報道するのみならず、得々と「独自」ラベルを付けてしまう報道機関のマインドのほうが、私はおそろしいです。
■おまえは何が言いたいんだ、ってたとえば下記をまずはご覧ください
■見た? じゃあ今度はこっちを。
上で挙げた日本語記事群「外国人が来ない」、英語記事「日本が入れてくれない」。
これ、同じ時代の、同じ国のことですからね。
せめて後者の視点を持ったうえで前者の記事掲載に至るぐらいの思慮は、われわれの社会に有っていいじゃないですか。
■毎週同じ結論ですけど、他人事じゃないと思うんです。入管を入管たらしめているのはわれわれだし、ひとに優しくない社会を築き上げた挙句、社会活動に支障が出る助けて。って叫んで国際社会から見向きもされない未来を着実に引き寄せてるのもわれわれなんですよ。やべえんすよ。
コロナ後の経済回復が始まれば、後からきたアジア人若者に職を奪われ、今年の後半から在日ブラジル人が大量に失業し、母国に戻ってくる可能性がある。
これは自然現象ではなく、日本政府がここ数年かけて周到に準備してきた結果だ。日本は再び日系人を切り捨てようとしている。「年をとった日系人はもう用なしだからブラジルへ帰れ」と促す状況を作ろうとしている。これは「日系人版の棄民」ではないか。
ブラジルの日系社会視点の記事なので、日系人がアジアからの出稼ぎに取って代わられる危機感についての言及ですが、政府がそういう仕組みにしている、という指摘はおそらく正しい。
「弱い人がさらに弱い人を叩くような、一部の人のバッシングに胸が痛みます。差別されたり傷つけられているのは、もちろん外国人だけではないですから。
わたしは、小学生のときにひどいいじめを受けていた時期があって、死にたいとすら思いました。10歳のころです。人を人として扱わないようなことには、自分の身がよじれるような痛みを感じます。
国籍を問わず性別を問わず、誰もが同じ人間だという当たり前のこと。『人間扱いされているかどうか』が、なにより大切という意識がずっとあります。
今、外国の人にしていることは、もしかしたらいつか、自分の身に起きることかもしれない。そう考えたら、今のこの社会、怖くないですか」
福井県内は繊維や機械などの工場が集積しており、多くの技能実習生を呼び込んできた。外国人に占めるベトナム人の割合は全国平均では15%ほどだが、福井県内に限れば20%ほどと高い。
一方、ある福井県内の監理団体の担当者は「ベトナム人技能実習生の数はピークアウトしている」と明かす。コロナ禍で日本への新規入国がほぼ止まるなかで、賃金の高い国に実習先を移し始めているという。都道府県間の移動もあり「最低賃金の高い自治体に移っている。このままでは福井県から流出することもあり得る」という。
最後の日経新聞記事、「JR福井駅前にベトナムの食材店や料理店が相次いで開店している。技能実習生として福井に住むベトナム人が増える一方、現地の食材や料理が楽しめる店は少なかった。それを好機と捉え、新たなビジネスにつなげようと若者たちが起業しはじめた」って呑気な導入なんですけど、共存の道を探らなければダメだろって肌で感じることができるのは若い世代。って話として私は読みました。
まあね、年齢の問題じゃないんだけどね。