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移民国家としての日本

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マガジン名称を「海外事業を編集する」から変更。 ヘッダ写真はダナン@ベトナム
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#ウィシュマ・サンダマリ

記録する/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.9.24-23.9.30)

慣れっておそろしいな。と思ったのは たとえばこのニュース、本来もっと長々とコメントしたくなるトピックだったと思うんです。 初報から2年超、事件当時から当代まで法務大臣が計5人。 かろうじてひとりは真摯な対応を目指す姿勢があった、と願望交じりに考えていますが、残る4名は「個人としてお悔やみを」述べたり、在任中23回の閣議後記者会見で一度もウィシュマさんの名前を出すことなく更迭されたり、あとは先代のコレな。 法を司る機関のトップのはずが、所属政党の統一した方角にしか目を向け

2021年3月4日15:30-16:30名古屋市丁病院(総合病院精神科)戊医師の診断について/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.5.7-23.5.13)

みんなたちがあやふやな情報をもとにケンケンゴウゴウなのは見飽きているのですが、整理しておきますね。ああ、ウィシュマさんが支援者に淡い期待を抱かされたとかなんとかいう件です。 ■中間報告書(21.4.9) 「Aが訴える症状の出現時期が、Aが帰国希望から日本への在留希望に転じた時期と合うことから、例えば、病気になることにより仮放免をしてもらいたいとの思いが作用するなど心因性の生涯を生じさせている可能性があるとして」 ■医師診療録(21.3.4/別紙一覧18) ■別添【1月

2年前、廃案になったときと何が違ったか/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.4.23-23.4.29)

定点観測の価値はこういうときにこそ発揮されるので、2年前の報道がどんな感じだったか、当欄バックナンバーで振り返ってみましょう。 ちなみに1年前。 ■そこで問う、2年前は廃案になったものがなぜ、今年、衆院法委を通過してしまったのか 問う、と書いた直後に恐縮ですが、一応の解は用意してあります。 ・ウィシュマさんが亡くなった3月に潮目が変わった ・というか2月時点では世間的にはほとんど無風だったので、ひとりの女性が社会に与えたインパクト、大きかったんですね ・COVID-19

5hrs of 295/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.2.12-23.2.18)

約2年前の初報以来、ほとんど毎週のように故人の固有名詞が報じられてきたスリランカ女性の、文字通り断末魔を撮影した動画の一部が公開されることになりました。 事故ではなく事件と考えているし、加害者は国家組織だと思っている私ですが(=自己紹介)、その立場であっても「映像を公開しろ」ムーブメントには賛同できず、何故ってアンタ、ひとが亡くなるシーンを見る行為のおぞましさを忘れすぎでは。その正義感あふれるアジテーション背後に興味本位要素がないか、自分の胸に聞いたことあります? ……ぐら

さすがですね(ホメてない)/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(22.5.22-22.5.28)

2021年3月6日に亡くなったウィシュマ・サンダマリさんに言及すること計48回の当欄ですが、 とニュースを紹介したのがその1回目で(2021/3/14)、今でも思い出せますが「入管がヒドいのは言を俟たないとはいえ」「アナーキストじゃないんだから彼らを“倒すべき敵”認定したってモノゴト良いほうには向かわない」って感想を持ったんです、私。 あれから60週間。 当然想起したのは「カネ払うからおしまいね」事例で、え、もしかして、ですけど全面的にアナーキストが求められてるの? ■

2020年4月の某炎上事件を思い出した話ほか/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.8.29-21.9.4)

珍しく今週はトップニュースとしておめでたい話を取り上げられます。 信濃毎日新聞の連載「五色のメビウス」は個人的にずっと推していたので、選考委員もなかなかお目が高い&ただの読者の私も鼻が高い。 選考委員(5人)は「『命の分岐点に立つ』外国人労働者の迫真ルポ、送り出し国の機関から日本の入管、雇用先、自治体など関連組織への徹底取材。半年にも及ぶ連載は、軽視されがちな外国人労働者問題の深刻さを、真剣に考えていくための新たな視座を提供した」と評価した。 うむ。半年前に全力でホメて

ウィシュマさん報道で欠けているメッセージは何か/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.8.15-21.8.21)

先週に続きウィシュマさん関連の話題が多く記事化されましたが、気になっているのは、ウィシュマ・サンダマリという個人の話、彼女へ適切な対応をしなかった入管職員ABCD……(以下略)という個人の話、上川陽子法務大臣という個人の話、ぜんぶ「個」に焦点あたってません? そうじゃなくて「労働力を求めるわれわれ、それに応じて来日する外国籍のひとたち」「国家の治安のため人流を管理監督する部門」「人権を含めた高度次元から法の在り方を統べるべき省庁トップ」っていう、誰がじゃない、システムの問題と

ウィシュマさんの話、ウィシュマさん以外の話/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.8.8-21.8.14)

今週の報道がウィシュマさんの件で持ち切りだったのはご存知の通りです。先週「報告書は来週出すから」「動画も出します、編集バージョンだけど」と言っていて 21.8.3 出入国在留管理庁は2日、7月中に第三者による最終報告をまとめることができなかったとし、「申し訳ない」と陳謝した。野党の「難民問題に関する議員懇談会」で、入管庁の担当者が明らかにした。(朝日新聞) 21.8.6 来週にも取りまとめる最終報告の公表後に、施設内での女性の様子などを映した映像を遺族に限り開示する方針を固

ホームレス差別発言に上書かれてしまった非正規滞在外国人の死

差別発言者が自説を開陳できるのは、同じ思いを抱くひとが少なからず居る、と信じているからですよね。 「ホームレスなんて、あれは結局働きたくない、サボってる連中だろ? 取材して意味あるのか?」 某ライターがよく耳にする発言として今朝、目に入ってきたやつ。 わー、言いそう。誰がとかじゃなくて、そういうこと言いそうなひとが。 その伝でいくと、スリランカからやって来て、正規滞在の枠を超え、日本に居たせいで悲劇的な最期を迎えることになった享年33の女性、彼女の死に向けられる声。

名古屋出入国在留管理局被収容者(30歳代、女性、スリランカ国籍)「A氏」のついた嘘は死に値するものだったのか

入管庁が公表した報道資料「名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告について」を読んで思ったのは、要素が複数あるから初見では整理しきれないよなあ、ということでした。 ぱっと思いつくだけでも「支援者との物語」「病の記録」「DV被害者としての扱い」「組織としての入管の致命的な欠陥」など、ジャーナリズムが頑張って解説すべき要素は盛りだくさん。 一例として、支援団体が途中でもう入管には資料提供しません。ってなった経緯。 調査チームはS1氏(引用者注:日本人の支援者の報告

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牛久の話とか/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.5.23-21.5.29)

今週も入管関連ニュースが多かったですね。飽きた? ねえ、みんなもう飽きてる? ウィシュマさんの日本の生活を辿っていくと、付き合っていた男性からの暴力が浮かび上がっている。彼女はDVの被害者であったという事実をスルーしている記事は多い。少しだけ触れているニュースもあるが、多くが入管内での彼女に対する非情な対応の方にフォーカスが絞られている。亡くなった原因は入管内にあるから当然かもしれないが、どの報道もDV被害者を守るという視点が全く抜け落ちている。 被害者の滞在期間が過ぎてし

入管法改正案見送り/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.5.16-21.5.22)

ふははは、俺たちの勝利だ! 的なことを言うキャラじゃないから言わないわけではなく、俺はしつこく覚えてるんだよ、閣議決定されたタイミングの大本営発表のような記事を。 2021/2/19 毎日新聞 この時点で入管法改正案がどういう内容になるかは当然知られていました。産経や読売はともかく、朝日や毎日の初報は当然批判的スタンスになると思っていたのでものすごく驚いて、あやうく悪態つきそうになるところを押し殺した俺の良識をご覧ください。あ、ツイート中に誤字あるな……それだけ動揺してた