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OpenPoseでファンクショナルリーチ(FRT)の動作を解析してみた 【vol.2 解析編】

OpenPoseという骨格推定のAIを使ってファンクショナルリーチ(FRT)の動作の人体骨格を推定し、そのデータを弊社のデータ統合解析プログラムKineAnalyzerに取り込んで解析してみました。

KineAnalyzerに取り込む手順などの技術的な内容は「vol.1取込み編」を参照してください。

(文 : 開発担当者 A)

■ファンクショナルリーチテスト(FRT)とは

ファンクショナルリーチテストはバランス能力を評価する指標として使われているもので、最近では高齢者の転倒リスクを調べる“簡易バランステスト”として、介護施設や高齢者施設でも広く用いられているようです。
計測方法は、立位で腕を伸ばした状態から、膝を曲げずに高さを維持したままできる限り前方へ腕を伸ばしていきます。
その距離(当初からの差異)を測ります。

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参考文献によると、基準値は下表のようになっています。

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参考文献:Functional reach: a new clinical measure of balance. Duncan et.al.

■結果

社員2名の結果は下表のとおりでした。

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残念ながら2人とも基準値よりも低い結果になってしまいました。
ちょっと頑張りが足りなかったようですね。

ただ、この結果だけでは面白くありませんね。ホワイトボードにメジャーを貼っておけば、わざわざ動画を撮影してまで計測する必要が無いからです。

そこで、KineAnalyzerを使ってもう少し細かく解析することにします。

■KineAnalyzerでの解析

下記の参考文献によると、ファンクショナルリーチには、異なる3つの戦略があるそうです。

【A】:足関節を使って腕を伸ばそうとする戦略
【B】:おしりを引いて股関節を使うことで腕を伸ばそうとする戦略
【C】:踵を上げることで腕を伸ばそうとする戦略

FRT戦略

参考文献:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/16/4/16_4_159/_pdf/-char/ja

今回計測した社員が、これらのどの戦略で腕を伸ばしているかを確認してみましょう。

まずは、手首のy座標と体幹の傾きを見てみましょう。
下のグラフは、
・手首のy座標(値が大きいほど腕を伸ばしている)
・体幹の傾き(値が大きいほど前傾している)
で、青色が社員1で、赤色が社員2です。

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手首y座標のグラフの始めが腕を伸ばし始めた時点で、ピークが伸ばし終わりの時点になります。
体幹のグラフから、2人とも同じくらい前傾させながら伸ばしていることが分かります。
これらのグラフからは2人の違いは読み取れませんね。

そこで、次は、
・腰のy座標(値が小さいほどおしりを引いている)
・踵のz座標(高さ)(値が大きいほど踵をあげている)
のグラフを見てみましょう。

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腰のy座標のグラフを見ると、社員1は腕を伸ばし始めると同時に値が急に下がるので、ぐっと腰を引きながら腕を伸ばしていることが分かります。
一方で、踵のz座標を見ると、社員2は腰をあまり引かずに、踵を6cm程高く上げながら腕を伸ばしていることが読み取れます。
同じ腕を伸ばすという動作でも、2人の戦略が全く違いますね。

以上より、
社員1は、
【B】のおしりを引いて股関節を使うことで腕を伸ばそうとする戦略
社員2は、
【C】の踵を上げることで腕を伸ばそうとする戦略
であることが分かりました。

■まとめ

いかがでしょうか。
メジャーを使って計測する場合に比べると、細かい体の動きまで解析できたと思います。
このような簡単な動作解析であれば、スマホの動画ひとつで簡単にできることを分かっていただけたと思います。

今回はOpenPoseのデータを取り込む部分を紹介しましたが、Deeplabcutなどの他のAIの結果データもKineAnalyzerに取り込むことができます。

興味のある方は、弊社ホームページの窓口までお問い合わせください。

■今回計測に使ったシステム

データ統合解析プログラム KineAnalyzer
https://www.kicnet.co.jp/solutions/biosignal/humans/biosignal/kineanalyzer/

※ 製品・ブログ等に関するお問い合わせは、上記リンクページ下部の「お問い合わせ」よりご連絡ください。


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