人形町「レモン」 ーママが“いいとも”をガン見していたあの頃ー
これは家か?
いや 店だ。
そう自問自答することも少なくない。
開いてない…?
いや 開いてる。
この二つ目の回答が出た時には
嬉しさのあまり勢いよく喫茶店のドアを開ける。
見事に住宅地に溶け込んでいる 素敵な喫茶店に出会った。深い茶色の木の枠に、薄黄色のカーテンが全ての窓を覆っている。すごく和の雰囲気だが看板にはコーヒー&ハンバーガー。ドクターペッパーの立て看板…飲めるのだろうか。
ばっくり割れているガラス窓が気になりつつ重たすぎる戸を開け入店すると、赤エプロンをつけた飾りっ気のないショートヘアの若い店員さんが「いいとも」に夢中だった。
この日は2012年。レモンの改装前だ。
あのいいともが終わる日が来るなんて、この時は思ってもみなかった。月日が経つのを感じる。
Uの字のカウンターテーブルに心踊る。
3名で入店したため、客の人数を察知したのだろう、奥からボスが登場した。シルバーヘアをきちんと後ろに束ねて、キリっとしたお顔立ち。
ご挨拶程度にボスママに、なぜレモンなのかを尋ねると
「適当」
「オレンジかレモンかっていったらレモンかなぁ~って思って」
なんて 軽いタッチなんだ。
「レモンサラダ」が気になったので今度は若い店員さんに尋ねると一言
「普通ですよ」
あなたの「普通」が みんなの「普通」と一緒とは限らないですよ という言葉をぐっと飲み込んだ。
割れた窓を覆うカーテンはかつて真っ白だったに違いない。
2012年6月20日から工事に入ると表の張り紙にあった。この日は改装前日だ。
冷コーなどを出し終えると、ボスママも一緒になって いいともをガン見しだした。
ちなみに 11時までにレモンに行くと お得にコーヒーが飲めるそうだ。改装した今もそうだといいな。