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☆お客様の零れ話1 市さん 中編

もー。お早うございます!って言うつもりだったのに~~お昼過ぎちゃった!!!

何か今日は朝がパニックだった~!

Ofenさんからひとっつもパンが来ないとか、死ぬかと思ったー!

いや、ちゃんと来ましたし、無事でしたけど!

皆さんもご飯食べました?朝も昼も。

これからはぐんぐん暑くなりますからね。ご飯はしっかり食べないと持ちませんよ。

そして一息つく時は。Bar di Kotokotoはいかがですか?

美味しい珈琲と一緒にお待ちしておりますv

さて。

大丈夫、だーいじょうぶ。忘れてませんってば。昨日のお話の続きです。

私や琴子さんが本当に欲しい物を、いつも携えて現れる救世主こと、行商のおばちゃんトップ、市さんの話。

いや、トップと言うか、行商の神?

何を頼んでも「持っとるよ」で、市さんが「それはない」と言うの、聞いた事が有りません。

本当にその時一番欲しい物を、持って来てくれる行商の神様なんです。

その市さんの、誰に言っても「うっそ」「話盛るなよ」と言われる「まさかこれは持ってないよね」ベストのお話。

          * * * * *

それは、うーん、もう二、三年前になりますか?ちょうど今時分の事でした。

暑い夏の日だったなー。我が家のメインのブレンドもアメリカンも、アイスにトップの座を譲る日々。

あ、今年はただのアイス以外にも、コールドブリューもありますので是非。

お昼過ぎに市さんが来てくれたんですよ。

沢山の「小さいの」を連れて。

ん?何それ?

いやー、そう言われても困るんですけど、「小さいの」。それ以外に言い様がないしー。

仕方ないと思って、無理やりにでも納得しておいて下さーい。

「小さいの」

でね。

「小さいの」は、大体いつも何人か市さんと一緒にいて、時々は泣いてたり、怒ってたりして、市さんと同じように何かをしょってたり、お互いをしょってたりして歩いて来るんです。

で、琴子さんは、「小さいの」の為にお盆に小さいコップを並べて、砕いた氷とアイス珈琲を入れて、シロップもミルクも入れて上げる。

え?「小さいのは」機嫌よくそれを飲んで、くつろいでますよ。

特に何もしません。市さんも特に構わない。

「小さいの」が市さんの、なのか、市さんのお客さんの、なのかは分からないけど、「遅いって怒られた」とか、「豆餅の豆が前より減った」とか、そんな思いをしょってたりするみたい。

うん、そうですね。

言霊の一種なんじゃないかなぁ。

え?

言霊って何だって?

辞書によると、↓ですって。うん、そう、そんな感じなのかな?

言霊:(デジタル大辞泉)

  古代日本で、言葉に宿っていると信じられていた不思議な力。

  発した言葉どおりの結果を現す力があるとされた。

どう説明しても嘘っぽいので、おいおい、こう、理解して?

それで、ですね。

市さんが紡ぐ言葉に連動するみたいに「小さいの」が動いて、壁のぼったり、テーブルの上に寝そべったり、他のお客さんの頭に載ったりしてる。

特にどうする訳じゃないけど、その様子を見てると、多分、気分良くなってくれてるのかな?

なんて思うわけですよ。

だったら良かった~~って、こっちもほわっとして。

それがいつもの事。

でもその日は、ちょっと違った感じだったんですよ。

どう違うと言うと、止まった?って感じ。「小さいの」も市さんも、指定席に荷物を置いただけで腕をほどかないまま、きょとんとしてた。

おやまぁ。

カウンターを出た琴子さんに、市さんがそう呟いて、同じ道を辿って出てっちゃった。

流石にびっくりして、市さん!と声をかけると、市さんはまたにこーっと笑って。

順番を、間違った。と

え?はい。見送りましたよ。だって、引き留める訳にもいかないでしょ?引き留めるのもおかしな話ですし。

それに、確かに、「そう」だったから。

どうしても欲しい物、ってね。いつでも欲しい訳じゃないんです。

どうしても欲しい物、はどうしても欲しい時、に欲しいんです。きっとその時はそうじゃなくて、市さんはそれが分ってたんだと思う。

それが分かったのは、日が暮れて、街頭に灯が点り始めた時間でした。

わっ、ごめん。引っ張るつもりはないんだけど、続きはまた明日!

いらっしゃいませー!

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