☆クレームが来ましたよぉ… 2
おはようございまーす!!
昨日さぼったじゃないかとか、引っ張るのも大概にしろとか、全部自分で分ってまーす!
ごめんね? (。・ ω<)ゞてへぺろ♡
あ、そだそだ。 夏の祭典の意味が分かった私です。
マルは一つ大人になりましたよ。
行った訳じゃないんですけどね。記録係が逐一報告して来やがりまして、大人の階段を上りましたよ。
「東京ビッグサイト」で行われる「コミックマーケット」と言う「魔族の集会」。それが、「夏の祭典」。
記録係が写真を送って来ました。集会の。
このくっそ暑い中、足まで包む黒装束のお兄さん、あれで死なないとか人間じゃない。
髪はピンク、水色、緑。角あり尻尾あり、胸はデカい、お腹はきゅ、……多分人間じゃない。
そう言う集会みたい。
最初は、
炎天下の橋の上、俺の上をじりじりと去らない太陽……とか
触れ合う肌が凡てじっとりと濡れて、粘度がある、これこそコミケ……とか
ポエムなんだか愚痴なんだか、きっしょいラインずっと送って来やがるんで、スマホ切ってたんですけど、
なんかそーゆー事だったみたい。
そこで家のパンフ配るとか、微妙に意味は分からないけど……いいのそれ?
あ、そだ。
で、記録係にくれぐれもお礼を言えと言われまして。
家のパンフを手に入れられた方。有難うございます!出会いに感謝いたします。
美味しい珈琲ご用意してお待ちしておりまーす。是非、これからよろしくお願いいたします!
私、パンフのゲンブツを見てませんけどね(ꐦ°᷄д°᷅) あのやろー。
さて!
引っ張った訳じゃありませんよ。
今度こそ、一昨日……?一昨昨日の話を続けますよ!
まず、経緯をまとめますと。
昼前のホッと一息時、婆ちゃん汗だくで現る。
↓
「あなたが盗ったのね!! 分かっているわよ、返して!!」
↓
叫んだあと、動かなくなったので助けようとした琴子さん 「触らないで、泥棒猫!」 ゲット爆笑ニャーン
↓
私が休ませる。素直に休む。
↓
「返しなさい!! 私の指輪を。佳那さん!」 佳那さんって誰。←イマココ
な、訳ですよ。
当然、琴子さんの個人的な知り合いじゃない。
お客様な事は確かだけど、私は全然記憶にない。
琴子さんは昨日いらした、って言う。
ラチ、あかないし、とにかく琴子さん相手だと、エキサイトお婆ちゃんになってしまうので、私が対応に当りました。
「指輪、無くされたんですか」
「失くしたんじゃないわ。盗られたのよ、あの泥棒猫に!」爆笑爆笑ニャニャーン
マズイ。私の脳内に猫が増えていく。無条件で「泥棒猫」って面白くない?
これは、あれかな。
お年もお年だし、今一どころか今二今三、話す内容の整合性も怪しいし、ボk……認知症という症状の方かしらん…。
どうした物だろう。身許を聞き出せれば連絡できるけど、どうしても無理だったら、お巡りさん行き?
出来ればそれは避けたいなぁ……と。
と思ってると、集まってきましたね。
え? 何がって。
お客さんじゃないですよ。いやいや、野次馬でもないってば。
最初は机の上に、9時くん。
え?ですから、9時君。
足伸ばして、ぺたっと座ってた。
何それと言われても。
見た目9時だから仕方ない。針が9時さしてる、分かり易い9時君。
9時がなんで?どうした?と思ってると、すぐわらわらと10時君、11時君、12時君が。
気付いたら、机の上に、きれいに並んで座っていた。思い思いの格好で。
私も接客があったので、お婆さんに掛りきりじゃいられなかったので、取り敢えずちょっとその席で休んでもらって席を外してた。
次に様子見に行った時は、机の上が一杯になってた。
まず、9時君から12時君。多分ここで、夜中を回って、1時君から現在時間の12時君まで揃ってる。
琴子さんと二人、何となく頷いた。
盗られたか、泥棒猫はともかく。爆笑ニャーン
お婆さんが、何か大事な物を、お婆さんの言う通りなら指輪を失くしたと気づいたのが9時なんじゃないか。
多分昨日の9時に気づいて、それからずっと探してて、あそこだ!と思って今朝、家、Bar di Kotokotoに来たんじゃないか。
――となると。
「琴子さん、落とし物に指輪なんてありました?」
琴子さんが首を振る。
だよなぁ。
そんな大事な指輪なら、きっと高価な物だろうし、店内に落ちてたら気づく。でもって保管する。
他のお客様が持ってっちゃってなければ、だけど。
これは、まずい。
と、琴子さんが首をかしげている。
お婆さんの指は割と特徴的だった。
第一関節が太い。若干、まがってたりする。ご老人では割と多いけど、特徴的だ。
ヘパーデン結節だな!と後から隣のドクターに聞いた。
例えば指輪を失くしたとしたら、いつも嵌めていたものが落ちたと言う事だろう。
あの指で、それ、あると思う?
琴子さんがそう尋ねているのが分かった。
うん、確かに無いわ。自然に指輪が抜けるとか、あり得ない。むしろ、頑張っても抜けない。
と言うかそもそも、お婆さんの指には指輪をしていた形跡もない。
「あの~~~、無くされたのは指輪なんですよね?」
「失くしたんじゃないわ。盗られたのよ!」
「あー…はい。でも、どの指にされてた指輪ですか?お客様の指だと…」
言われてびっくりしたように自分の指を見て、違うわよ、と言う。
「この指に嵌められる訳ないでしょう!」
「ですよね。――あ、じゃ、ペンダントに通してたとか、ですか?」
「違うわよ。ここ」
お婆さんの指し示したのは、と言うか掴んだのは左の手首だった。
――――ああ!
琴子さんと顔を見合わせる。なるほど!と頷き合う。なるほど。
それで、9時君を始め、全員そろってるんだ。
分かった。
指輪じゃない。失くしたのは。
「お客様、時計を失くされました?腕時計を?」
「だから、無くしたんじゃなく、盗られたの! 指輪だと言って交換したの。大事な物なのよ。ずっと半世紀以上も一緒に暮らしてきた私の指輪。
――返してちょうだい、佳那さん」
いやだから、誰それ。
取り敢えず、失せ物があって、それが腕時計だと言う事は分った。
でもそれ、家の所為?
家の落とし物に、腕時計ならあって、でも男性物。当然お婆さんには見せたけど、案の定違うわ!と一言で否定された。
ですよねぇ。
となったらさー……
自分の家にあるんじゃないのかな~?それ。普通に考えて。
だってね。私はこの方、見た事無いですもん。
今迄にいらした事なければ、家で失くし物もしないでしょう。
琴子さんはいらしたって言うけど――
私は見てないし――
お婆さんは少し落ち着いたのか、ざんバラだった髪に手をやった。
「申し訳ないんだけれど、髪を止めるピンとかゴムとか、あるかしら?」
洗面所に案内して、私のポーチを渡す。
確かに。お婆さんはサマーセーターとスカートと言う、ラフな格好で、髪も伸ばしっぱなし状態だった。
いかにも、慌てて出て来てしまった、という格好だ。
言いたい事を言って、少し気が済んで、それに気づいたんだろう。
他のお客様のラテを淹れて、今日のケーキをお出しして。
そこにお婆さんが戻ってきた。
「お手数かけました。ポーチ、お返ししていい?」
――――。
――――――。
いやまて。
いやいやいや。
ちょっとすみません、お客様、ちょっとこの店に置いてる老眼鏡をかけて見て貰っていいですか。
必要ないわ、ではなく。こっちの事情でちょっと。
ええ。一瞬で良いんで。
………
…………!
知ってたー!
見た事有った、このお客様~~~!
明日に続く!
(引き伸ばしじゃありませんって!