63 家の中に潜むコソ泥
極めつけがもう一つある。
夫がわたしのInstagramを見て、探偵の証拠を突き止め、わたしに詰問した直後のこと。
わたしの仕事の売上金の一部が消えていた。
コロナ禍には銀行に行くのを控え、売上は入金せずに一旦自宅に置いていた。その一年ほどの期間で売上金は何回か帳尻が合わないことがあった。
店のスタッフにすべてを任せている手前、そしてスタッフが長年雇っている信頼できる人であることから、わたしは敢えてスタッフに言及しなかった。私の計算ミスか、スタッフの計算ミスか。差額は一万円のことが多かった。
Instagram事件の後、ニつの封筒に入れていた売上金。片方は一万円、もう片方は一万五千円、帳尻が合わない。
知り合いの女性から借金を繰り返していることを知ったわたしは、このときようやく家の中に泥棒がいることを確信した。
頭に血が上り、子どもたちがいる前でわたしは叫んだ。
「店の売上金、盗ったわね?」
「いやいや、さすがに盗らないよ」
この問答を5回ほど繰り返したが、答えは変わらず埒があかない。
「盗っていない」を繰り返せばそれが事実になってしまう。夫に自白させるしか真相はつかめない。わたしは質問を変えた。