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71 同じ手口で騙し取られたお金
このサプライズビデオのことを母がわたしに話さなかったことに夫は味をしめたのだろう。
「本当は墓場まで話さないつもりだったけど…前の家庭での息子さんたちの留学費用として50万円と30万円。泣いて頼まれたの。言ってみれば孫の義理の兄弟じゃない?返さなくていいと伝えて貸したわ。もちろんこれも返してもらっていない」
非表示リストで見た内容と全く同じ手口に耳を疑った。お金を借りているあの女性に借りたのと同じ手口。一体どうなっているだ。
頭を整理する間もなく、母が言った。
「あと、家賃ね。未払いが何度も続いたわ。
せっつくと忘れてたと言って支払うけど、こちらもせっつくのも気が重くて。
あなたたちが不妊治療をしていたり、コロナ禍にあなたの事業が大変だったでしょ?だから家計が苦しいと聞いてたから、目をつぶってしまっていた。今回、家賃の未払い金を算出したら120万円もあったわ」
わたしたちは母が運営してるマンションに、家賃を少し安くして住まわせてもらっている。家賃の支払いは夫の担当で、わたしは関与しておらず、未払いがあったことなど夢にも思わなかった。
我が家の家計について、わたしが母にほとんど話していないことを夫は逆手に取ったのだ。勝手にストーリーを作り、お金を騙し取り、未払いのための嘘の言い訳もする。
恥ずかしさと申し訳なさ、怒りと後悔…整理できない感情が一気に押し寄せて、涙が頬を伝った。