02 違和感の正体
夫の携帯のLINEにいた知らない名前naomi。
手に汗がジワリとにじみ、鼓動が速くなる。
目が忙しなくやりとりを追った。内容は恋人同士のような軽めのやりとりだ。
「会いたい」
「俺も会いたい」
「次はいつ会える?」
「早く会いたい、いろいろ話したい」
心拍数が上がる中、わたしは自分の中でずっと感じていた「違和感」の正体を突き止めたようで心臓とは裏腹に、頭はすっと冷静になるのを感じていた。
このLINEに長居は禁物だ。目の前でイビキをかいて寝ている夫がいつ起きるとも知らない。
あらかた目を通し、長男がタブレットで開いているのと同じゲームを開いた。
ゲームを開いたのと夫が目を覚ましたのは同時だった。
自分の携帯をわたしが手にしていることを見た夫は一瞬あからさまに動揺し、体を勢いよく起こした。
平日は仕事でほとんど家にいない夫は、疲れのせいか週末は仏像のごとく動かない。ソファにどっかりと座りテレビを見るか、うたた寝をするかだ。
自分から席を立つのは、トイレか夕食の時に追加のビールを取りに行くとき、そして長男が自分の携帯を触っているとき。所在なげにウロウロと長男の周りを歩き、自分の携帯を横からチラチラ見たりしていた。
何かあると思っていた携帯にはやはり何かあったのだ。
夫の不安定な雰囲気をそばに、わたしは何食わぬ顔でゲームを続けた。
頭の中では「これから」について考えていた。