11 意図せざる帰結
脇に冷たい汗が流れ、心臓が早鐘を打つ中で携帯を閉じた。
この間、ほんの数分。夫がいつシャワーから出てきてもおかしくない状況の中、息を凝らして子どもたちがスヤスヤと寝入るベッドに体を滑らせた。
意識的に呼吸をしないと息ができない状況の中でわたしの心が突然、訴えかけてきた。
「違う」
頭と心でずっと感じていた「違和感」の正体は、加藤なおみではない。なぜそう瞬時に確信したのか、未だに分からないが全細胞でそう感じたのだった。
大学進学で東京に出てきた夫。他のメンバーは地元に残っている様子はグループLINEからも容易に伺えた。
加藤なおみも地元にいることが読み取れた。
いままさに地方に不倫相手がいることを知ったことで、わたしがずっと抱えていた違和感の正体は「都内」にいると直感的に感じるに至った。
平日の深夜帰り、家族への無愛想な様子、夫婦間のセックスレス、我が家とは違う洗剤がたまり香る洋服、長男が携帯を見るとソワソワする様子、会社の携帯は長男に触らせないこと、週末の夕方にふらっとコンビニへでかけること、深夜帰宅時の目の充血などなど。
何年にも渡る小さな小さな違和感の集大成が、加藤なおみではない女の存在を決定づけていた。
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