52 予行練習どおりにわたしは話を始めた
「何のお話でわたしが来たか分かりますよね?」
「はい」その声は小さく、録音できるか心配になるほどだ。
「わたしあなたを責めるために来たのではありません。ましては大ごとにしたり、騒ぎ立てるつもりも毛頭ありません。そこはご理解ください。ただ真実が知りたいだけです。どうか正直に事の経緯を教えてください」
それでも黙ったままのZ。
わたしは誘い水のように少し促すことにした。
「関係はすでに5年前から再発してて、やりとりはLINEではないアプリでわたしにバレないようにしていますね」
情報を掴まれてることを察したZは、ようやく口を開いた。
「3年くらい前に部署の引き継ぎで絡んで、そこから信頼関係がさらに強くなりました」
「つまりまた肉体関係になったということですね」
「以前もお伝えしたとおり、昔はそのような関係ではありませんでした。信じてください」
信じるわけはないが、わたしは続けた。
「5〜6年前頃より関係が始まり3年前からとくに親しくなったということですね。そして週に1回ほど宿泊し、2〜3回立ち寄っていましたね」
「ここ2年ほどはそんな感じです」
次男の出産前後からの二重生活。夫の不倫相手を目の前に、わたしは疑問に思っていたことの霧が晴れた。