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I May have LOST the earth -5月の青い空-

急に君が夢に出てきて焦った。

夢なんか滅多にみないのに。いや、みても覚えていないだけなのかもしれないけれど。
いっしょにいた5ヶ月の間に出てきたことはなかったのに、なぜ、今?

ケータイを見ると、6時前だった。せっかくの日曜日なのに。
もう眠りは訪れそうにない。時差ボケなのか、ここ数日、変な時間に目が覚める。
カーテンの隙間から明かりが届く。日に日に、きっちりと夜明けが早くなっている。
思い切ってベッドから出て、カーテンを開くと、淡いスカイブルーが目に入った。

2年半、か。
真冬のプラットフォーム。首周りのファーの感触。あのひとのジャケットの色。
泣かれても振り切って、やってきた電車に乗る。そのタイミングを綿密に計ったけれど、
その必要はなかった。あのひとは、一滴の涙も流さなかった。完全な泣き顔だったのに。
その分、別れづらかった。電車に乗るタイミングが、逆に難しかった。
わたしのほうが、車内でぼろぼろ泣いた。たぶん、あのひとの分まで。

夢のなかで、ドライヴしていた。わたしは、助手席からあのひとの横顔を見つめていた。
ただドライヴしているだけなのに、わたしはたのしそうだった。たのしかった。
運転席の奥にある窓の外を、田舎の景色が流れていく。いつかの高速道路。
あの車の内装まできちんと再現されて、生々しかった。
シートの色、ETC車載器の位置、シガレットソケットに突っ込んだ充電器……
思い出すと、身震いが走った。パジャマに包まれた腕を抱える。

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