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同期に向けた13年分のエール

同期のサクラ

私と平田さんは同じ2010年デビュー。
いわゆる同期という事になる。
平田一喜 2010年3月14日デビュー
木曽大介 2010年6月3日デビュー
私から見て平田さんは3ヶ月先輩という事わけだ。
「いつデビューできるのかな?」
「やっぱ無理なのかな?」
合同練習の帰りにあれこれ話し合った大切な同期。

私のデビューが決まりかけた頃、一つの問題が出来た。
「後楽園の設営をした事が無い」
当時DDTが経営するミツボシカレーの勤務と兼任だった私はそれに参加した事が無かった。
「デビュー前に設営した方が良いでしょ。リングも作れないのにデビューってのはちょっとなぁ…」
そして初めての後楽園設営の日。
伝えられた集合時間の5分前に到着したものの既に始まっていた設営作業。
後で分かったのだが若手は会社に決められた集合時間より早く集まって設営を始める、それが当然だったのだ。
「今日何しに来たんですか?」
『設営のお手伝いに…』
「もう帰って頂いても大丈夫です」
業界の厳しさを思い知った日だった。

同期が作ってくれた居場所


その次の後楽園大会。
みんなと同じ時間に到着すると一つの役目を与えられた。
「リング部材をエレベーターに積み込む前にアリーナに上がりリング位置やターンバックルなどの準備をする」
恐らく素人過ぎる私は重たい物が持てずに足手まといになると判断されただけなのだが。
その仕事を教えてくれたのが平田さんだった。
とにかく丁寧にそして優しく教えてくれる平田さん。
慣れない私に気を遣ってあれかれ話しかけてくれ、他の仕事についても沢山教えてくれた。
私は平田さんのお陰で初めて居場所が与えれた気がして嬉しかった。

同期によって遅れたデビュー


それと同時に私のデビューの話も進みつつあった。
決まったエキシビションマッチ、平田さんvs妻木さんで私のレフェリーとしてのエキシビションも決まった。
これが言わばデビュー戦になる!
はずだった。
もののその少し前に練習生だった平田さんが中澤さんからまさかのアイアンマンを奪取。
発表されていたエキシビションマッチはタイトルマッチとなった。
「流石にデビュー前のレフェリーにタイトルマッチは任せられない」
私のエキシビションマッチは無くなりデビューは遠のいた。
プロレス界で初めて居場所を作ってくれた恩人の平田さんは一転、デビューを遅らせた張本人となった。

同期が語り続けてくれた背中の末に


デビューは先送りとなったが雑務は続きどんどん要領を覚え「リング設営の準備」の作業時間は短くなる一方。
とある大会でトラックが遅れてかなり切羽詰まっていた時。
「これ一番早く出来る平田木曽で準備やって!」
あの先輩が叫んだ。
平田さんのお陰でいつの間にか私はDDTの輪の中に入れていたのだ。
気付けばいつの間にか平田さんの背中を見て仕事をする様になっていた。
今思えば平田さんの事を悪く言う人に会った事がない。
そして平田さんが他の人を悪く言うのも聞いた事がない。
平田さんはあんな感じで優しい性格だからいわゆる『弄られる』場面も多々あるのだが、常に笑顔で切り返し相手を笑わせる。
微笑み返しの男だ。
そもそも平田さんが怒ってるのを見た事がない…って一回勝俣を怒鳴ってたなぁ(笑)
かつて『若手の鏡』と言われてた平田さんを見て育った遠藤がやがて『若手の鏡』になったのも頷ける。
もし自分に娘がいたとして『お父さん、実は会って欲しい人が…』って連れて来たのが平田さんだったらどんなに幸せな事だろう。

あれから13年が経った。
明日の両国国技館大会。
平田さんは新日本プロレスの高橋ヒロム選手と一騎打ち。
そういえばあれだ。
12年前、デビュー直後の若手同士だった平田さんとヒロム選手はシングルマッチで激突していた。
結果はヒロム選手の勝利。
これがプロ初勝利だった。
直後に再戦した時もヒロム選手が勝利。
その時のレフェリーは同じくデビュー直後の私だった。
高橋ヒロム 2010年8月24日デビュー。
同期だ。

もちろん平田さんとヒロム選手が歩んできた13年、あの日からの12年を単純に比較する事は出来ない。
お互いが歩いたその道で様々な出来事があったのだろう。
それでもまさかこの二人が再び交わるなんて誰が予想出来ただろうか。
全く別々の12年を突っ走って来た二人。
でもきっとそれぞれの信じるプロレスを、DDTと新日本を突き進んできたのではないだろうか。
それでも巡り合った二人。
私に居場所を作ってくれた同期の平田さん。
私の決まりかけたデビューを先延ばしにした平田さんとアイアンマン。
ヒロムさんの初勝利の相手が平田さん、
そのヒロムさんと平田さんのアイアンマンヘビーメタル級タイトルマッチ。
新木場から12年後の両国国技館。
こんなにドラマティックな事が起きるんだなぁ。
そのドラマティックの結晶が明日。
遅れて来たヤングドラマとヤングライオンの一騎打ち!

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