『俺の家の話』の話 第三十四試合
私がレフェリー見習いになった頃のお話。
とにかく経験を積むしかない、それが師匠の松井さんに言われた事だった。
合同練習でレフェリーをさせて頂くと、
「近すぎる」「ちょこまか動きすぎる」「威厳が無い」
と選手からも色々とアドバイスを頂いた。
デビュー前は6メートル四方の四角いジャングルはとんでもなく狭く感じた。
そう、ジャングルどころか箱庭くらいに。
思うように動けないし気が付けば固まってしまうし。
コーナーに控えている選手からの圧迫感も凄まじかった。
今ではとても広く感じる事もある。
そう、海くらいに…
それは言い過ぎた。あと木が無い。
ちなみに俺の家の話ではカットになったプロレスシーンも結構ある。
20秒くらいあったのが4秒くらいになってたり。
だから撮影現場ではより長くプロレスシーンを見ている。
堀コタツ会長こと三宅さんのレフェリングも撮影現場だともっと長く見れる。
最初に見た時は「ちょっと細かく動きすぎかなぁ」と思って三宅さんに言おうかと思った。
でもその小気味良いステップはどこか癖になる。
バックステップなんて本職顔負け。
きっとボクシングの経験と観て来たプロレスが良いバランスで融合されたレフェリングなのだろう。
非常に味がある。
これはやはり「レフェリー堀コタツの味」として残すべきだと判断した。
それで言うと試合後に勝った選手の腕を上げるシーン。
私はいつも通り「ウィナー!」と言いながら手を上げる。
コタツさんは「多摩自マン!」とか「世阿弥マシン!」とか選手の名前を呼ぶ。
これもまた個性でとても良いと。
やはり三宅さんの声は通るし勝者を讃える感じがとても出ている。
もし私がやったら声が聞こえないからまた音声さんが来て…
ほっとけ!
この先また試合のシーンがあったら、是非コタツさんのレフェリングにも注目して欲しい。
そんな俺の家の話の話。