中学3年「足袋の季節」【よりよく生きる喜び】の指導案はこうする!
こんにちは。
今日は
中学3年「足袋の季節」【よりよく生きる喜び】の指導案はこうする!
このテーマで教材解説をします。
「よりよく生きる喜び」
この内容項目は難しいんですよね~。
小学校では5・6年(高学年)にしかない内容で、
教材も1つか2つしかない。
授業をした後で、
「結局、なんだったの?」と
手ごたえなしで終わることが多いですよね。
今日はこの難しい内容項目を解説します!
今日の記事で考えていきましょう!
では、解説です!
1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ
順番に解説します。
1 教材について
D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること
「よりよく生きる喜び」
目標・・・・・人間には自らの弱さや醜さを克服する強さや気高く生きようとする心があることを理解し,人間として生きることに喜びを見いだすこと。
「足袋の季節」(光村図書)
あらすじ
「私」が足袋を履く冬がくると、心の中に生き生きと映し出されるおばあさんがいる。
40年前、小樽の伯母を頼って父母の膝下を離れた。
私の父は仕事もたまにしかなく、家は非常に貧しかった。
伯母に紹介された小樽郵便局の仕事。
月給が14円で、伯母が食費として13円50銭をとり、
自分は残りの50銭で頭を刈ったり、ふろ銭にあてた。
そのお金では足袋も変えず、雪の中を素足でぴょんぴょん跳ねるようにして局へ通った。
郵便局の構内に、毎週大福餅を売りに来るおばあさんがいた。
ある日、上役の言いつけで、10銭玉を握りししめて大福餅を買いに行った。
おばあさんは大福餅を5つ袋に入れて渡しながら
「50銭玉だったね?」と聞いた。
私が渡したのは10銭玉だったが、「40銭あったら足袋が買える」と思い、「うん」とうなずいた。
おばあさんはちらっと私を見て「ふんばりなさいよ」とぼそっと言った。
その後試験に合格して、初めて月給をもらうと、果物籠を手におばあさんを訪ねに小樽局へ行った。
すでにおばあさんは死んでいた。
無償に自分に腹が立った。
もっていた果物籠を川に落としてやった。
今となってはただ後悔の念を深くするばかりだ。
2 内容項目と教材
(1)内容項目について
「よりよく生きる喜び」という内容項目は、
新学習指導要領になって初めて加えられました。
つまり、それほど実践が世の中にありません。
授業づくりに困っている先生は実は多いのではないでしょうか。
内容項目の目標をもう1度確認してみます。
①人間には自らの弱さや醜さを克服する強さや気高く生きようとする心があることを理解する
②人間として生きることに喜びを見いだすこと。
①では、偉人や人として模範となる人について考えること、と言っています。
何について考えるのか。
それは強さと気高さです。
これは、どちらも心のことを指します。
心の強さとは、人によって定義が異なることでしょう。
つらいことにも負けない精神的な強さ。
優しさを発揮することで第三者に伝わる強さ。
いずれにしても、心の強さは人から教え込まれるのではなく、
子どもが自分で気づくことが大切です。
気高さも同じです。
気高いと聞いて思い浮かぶ人物は誰ですか?
私は、
ドラゴンボールのベジータ・ピッコロ
ワンピースのゾロ
などが思い浮かびます。
自らの考えを大切にし、決して他人には強制をしないが、
自分自身には徹底して厳しく在り続ける。
そんなところでしょうか。
「プライドと誇りを兼ね備えている」と言ってもでしょう。
ベジータ、ピッコロ、ゾロなどは極端な例ですが、
誰しも心の強さと気高さをもっています。
そのような、人が本来もっている心の本質について、
教材で出てくる人を扱いながら、自分の心にも似たものがある
と気づくことが、この内容項目では大切なのです。
それが、②人間として生きる喜びを感じることにつながります。
困難にぶつかっても、人の助けや得意なことがあって、再び頑張ろうと思えることがあります。
自分で見つけた道を突き進むと、つらいこともありますが、やってよかったと思えることも多いですよね。
「成長したい」という気持ちは、人間が本来もっているものです。
その成長欲を満たしたとき、人は「生きててよかった」と思えるのです。
これは、欲しいものを手に入れたとか、
好きなものを食べることができた、
という短期的で一時的なものではありません。
長い時間をかけて、努力が実り、
成長が成就したと感じられるほどの
努力を注ぎ込んだときに、
「生きててよかった」と思えるのです。
おいしいものを食べたときに
「生きててよかった」とおいしさを表現するシーンがありますが、
あれはただの誇張表現です。
道徳的に考えると、本質とは異なります。
と、「よりよく生きる喜び」だけでもこれだけ説明が長くなります。
結局、どうやったらいいの?
はい、前置きが長くなりました。
結論を言います。
教科書の偉人について「〇〇さんはすごいなあ。」と
自分とは別次元という感想をもたないような授業を心がけましょう。
また、「生きる喜び」は人それぞれちがう、ということも押さえましょう。
Aさんがこれに心を打たれるから、BさんもCさんも同じようにそれを生きがいにする、という話ではないのです。
生きがいを見つけるのではなく、
「生きがい」があると、生きててよかったと心から思える。
そんな心の動きを議論できるようにしましょう。
偉人だろうと、有名人だろうと、同じ人間です。
成長したい欲もあるし、挑戦するときの恐怖もあります。
教材ではよい部分だけをピックアップして描かれていますが、
書かれていない裏の部分を発問で突いて、考える機会を設けることが、
内容項目に迫ることにつながります。
(2)「私」の喜びを考える
では、教材を見てみます。
①に重点を置いて考えましょう。
「私」は、気高いでしょうか?
苦しい生活環境の中で、郵便局に勤めて、
たった一度だけおばあさんに嘘をついて
おつりをごまかしました。
それをずっと気にかけて、初任給でお詫びに来ました。
教材を読む限りは、誠実な人であることが伝わってきますね。
謝るチャンスは何度もあったが、
罪の意識に苛まれ、言い出すことができなかった。
自分の欲を捨てて、正直に謝ることもできたかもしれません。
でも、自分の環境が苦しく、「足袋がほしい」という思いも
罪の意識と同じくらい大きかったのです。
これらのことから、「私」の「喜び」について考えましょう。
・「私」は幸せだったのか。
・「私」は、嘘をついて手に入れた40銭で足袋を買って、うれしいだろう
また、おばあさんの「喜び」も考えてみましょう!
・「おばあさん」は幸せだったのか。
・「おばあさん」は、わざとだったのだろうか。
・「おばあさん」は、なぜおつりをわざと間違えたのだろう。
こういった発問で、おばあさんの喜びを考えられるようにしましょう。
また、「希望」というキーワードも大切にしたいですね。
人は、希望がなくなったとき、人生という道を進む力を失います。
「私」は、最後の最後まで希望を捨てなかった。
このことが展開や終末で触れられると、最高に感動する授業になりますね!
3 導入
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