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6年「上村さんのちょうせん」【希望と勇気】の指導案はこうする!

こんにちは。
今日は『6年「上村さんのちょうせん」【希望と勇気】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。

今日扱う教材は、かなり完成された、
まるで物語を読んでいるような気分になる素敵な教材です。

完成された教材は、考えが入り込む余地がなく、
教材を追うだけの授業展開になってしまいがちですが、
そこは腕の見せ所です。

当たり前をひっくり返す、
選択肢を用意して比較して考える、など
工夫をして発問を考えることで、
100点の素晴らしい教材が
授業で120点の教材になるのです。

ではどのように考えていけばいいのか、
ぜひ最後まで読んでくださいね。

では、解説です!

1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ

順番に解説します。

1 教材について

A 主として自分自身に関すること
「希望と勇気、努力と強い意志」
5・6年の目標・・・・
より高い目標を立て、希望と勇気をもち、
困難があってもくじけずに努力して物事をやり抜くこと。


6年生「上村さんのちょうせんーひさい犬と共にー」(日本文教出版)

「上村さんのちょうせんーひさい犬と共にー」あらすじ

東日本大震災で保護された雑種犬、「じゃがいも」
被災地の人を力づけるために、じゃがいもは災害救助犬を目指すことになりました。

トレーナーは上村(うえむら)さん。

雑種で救助犬を目指すことはハンデがあること、
テストに何度も不合格になること、
全国から応援だけでなく批判もきたこと、
多くの困難を乗り越え、11回目のテストで見事合格をします。

それだけでなく、飯館村の大使に任命もされました。

多くの人が「勇気づけられた」と笑顔で言う姿を見て、
上村さんはじゃがいもといっしょに、もっといろいろなことに挑戦したいと思うのでした。

2 内容項目と教材

・東日本大震災が背景にある教材です。
災害救助犬を目指す犬と、そのトレーナーのお話です。

・感動的な話ですよね~。
もうこの物語を読むだけで、授業を終わってもいいぐらい、
読み応えのある教材です。

・国語的な教材なので、子どもの「心に残った場面」を聞いてもよいでしょう。
国語のような発問ですが、大丈夫です。

・「心に残った場面はどこですか?」と聞くと、次のような視点で意見を言うでしょう。

☆①あきらめないじゃがいも
☆②じゃがいもを応援する全国の人からの手紙
☆③じゃがいもに力をもらった故郷の人の心

その子どもの意見に、道徳的な価値が隠されているのです。

例えば、①あきらめないじゃがいも。
ここから、「なぜじゃがいもはあきらめなかったのだろう?」と
発問が生まれます。

②じゃがいもを応援する全国の人からの手紙。
「なぜ、じゃがいもは全国の人から応援されたの?」と
発問が生まれます。


道徳の授業ですが、完全に道徳色を出して授業をデザインする必要はありません。
今回のように、国語的アプローチでも、
出口は結局道徳になっていきます。

いろいろな手法で教材を切り取っていくと、
新しい視点が生まれやすいですよね。


さて、じゃがいもについてもう少し考えてみます。
雑種、世間の非難、10回の不合格。
多くの困難やマイナス要素を経て、見事災害救助犬になります。

しかし、裏を返すと、
「そこまでして災害救助犬になる必要があったのか。」という疑問が浮かびます。

じゃがいもはしゃべれませんから、本当のところはわかりません。

ですが、ずっといっしょにトレーニングをした上村さんの思いは、
きっと伝わっていたでしょう。

では、上村さんの思いとはなにか。

被災地で保護された、雑種のじゃがいもを災害救助犬にして、被災地に元気と勇気を与える。

これに尽きるでしょう。


上村さんがじゃがいものトレーニングをあきらめると、
被災地の人たちががっかりする。

つまり、上村さんとじゃがいもがあきらめることは、
被災地の人が復興への元気と勇気をなくすことと同義でもあるのです。

その思いを背負い、上村さんはじゃがいもをトレーニングしました。
上村さんのその思いがじゃがいもに伝わり、上村さんとじゃがいもは二人三脚で頑張ったのです。


ところで、上村さんとじゃがいもの目標はなんでしょうか。
災害救助犬になることでしょうか?

目先の目標はそれですが、どちらかというと
災害救助犬になることは手段です。

災害救助犬になって、どんなことをしたいのか。
それが、上村さんとじゃがいもの本当の目標なのです。
本当の目標は、

被災地に元気と勇気を与えること

上村さんもじゃがいもも、困難に負けずにくじけなかったのは、
その目標をいつももっていたからなのです。


上村さんとじゃがいもから、子どもはこの部分に気付いてほしいですね。

こういった完成された物語は、
遠くの地域の、すごい人が、あきらめずにすごいことを成し遂げた。
と、とかく自分とは切り離して考えてしまいます。

しかし、上村さんも一人の人間です。
あたなが授業をする子どもと同じように、
不安もあるし、心配もあるし、やめたいと思うこともあるでしょう。

ですが、それを乗り越える原動力はなにか。
自分にも共通するものはないか。
このように考えることで、
上村さんとじゃがいもがグッと身近に感じられ、
大きな学びを得ることができるのです。


3 導入

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