伊集院光さんによる「こねくと」CMソング言及を受けて、CMソング作曲者が思うこと
TBSラジオで放送中『こねくと』CMソングを作曲させていただいた、
「架空のCMソングを作る・キシリ徹」のやなせ京ノ介です。
CMソングが好きで、普段は架空の企業から架空の依頼をもらい、架空のCMソングを作る活動をしています。
それがきっかけとなり、実在の番組や企業のCMソングも作曲しています。
架空の曲の一つです。
このたびTBSラジオ『伊集院光 深夜の馬鹿力』で、パーソナリティの伊集院光さんがこねくとCMソングについて言及してから、SNSを中心に議論が生まれ、我々の元にもいくつか直接ご意見をいただきました。
(そしてエゴサもしました!笑🙏)
当初、まずは話題になることがありがたいと思い、我々のSNSでも「言及していただいたという事実」を伝えるにとどめていましたが、
神田伯山さんがこの件に言及し、Yahooニュースになってから、議論の様相や質が少し変わり、CMソング以外の部分へも話題が多層化し、経過とともにこの件に抱く思いも変わってきました。
今回の件に関係している、伊集院光さん、神田伯山さん、『こねくと』の石山蓮華さん、パートナーの皆さん、スタッフの皆さん、全登場人物中もっとも知名度や影響力はないですが、作曲させていただいたので、思ったことがないわけではありません。
『こねくと』番組側からの言及が特にない段階では、我々が言及することで、大きく「こねくと側の意見」と捉えられ、ほんの少しでも余計な誤解や対立につながるといけないと思い、事実のみを伝えるようにしていました。
12/10(火)のこねくとで、番組側から公式に言及があったため、
今回の一連の出来事で思っていることを、こちらの記事に書いてみることにしました。
ほぼ同内容ですが、我々のpodcast『人生はCMソングだ』でも特別回として配信しています。
◆伊集院さん言及からの経緯
・12/2(月)の『深夜の馬鹿力』で、伊集院さんがCM枠について私見を述べる中で、こねくとのCMソングについて言及。
「月曜日〜♪」の部分を口ずさみながら「ダッセェ!」という表現で触れていただきました。
JUNK 伊集院光・深夜の馬鹿力 | TBSラジオ | 2024/12/02/月 25:00-27:00
https://radiko.jp/#!/ts/TBS/20241203013643
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・12/6(金)の『問わず語りの神田伯山』で、伊集院光さんが、こねくとの番宣CMソングに言及したことについて、神田伯山さんが触れる。
問わず語りの神田伯山 TBSラジオ 2024/12/6(金) 21:30-22:00
https://radiko.jp/#!/ts/TBS/20241206213340
↓
・神田伯山さんが話した内容がYahooニュースになる
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・12/10(火)の、こねくとにて、伊集院光さんがCMソングに触れた件について、石山蓮華さんとでか美ちゃんが言及。
こねくと (1) | TBSラジオ | 2024/12/10/火 14:00-15:00
https://radiko.jp/#!/ts/TBS/20241210140956
(※こんな切り取った文字の経緯だけで知った気にならないで、ぜひ各番組の該当部分を聞いてね!今はradikoのタイムフリー30という機能があって、30日前の番組まで聞けるんだからさあ!!!今こそ聞こう、TBSラジオ。)
◆こねくとCMソング作曲の経緯
・23年12月に『こねくと』に初出演させていただき、我々の架空のCMソングを作る活動を取り上げていただく。
・その際に、こねくとの実在CMソングも作曲。
24年1〜3月TBSラジオの地上波CM枠で放送していただく。
↓
・24年9月に、こねくとに第2回の出演をさせていただく。
・実在CMソング第2段として、石山蓮華さんの歌う新曲を作曲。
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・こねくと実在CMソング第2弾が24年10月から地上波で放送中。
●今回の件でキシリ徹が思っていること
伊集院さんの発言に「CMソング自体の是非」以外の意図があるのは伝わりましたし、流れる時間帯が〜という内容もあったかと思います。
ただ伊集院さんの発言の影響力はスゴいもので、
「CMソング自体がダサいかダサくないか?」「自分は好き」「自分は嫌い」という点について、我々の動画のコメント欄などに極端な言葉で、CMソング自体の是非を投げかけて来られる方が複数いらっしゃり、SNSでも見受けられました。
なので
「そもそもCMソングはダサかったらダメなのか?」
「キシリ徹はダサいCMソングを作ろうとしたのか?」
「今回のCMソング自体について賛否の声があってどう思っているのか?」
あたりについての所感を述べます。
今回の件に関して、いろいろな観点がありますが、
我々から言うのはあくまで『CMソング自体について』のみで、その点に絞っています。
そして当然ながらTBSラジオ、こねくとの見解ではなく、
CMソングの作曲者としての所感となります。
主に思っているのは、
① 話題に上がり、リスナー同士で議論が起こることはCMソングとしてとても健全でありがたい
② CMソングの公共性について改めて意識できた。貴重なご意見をありがとう。
です。
① 話題に上がり、リスナー同士で議論が起こることはCMソングとしてとても健全でありがたい
そもそも数多のCMソングがある中で、局の広告とはいえ話題に上がり触れられたことにびっくりしました。
ラジオでそんなに多くある場面ではないですよね。
その表現に当惑しなかったわけではないですが、伊集院さんの言葉だなと思ったし、結果「伊集院光が口ずさんだCMソング」にもなりました。
これはまずもって、印象に残るCMソングを作れたということの裏付けだと捉えています。
とはいえ今回のCMソングの意図として、なにか取り上げられるために「奇をてらって注意を引く」アテンションエコノミー的な方向で作ったわけではありません。
念を押しておくと、そういう方向で目立っても関わる誰にとっても得はなく、そのような意図はありません。
CMソングとして情報が伝わり、印象に残り、繰り返し聞いて飽きない作りを意識、番組についてヒアリングし、石山さんの歌声を活かし作りました。
結果として、放送開始直後には、番組リスナー、番組のコアリスナーではないTBSラジオリスナーからどちらかというと好意的な反応を多くいただき、
アフター6ジャンクション2で、パーソナリティの宇多丸さんからも、石山蓮華さんの歌を「すっごい良い歌」と言っていただいたなどの反響からも、番組の意匠やポジティブな印象を伝えることができていると思います。
その一方で、今回のCMソングがダサいという意見を持つ、あるいはもっと否定的な感想を持つことも、当然ながら間違っていると思いません。
貴重でありがたく、特に直接届いたものに関してはなるほどなあと思いました。
今回はお昼の時間帯である、こねくとの番組の雰囲気や情報を伝えるため、こういった表現のバランスを選択しました。
その結果、肯定的な意見があり、伊集院光さんの発言に端を発する形などで一部の方から、どちらかというと否定的な意見も出て、TBSラジオリスナー同士の議論が生まれた、ということは広告や制作物として、かなり健全なことだと捉えています。
仮に制作意図として”批判されないこと”を目指し、どの立場も取らず押し出さない総花的なものを作れば、そもそもCMソングとしての目的を果たさず、体をなさない。
あるいはお昼の番組なのに、深夜のリスナーに向けたテイストで作っても、すでに聞いている既存のリスナーが離れていく可能性もあります。
まだ番組を聞いていないTBSラジオリスナーにも「聞いてみたけどCMの印象と全然違うじゃん」となれば、誰にとっても意義がありません。
それらを踏まえても番組の雰囲気や情報、魅力、思いを伝える、という観点で意義のある形のCMソングになったと感じています。
広告行為に限らず、なにかを表明し選び取るということは、もう一方の選ばなかった道を切り捨てるということでもあると思います。
すべての決断は、切り捨てたほうの選択肢で構成されているともいえます。
ある一方を選択し押し出したことによる特長と、その選択の反面で考慮しきれなかった部分のウィークポイント両方がある事自体が、構造として自然です。
その両面性を無視し
「ダサいと思われるようなCMソングを作ることはマイナスなのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、認知されないこと・無関心のままで終わるほうが良くないと思っている。
たとえば私は、プロレスラーの拳王という選手を、対抗戦での新日本プロレスへの絡み方を見て、ダサくて最低で大嫌いだと思っていましたが「なんでこいつこんなダサいんだ」→「ダサすぎて気になる」というきっかけから、少しずつ好きになり、今では大好きになっています。
その経験からも、印象に残らないほうがまずい、印象に残ればそれは関心だから、関心があればどこかでひっくり返って大好きになる瞬間もあると思っています。
そもそもがアテンションエコノミー的な、奇をてらう方向で作られているのであれば考えものですが、そうではないのは前述の通り。
何より、そもそもダサくしようと思って作っていません。
(一部エゴサしていたときに「あれはキシリ徹が作ったんだからダサくて正解なんだよ!」みたいな擁護(?)論があって、ありがたかったし笑ったけど、そういうことでもなくて、めちゃくちゃ真剣に作ってます)
「だからダサいって言うなよ・言わないで」っていうことではないのも前述の通り。
ダサいと感じたのならば言ってくれていい、そしてダサいが褒め言葉、みたいなよくある言い回しにぶち込みたいわけでもありません。
真剣に、これがいいと思って数ある選択肢の中から選び取って作ったら、なにかザラついていて引っかかるところがあったということだと思います。
付け加えると、今回深夜帯のリスナーからも賛否の”賛”寄りの意見がありましたし、深夜以外のリスナーから賛否の”否”もありました。
なので決して、こねくと含めた昼帯リスナーvs深夜リスナーという構図ではないように思われます。個人の観点、感想がそれぞれあるだけ。
一方を下げて一方を上げようとするのも、あまりよろしくはないので、絶対的な意見で言うのがいいのではないかなと思います。
そういった個人的・絶対的な観点に基づいた、TBSラジオリスナー同士の議論があることが、とてもいいなと感じました。
そして、CMについての議論が生まれるということは、めちゃくちゃみんなちゃんとradikoやラジオで聞いていて、よろしくない聴取方法で聞かれていないことの証左でもあると思います。
当然ですけどね!(私もradikoプレミアム会員です。故郷・北海道のラジオを聞いて郷愁にかられています)
一部、直接来たメッセージの中で、強い言葉でただ自分のなにかしらの欲求を満たそうとしているものもありました、どうか心満たされる場所を見つけてください。心に平穏が訪れますように🙏
そして、好意的な意見は変わらず嬉しいです。どうもありがとうございます。
結びにこれはいちリスナーとしての意見です。
「石山蓮華さんの歌声最高!超”魅力派”のボーカルですね」
これも、私の一個人としての絶対的な意見です。
② CMソングの公共性について改めて意識できた。貴重なご意見をありがとう
架空の活動と合わせて、今まで20曲弱の実在CMソングを作らせていただいています。その中で今回のこねくとCMソングは、ちょっとなかなか変わった経緯の広がりとなりました。
どちらかというと後ろ向きな意見が生まれやすい流れが起こったとき、どういった反応があるのかを当事者的に感じられて、非常に貴重な経験をさせてもらっています。
また「曲はいいけど、流れる時間帯によってはあんまりかも」という意見もありました。
ある種の「広告の公共性」を、身を持って改めて感じました。
もちろんその観点がなかったわけではないですし、CMソングで初めて知るリスナーの方に向けて、いつ・誰がやっているのか、などの情報も込め、番組の雰囲気が伝わる作りとしたつもりです。
とはいえ、全時間帯で、聞くすべての人に向けて、すべての要素を考慮して作ることは、どこまで行ってもきっと難しいはずで、それこそ総花的になり、何も残らず体をなさないものになってしまうように思います。
なので、ここも何を選び取りどの程度考慮するかという、さじ加減とバランスを取ることになる。
今回、受け取った人の感じ方、こう思うんだ、ということが、今までより高い解像度・深い深度で知れ、その判断基準について、見識を深めることができました。
今後の制作において、ジャッジするにあたっての良き材料となる経験を頂きました。感謝しています。
繰り返しにはなりますが、今回のこねくとの曲は、あの時点で考えられることは考慮できたと感じていますし、こういう流れの中でも、未だいい反響のほうが多いという感覚があります。
今回のことを発端に、いやこの曲いいじゃん!好きだよ!って言葉も届きました。嬉しいな。
さらに、これからチャンスや機会があれば、今回の経験を活かし(実在も、架空も)更にいいCMソングを作れる!作りたい!と思っています。
キシリ徹は、闘いの中で成長する主人公です!
●最後に
思わぬ方向に展開している今回の出来事、ぜひいい形で着地することを願っています!
まだこれは確定的な結果ではない、現在進行系で動いているし、過程であって、どう着地しどうなるかはわからない。まだ途中、答え合わせはまだ先。
そして一番思っているのは「ラジオって面白いよね」ということ。
CMソングはあくまで一要素なので、気になったら一度番組を聞いてみてくださいね!
これからも『こねくと』、そして『深夜の馬鹿力』、『問わず語りの神田伯山』、TBSラジオをみんなで聞こう!