10月29日
薄手の上着ではそろそろ夜はこたえるようになってきた。毎日のように着ている紺のロングコートはだいぶ着古して、腰かけたときにお尻に敷かれる部分の布が擦り切れてしまった。そろそろ買い換えが必要かもしれない。このコートを買ったはいつだったろうと思い返してみたら、もう7年も前のことだった。なぜコートを買った年まで覚えているかというと、これは大人になった実感のこもった買い物だったからだ。
そのころは転職して1年ほど経って、暮らし向きもだいぶラクになっていた。それまで服といえば古着かユニクロで調達するのが当たり前だったのを、ちょっと背伸びして渋谷のパルコに行って、春秋冬と3シーズン着れるようにフリースが着脱できるコートを買ったのだ。シーズンごとにスタッフがハガキを送ってくれるお店での買い物も初めてだった。
大人の階段をひとつ登らせてくれたコートとのお別れは、やはり少し寂しい。