シェア
目が覚めると知らない部屋にいた。広いベッドの上にいる。どうやらラブホテルのようだ。昨日の酒が残っているらしい。まだ頭がフラフラした。 横を見ると女がいた。むこうを向いて眠っている。誰だ。誰なんだ。 …ああ、頭がいてえ。 昨夜はハロウィーンだった。俺はドラキュラのコスプレをして仲間と一緒に街に繰り出した。魔女のコスプレをした女たちをナンパし、どこかの店で酒を飲んで騒いだところまでは覚えている。
「ただいま帰りました。わたしです」 玄関でか細い声がした。壁に掛かっているカレンダーを見る。そうだ。去年と、その前の夏も全く同じ日だった。 夏が逝く頃。暑かった夏が終わろうとしている。 なぜ驚くのだろう。忘れた振りをしているだけということは自分でもわかっているはずなのに。 来客用のチャイムが鳴る音も、鍵の掛かったドアが開く音もしなかった。でも確かにきみの声だった。愛しいきみの…優しい声。 震える膝を押さえて玄関に行ったら、花柄のサマードレスを着たきみが立っ