美醜の分かれ道
美しい顔とはどういうものだろうか。左右対称の顔?欠点の無い顔?
私の考えを言わせてもらうとすると、美しさは決して造形だけの話ではないと思っている。
まるで光が差し込むような、迷いのない輝き。
見ているこちらが気持ちよくなる聡明さや清潔感。
もちろん表層的な美貌も大切かもしれない。だけれど、人の姿形を目にした時に「美しいな」と感激をするのはそれに限った話ではないだろう。
よく、「性格は顔に出る」と言うけれど、ある時私が知らない人から悪口を言われていると知ってめそめそしていた時のこと。友人がすっぱりと言い放った。
「大丈夫だよ、絶対その人綺麗じゃないもん」
私は、とてもよく整った容姿の彼女が、1mmも迷いのない澄み切った瞳で断言するその姿に惚れ惚れとしつつ、ふんふんと頷いた。
「だってキシコ、人が悪口を言ったり、考えたりしている時の顔って見たことある?こーんな風に口が歪むんだよ。どんなに取り繕っても、本当に綺麗な表情で悪口なんて言えないんだから。表情に意地の悪い陰がさす。それにね、顔ってすぐに癖がついちゃうから、嫌なこととか意地悪なことにまみれていると、その表情がどんどん染み付いていくの。そうすればどんどんブスになる」
彼女は女優で、ものすごく感受性が強い。
能天気な私はその観察眼に驚かずにはいられないほど、人の表情や癖、内面に秘めたるものをすぐに見抜いている。
そんな彼女が、悪口を言う人を演じながら語る様子は本当に説得力があった。
同時に私は上目遣いをするとすぐに額に皺ができる上に、ちょっと油断するだけですぐに皺の跡が消えなくなるから、「表情はすぐに染み付く」との一言にも納得したのだった。
そういえば、誰かが「ブス」とは無粋の無と下衆の衆だと思う、だと言っていたのを耳にしたことがある。
それが妙に印象的だったのは、美しいも醜いも造形の問題ではないという考えからだと思う。
心の美醜は、確かにきっと貌を変える。
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