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あなたへ #あなたへの手紙コンテスト
あなたへ
あなたは今どこで何をしているのでしょうか。あなたがどこに住んでいるのか分からないので、そちらの季節が分からなくて時候の挨拶ができません。なので、勝手に私の話から書き始めようと思います。
私が住んでいるところはすっかり冷え込む季節になりました。毎朝布団の中で縮こまって目を覚まします。恐る恐る足先を外に出して、またすぐに布団の中で丸くなります。寒い季節になると朝起きることが、それはもう、とてもとても億劫になります。布団を飛び出して、半纏を着て、冷たい床と仲が悪いので爪先立ちで台所に行ってお湯を沸かします。白湯を啜って体を中から温めるんです。そんな孤独な朝を毎日迎えています。苦いのも渋いのも苦手なのでコーヒーもお茶も飲まないんです。苦さと渋さの違いも知らないくせに、こんな適当なことを書いています。
今あなたが、「朝起きるのが億劫だなんて年がら年中のことじゃないですか。なんですかこのくだらない手紙は」だなんて思ってくれていたら私はとても幸せです。生きていてくれてありがとう。
私は欲張りだから、幸せを感じると更に欲張ってしまいます。だから、私とあなたの幸せの形が違うと知りながらも「ギリギリまで寝ていたい気持ちもよく分かるけれど、毎日朝ごはんを食べられていると良いなぁ」と勝手に願ってしまいます。どうしても無理なら三食とは言いません、せめて一食は温かいものを食べていますか?、なんて押しつけがましいことを考えてしまうのです。
「人は誰しも生きていく中で小さな嘘を重ねてしまう。だから、あなた自身のことを嫌いにならないであげて欲しい」だなんて考えてしまうんです。心配してと頼まれてもいないのに。あなたのことを知りもしないのにね。
どうでも良い人とだったら、もっとさっぱりした距離を保てるんですけど、あなたにはどうしても押しつけがましい自分が出てしまいます。
ごめんなさい。
もし許してくれるのなら、未来のどこかで出会ったときに合図をください。そうですね、会釈を一つ。そしたら私も会釈をお返ししようと思います。
まだ見ぬあなたにいつか出会えたら、きっと私は。
◇
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