【アニメ産業調べ物4】「労働環境・待遇」2

キシバです。
アニメ産業調べ物シリーズ第4回、「労働環境・待遇」の続きについて。
(これまでの関連記事は以下)

まずは先日購入した『アニメーターの仕事がわかる本』より、

・社員のような流れで雇用され、フリーランスであることに気付かないケースが多い
・交通費など経費が出ない
・制作会社とスタジオの違い
・確定申告について
・マネジメント上の問題(社内制度の設計・不適切な提示額やスケジュール提案等の運用・自転車操業・未払い・倒産)
・「動画」(=新人)の平均年収は125万円
・休日ゼロで一日10時間働いて月300枚書き、自給150~200円(一例)

等々。多くの問題の原因を大別すると、以下の二点が根本要因として言えるように思いました。

・マネジメント上の設計・運用の失敗
・収益率の低さ

 収益が低く、人的コストを極限まで抑えているため、労働環境が破綻する。またマネジメント人材も育たない、寄り付かないためマネジメントが破綻し、さらに労働環境が破綻する、と。

https://jil.go.jp/institute/reports/2005/documents/025.pdf
『コンテンツ産業の雇用と人材育成― アニメーション産業実態調査 ― 』 労働政策研究・研修機構による研究で、2005年とかなり古いものですが、労働環境についても思ったより入念な調査が行われていました。
p24からp32を参照。

コンテンツ産業の雇用と人材育成 _page-0033

>>報酬については、雇用者の多い制作管理部門では固定給制が採られており、大手の A 社で年収 600~800 万円以上、中小の D 社や G 社では年収 200 万円以上との事例がみられる。

>>他方、業務委託契約が主流の原・動画の作画や背景画担当職種などでは、専門スタジオ自体が元請け企業から出来高契約で仕事を受注していることもあり、ほぼ全ての企業が出来高払い制を採用している。

>>ただし、出来高制を採用している企業のなかでも、B 社や F 社のように 5 万円~10 万円の最低保障給を設けている企業もある。また、作品の質の低下を恐れ、固定給制を採用している M 社(背景スタジオ)の例もみられた。

>>単価は、主に新人アニメーターが担当する動画が最も安く、1 枚 100 円~200 円、中核アニメーターが担当する原画が 1 枚 3,000 円前後28、背景画が 1 枚 2,000 円~3,000 円などとなっており、

>>月収では動画が 5~10 万円、原画や仕上げが 15 万円前後、背景画(但し固定給の事例)が 20~30 万円などとなっている。後に見るように、第一義的には、放送局等の製作者から元請け制作会社に支払われる制作費水準の低さが、適正水準を下回る単価を規定している。

次の「収益」や産業構造面でも有用な資料だと思われます。最新版の別資料との比較で、十五年間の変化を見ることもできるでしょう。

https://meti.go.jp/report/downloadfiles/g100514b02j.pdf
逆に経産省の『コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会報告書』では、主に今後の取り組みなどについての分析が主体で、労働環境に関する話はほぼありませんでした。

ただし海外拠点や資金調達ファンドに関してこの時点で問題提起がなされ、結果としてある程度の成功を収めた話は「アニメを殺す~」の際にも見聞きしましたので、後の『海外進出』をテーマに調査する際、さらに掘り下げていきたいと思います。

ひとまず基本的情報としての「労働環境・待遇」についてはここまで。
後々、より詳細な分析や検討も行っていく予定です。

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