レンタルショーケース


2004年5月。

「これがレンタルショーケースです」

NHKのお昼の放送で、秋葉原のアストップという名前の店が紹介された。
そして、青年が緊張した様子でショーケースの前に立ち、説明を始めた。

「○○君、それはどういうものかな?」

キャスターは、生放送中のカメラを通じて青年に質問をした。

「はい、このケースの中にフィギュアやカードなどを入れると、店が委託販売をしてくれます」

この放送を家の中で胡座をかきながら見ていた俺は、衝撃を受けた。

そしてすぐにネットでレンタルショーケースなるものを検索した。

自分は片目が弱視だ。
だから、就職できる可能性は極めて低い。
なので、いずれ起業して自営業をやらなければならない。
けれど、具体的に何をやればよいのか分からないでいた。
でも、この放送を見て自分の将来は決まった。

翌日、新宿西口にあるヨドバシカメラの前を歩いていた。
この付近にあるレンタルショーケース屋「コレクターズショップ」と契約する為だ。

そして、歩いているうちに目当ての店を見付けて入店した。
店内には若い男性店員が2人いた。
1人は小柄でスポーツマンタイプ。
もう1人は、いかにもオタクっぽい感じで不良がやるような目付きをしていた。

俺は、スポーツマンタイプの店員に話し掛けて、ショーケースの説明を聞いた。
そしてすぐに契約をした。
それで、身分証明書の提示を求められたので、例の保険証をドヤ顔で見せた。

それから俺のレンタルショーケースライフが始まった。

けれどこの時はまだ気付いていなかった。このショーケース屋は犯罪者集団「綺羅カーン」の基地であることを…。

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